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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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29話 不安な二人

お待たせしました。

 王族と一部の者しか知らない東の魔の森の抜け道。魔の森から離れた崖にある小さな窪みを通り抜けると辿り着くその道にはかずやとチャイの救出に向かうアイゼンと、ノワキを含む彼の部下三名、そして城から呼ばれたバーチャマを含む救助隊の計九名がいた。

 人質の釈放は、本来ならもう少し大人数で臨む必要のある取り組みだ。が、作戦の都合上、少数精鋭で向かうことにしたアイゼンら一同は、移動しながらもう一度作戦の詳細の確認をとっていた。


「アイゼンよ。本当にこの人数で足りるのか?」


 心配そうにバーチャマがアイゼンに尋ねる。しかしその声色とは裏腹に、バーチャマは村の大半の男衆と別行動であることが気に食わないのか、歳に合わずに膨れっ面をしていた。


「何を今更……」


 バーチャマのあまりの心配ぶりと矛盾した面構えにアイゼンが溜息を吐く。


「いいか⁈残りの男衆を村に返したのは盗賊団の狙いがフーガ村にあると睨んだからだ」


 予告表を提示して宣言通り華麗に盗む愉快犯が怪盗なら国境線の盗賊団はその真逆と言っていいだろう。彼らは仮に予告表を出してもあくまで陽動としてしか使わず、その文から本当の狙いを探るのはほぼ不可能だ。災害や混乱を利用して影で働くその手口はある意味天下一品と言っても過言ではなく、人数を割いてまでして行うこの作戦も被害を最小限に抑える為の苦肉の策だった。


「はっきり言って奴らの犯行が阻止出来るならばこの救助作戦をやる意義など元からないし、軽々しく捕まった男を助ける慈愛など生憎持ち合わせていない。正直、俺にはやる気すら感じさせない」


 オジー王国の風習の一つに、強い男は自分の身は自分で守る、というものがある。これは彼らにとって当たり前の話だが、戦闘や戦争とはほぼ関わらない日本に住み、平和ボケしていたかずやにその常識が通じない、とは夢にも思わないだろう。よって、アイゼンの中でかずやは、その素性の謎さも合わさって、疑わしいただの弱っちい男だと認定されていた。


「ただ敵の真の狙いが分からない以上、例え人質が奴らと関係あろうがなかろうが、ある程度泳がせる必要がある。大体アントワンヌが本当の狙いなら奴らなら既に連れ去っていることだろう」


 彼らのこれまでの実績を考慮すると、裏があるという可能性を無碍には出来ない。


「奴らは平気で我々の裏をかくプロ達です。現に隣国では同じように人質を取られて宝を奪われた件がいくつも存在します」


 アイゼンの言葉にノワキもへこへこと腰を低くしながらも便乗した。過去にノワキが多数の外交官から集めたデータによれば被害は既に千件以上にまでのぼっており、幾つか例をあげれば、骨董品店のツボからとある町のシンボルであった英雄の彫刻像まで幅広い物や芸術品が盗まれている。中には本当に盗まれたのか疑わしいケースもあったが、市民や国民達の認知度に関しては、盗難事件が発生すればまず国境線の盗賊団を疑うという迷信じみたレベルにまで達していた。


「もう一つの理由は、叔母上も分かっているだろ」


 散々話しただろと言わんばかりにうんざりな表情を見せるアイゼン。

 その顔を見たバーチャマは、これから向かうアクアヒールの泉にはある特殊な性質があることを思い出すと、渋々といった様子で言葉を吐いた。


「まぁ、時間的にもルート的にも男衆と別行動をとる必要があったのは分かるし、アクアヒールがなかなかの曲者だと言うのも知っているがの……」


 一瞬の間と共にノワキ達部下らを凝視するバーチャマ。この作戦に本当に穴がないか心配すると同時に、バーチャマはあることについて懸念していた。それは………。






















「どうしてもう少し若い男を連れて来なかったんじゃ!!!」


 バーチャマの発言に、寝ぼけているマイ以外全員が溜息を吐く。やっぱり連れてこない方が良かったんじゃないかと、先が思いやられるアイゼンだった。



 ◇◇◇



 バーチャマ達が会話を繰り広げている最中、無作為に選ばれた者の中で特にアカリは他の者とは違う観点からこの状況を楽しんでいた。


「やっと私の実力を見せつけられる!!!」


 いや、この場合は静かに燃えていたと表現する方が適切かもしれない。アイゼン達よりやる気と熱意に満ち溢れるアカリにはもちろん燃えるだけの理由があった。

 アカリ達長女組には普段、城の内外を問わず書類整理や社交の場での交渉など上層部の管理職系の仕事が任されている。格言うアカリはその中でも社交に秀でており、国内外の最先端の流行を集める、広めるなどの重要な役割を担っている。その圧倒的なトーク力故に交渉術にも長けており、持ち前の明るさと親しみやすさもあってか殊更その能力に関しては重宝されていた。

 ここまで聞けば何の問題もなさそうに聞こえるが、もちろん裏がある。

 それは。


「ねぇ、カホ。かっこいいかずや君が助け出される姿はかっこ悪いと思わない?」

「そうですね、アカリお姉様。ものすごくかっこ悪いです」


 アカリの弱点は思ったことをなんでも言ってしまうことと、その言葉の影響力にあった。

 アカリは以前、アイゼンに連れられて、赤と青に分かれた軍の模擬戦を見に行ったことがある。その際、少し怪我をしてしまった赤の兵達に向かってこう告げてしまった。


「わぁ、このチーム負けるね」


 その発言を受けてか別の要因があったのか分からないが、赤チームはアカリの言葉通りになって負けてしまい、その展開を重くみたアイゼン達はそれ以降、アカリを戦場などに呼ぶことを躊躇うようになった。

 もちろんアカリはそんなこと露知らず、アイゼン達も怪我をしてはいけない、とか業務に支障が出る、などとオブラートに包んだ言い方で断るから、アカリは自分の実力が足りないゆえに戦場に向かえないのだと勘違いしていた。

 結果、己の未熟さ故に戦力外通告を受けると思い込んでいるアカリにとってこの作戦は自分の能力を見せつけるチャンスであることは言わずもがな。だからこそ燃えていた。

 黒装束に身を包み、フードで欣々然とした表情を隠しながら歩むその姿はかなり不気味で、狭かった道を通り抜け、森のルートに入るあかつきにはアカリの笑みは隠しきれずに半月に見えるくらいまでに口角が上がっていた。


「衣装が変わるだけであの人懐っこい笑みがこんなに怖く感じるなんて」


 アカリの前方でマキが冷や汗をかく。果たしてチャイの救出を任された姉は大丈夫なのかと不安になる妹であった。

非常に申し訳ないのですが、次回も書きあがり次第投稿させていただきます。

それではまた。

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