27話 泉精霊アクアヒール
久々にいろいろと詰め込みすぎてカオスになってしまいました。改稿依頼の打診があれば検討するレベルなので、理解しづらければ感想欄にでもコメントお願いします。
一応新キャラ登場します。もう出しすぎかなってくらい出してますけど、それはこの作品の特色ってことで謝罪は割愛させていただきます。それではどうぞ。
綿密に企てられた完璧な脱走計画。
脱獄不可能な牢屋に収容された者には蜜のような甘美な響きを与えるだろう、そんなプランを俺はどこにあるかも知らない泉のほとりでたてていた。
見張りも自らを縛る鎖も、そもそも建物内に固定された訳でもなしに外に放置された俺にとっては圧倒的すぎるほどにイージーモードではあったが。
「ふんっ!!!」
まずは口元や鼻の周りを覆う、子供がプロレスごっこをする際に被るであろうブリーフパンツを脱ぐべく地面に頭を擦り付ける。
頭にぴっちりと張り付いたパンツは手足が縛られた状態だと中々に手強く、すんなりとははずれない。
「くそっ!」
地面に悪態をついて着々と拘束を解く作業を繰り返しながら、俺は次に取るべき行動に思考を走らせる。
パンツを脱いだらうさぎ跳びで森の中に身を隠し、そのまま脱走。
ーーーうん。完璧な脱走計画だ。
細部まで計算され尽くされた計画に自画自賛しながら縄抜けならぬパンツ抜けに挑戦していると、何かの拍子でパンツがいい感じにずれた。
「おっしゃ~。ブリーフパンツ頭から取ったど~!!」
俺は意外にはずれずにピッタリと張り付いていたブリーフパンツを脱ぐと、失敗から学んだ教訓として騒ぎ過ぎないように小声で騒ぎながら辺りを転がり回った。
手足はキツく縛られているが身動きが取れないわけではないからだ。
それに確認したところ、どうやらあの男が戻ってくる様子は今のところなく、もしかしてこのままいけば逃走するのも夢じゃないかもしれない。
それ故に俺はいつかやった芋虫のような横這いの体勢を立て直し、這った勢いでむくっと身体を起こすと、計画通りにうさぎ跳びで森の中へと直行していった。
だがしかし。泉周辺の地面を移動していると、俺は道半ばでとある大事なことに気がついてしまった。
「うおー、帰り道がわかんねぇ⁈」
気絶させられたまま連れて行かれたわけだからまぁ文字通り帰り道がわからないのである。
しかしこのままここでもたもたしていては完全に逃げ遅れて、問答無用に捕まり、よりきつめに拘束され、最悪拷問がてら叩き潰されてしまうだろう。
俺はとりあえず当初の予定に従って辺りの木々の中に身を隠そうと必死に進んでいると、背後から何者かの手が俺の背中を掴んで思いっきり引っ張られた。
「戻ってみたら拘束用の布だけが脱ぎ捨てられていたが、やはり逃げていたノカ」
受け身が取れず、背中を強めに打つ。
小さな衝撃が背骨を伝い、図らずもくぐもった声が口から漏れる。
そんな俺に追撃するように男は俺の頭と首を引っ張って顔面間近まで引き寄せると、酸味の強い口臭を吐き出しながら特大の釘を刺した。
「騒ぐナ、とも言っていたハズダ。聞こえていなかったノカ?もしこれ以上命令に背くならあいつの命は無いと思エ」
突然現れたもう一人の男にナイフを突き立てられる白猫、チャイの姿という釘を。
「なんで、チャイが……」
人質ならぬネコ質にされたチャイの姿に驚きや焦りよりも先に疑問符が浮かび上がる。
チャイは昨日俺と一緒に遊んでいたからあの場にいたことは確かだが、わざわざネコ質にされる理由が分からない。
正直なんで連れてきたと問いただしたかったが、状況が状況で今までに経験の無いことだった俺はただ動揺することしか出来なかった。
石灰石色の髪の男は動揺する俺を一瞬、若干興味深く見つめながらもすぐに険しい表情を作り出すと、そのままもう一人の男が持つナイフを奪いとって俺の首元に押し当てた。
「普通の人間ならネコなど関係ないと吐き捨てるがお前は違うようダナ。まぁ、それはどうでもいいが正直ネコの命を奪うよりは人間のお前の命を奪うほうがこちらとしては都合がイイ。これ以上面倒を起こすようなら首から下は無くなると思ってオケ」
首からスーッと流れる赤い鮮血がポタリとナイフを伝って地面に落ちる。
大真面目に脅迫されている、その事実が頭の中と地面の上にどす黒い跡として残る。あまりの急展開とインパクトに反撃することさえ考えずにただただ言いなりになっていると、ようやく満足したのか男は静かに俺を降ろしながら最後に一つ告げた。
「知っているカ?蜘蛛の巣にかかったハエは暴れれば暴れるほどに糸に絡まり、終いには息を詰まらせて死ぬノダ。人質は人質らしく自然の定めに抗わずに大人しくしていればイイ」
氷のような無表情で淡々と言われた言葉に背筋が凍る。
「今度は私が自ら縛ロウ」
追伸的にそう言うと男は身体を蛇の姿に変えて俺の首の周りを締め付けはじめた。
一周、二周とまわる度に息がしづらくなり段々と肺が酸素を求めて活発に動き出す。
「いき、が……」
脳みその酸素が不足しはじめ、次第に朦朧としてきた視界に俺は自らの命の終わりを悟る。声も出せぬままに目を閉じて人生を諦めよう、と思ったその時。
「ココデナニヲシテイル」
突如、誰かの声が聞こえてくると、シュン、と俺の耳元を飛ぶ何かが蛇に変わった男の鱗を掠った。
蛇の拘束が緩まり、宙に浮いていた俺はドサリと地面の上に落とされる。
ゲホゲホと急に空気の通り道が出来た肺が溜まった二酸化炭素を無理やり吐き出すことでむせた俺は地面の上で盛大に咳をすると、さっきの何かが飛んできた方向に視線を向けた。
「俺ノ泉ノ前デ何ヲシテイルッテ聞イテンダ」
そこにいたのは蒼く眩い光を散りばめながら同時に威圧とオーラを放つ美しい鳥。
白鳥の体に身を包んだおそらくこの泉の主であろう存在がただ自分の縄張りを守るためだけに俺たちの前に姿を表した。
そう。後になって知ったアクアヒールの泉の主、泉精霊アクアヒールの姿が。
前話や活動報告にも書きましたが、更新速度が非常に遅くなっています。気長に待っていらっしゃる方、仮にいたとしてこの作品を楽しみにしていただいている方には申し訳ないのですが、しばらくこの状態が続くと思うのでこの場で申告させていただきます。本当にすみません。それでも待ってくださる方には感謝をこめていつか復活するであろう毎日更新に向けて頑張りたいと思います。
長文失礼しました。




