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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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26話 フーガ村の危機

遅れてすみません。また新キャラです。

 安らかな寝息とともに上下に揺れる茶色の斑点模様。明るみを増す空とともに眠りが浅くなってきた子供のダチョウ、ムブラナの側では三メートルほどある巨大なダチョウが何やら険しい顔で彼の部下の名前を連呼していた。


「サンドロ、サンドロ!起きろ!ココナムも起きるんだ!」


 ソーマ砂漠よりも圧倒的に安全なフーガ村内にいたせいか二体とも気を抜かしていたのだろう。


「隊長、どうしたんですか?」


 起き抜けのどこかボンヤリとした顔でそう尋ねたサンドロはどこか慌てた様子の隊長、バザールを見上げるとバザールはやけに険しい表情で二体を交互に見ながらくちばしを開いた。


「トゥインカ見なかったか?」


 フーガ村に着いて早々にバザールとどこかへ行ってしまったトゥインカの居場所など分かるはずもなかったが、きっとバザールが聞きたいことは彼女が先に帰ってきているかどうかであろう。

 ココナムはバザールの質問をそう解釈すると、首をゆっくりと振りながら彼に尋ね返した。


「隊長と一緒にいたのでは?」

「それがな……」


 急に黙り込んだバザールに何やら訳ありだと勘付いたサンドロとココナムは難しい顔をしたバザールを庇うように聞き手にまわりこんだ。

 チラリとバザールが息子、ムブラナの寝顔を窺う。皮肉にもそのあどけない寝顔はバザールの表情とは正反対にリラックスしきっていて悩みなど何もないようだった。




「父ちゃん、おはよう。こんな朝早くにどうしたの?……母ちゃんは?」


 幾らか事情をサンドロとココナムに説明したバザールは二体をトゥインカの捜索に向かわせていると、何やら朝の慌ただしさを察知したムブラナがゆっくりと起き出してきた。

 そのまま問いただしてきたムブラナにバザールは一瞬ヒヤリと肝を冷やすとそのまま何事もなかったように息子を見つめながら答えた。


「母ちゃんは今なぁ……朝の、そう朝ごはんの砂漠トカゲにあう草を探しにいってるんだ」

「それ父ちゃんの仕事じゃないの?」


 そのムブラナの鋭い指摘に思わず冷や汗を流したバザールは小さな脳を振り絞って言い訳を考えると、そのままぎこちなくはにかんだ。


「ハハ、今日は父ちゃん忙しいから母ちゃんが代わりに行ってくるってさ」

「そっか。じゃあ僕、母ちゃんが来るまでここで待ってるよ。父ちゃんは仕事でしょ?行ってらっしゃい」

「いや、父ちゃんはここで……いや。じゃあここでしっかり待ってるんだぞ。父ちゃん出掛けるから」

「うん?!」


 ムブラナと一緒にこの広場で待つよりもトゥインカを捜していたほうが何倍もいいと思ったのだろう。息子とのやりとりの中でその思考に辿り着いたバザールは何か上手い具合に勘違いしているムブラナの提案を利用することにすると、罪悪感を抱きながらその場を去っていった。



 その様子を遠くから、具体的にはオジー城の近くの家の陰から見つめていたトゥインカはなにやら深妙に思いつめたような瞳を彼らから逸らしながらボソリと告げた。


「ごめんよ、あんた。ムブラナ。でも今どうしても行かなきゃいけないところがあるんだ」


 そう呟きながら視線を動かすトゥインカ。その目線の先にはフーガ村オジー城が。そしてフーガ村村長のアントワンヌの姿があった。



 ◇◇◇



 オジー城を視界におさめながらフーガ村北西方向にある荒野を走り抜けるメスライオン二体。

 フーガ村の結界の手前まで来た二体はその姿を淫らな裸体を晒す美女に変化させると、口に咥えていた袋を地面にドサリと落としながら中に入っていた服を取り出した。


「人間はなんでこんな身も守れやしない布を身に纏うのカシラ?」


 ドレスの袖に引き締まった腕を通しながら文句をたらすメグ。

 ベラは女性ものの下着に足を丁寧に通しながらツンと爪先を伸ばすと、自らの足元を見つめながらボソリと呟いた。


「二足歩行で前からいろいろなものが見えるからじゃナイ?」


 その足に靴を履かせ、色っぽくワンピース型のドレスを着用する。

 ベラはやがて全ての衣類を纏い終えると、結界に囲まれたフーガ村を見据えながら不安そうに顔を曇らせた。


「メグ。本当にこの任務を成功させたら私たち、契りを結べるのヨネ?」


 指の間に光る指輪を一瞥して、メグの方向に振り返るベラ。眉を顰めたまま思いつめた表情を浮かべ、細くスラリとした身を寄せるベラはそのままどこか確証を持っていない声色でメグに、そして自分自身に問いかけた。

 すると、メグはふっと表情を緩め、ベラを自分の胸元に引き寄せながら子供をあやす母親のように丸みを帯びた口調で答えた。


「そうヨ、ベラ。今は不完全な状態だけど、あの(メス)が欲しい物が手に入ったら、そしたラ、ネ?」


 そのままメグは一旦彼女を胸から離し、服が入っていた袋の中から透明な液体の入った小瓶を取り出すと、蓋を開けて中身を数滴、自分とベラの口の中に垂らしながらベラの手を引いてこう告げた。


「まずは城の前であの(メス)と合流ヨ。盗むものを盗んだら報酬は貰えるだけ貰いマショウ。だって私たちは互いに利用しあっているだけの存在なのダカラ」


 突如魔性の笑みを浮かべながら結界内に突入するメグ。ベラは手をギュッと握りしめながら意を決した様子で前を見据えると、そのまま結界内に足を踏み入れた。


 ◇◇◇



 結界内に入る二人の様子を遠くから静かに見守る占い師。

 水晶玉の中に現れる四足の足跡を見つめながら自らの両手を水晶玉の上にかざす。

 二人の姿が途端に蒸散し、水晶の中で鳴り響く雷鳴とともに情景が映り代わると、そこにはカラスの姿からヒトのそれへと移り変わる男の姿と、彼を待つ石灰石のような色をした髪を生やす男が昇る朝日に顔を向けていた。


「私たちの狙いも知らないくせに本当かわいい。せいぜい、囮として頑張ってちょーだい」


 カラクリ仕掛け満載のオルゴールが声帯を持ったように遊び心いっぱいの玉のような音色でクスリと微笑んだ占い師は、水晶玉を布で覆うと傷がつかないように専用の箱の中へそっと戻しながら紅色の瞳を大きく見開いてクシャリと相好を崩した。


「まぁ、でもしょうがないか。これは幕開けも幕開け。言うなれば挑戦状のようなものだから。じゃあ……私も」


 占い師は左手に輝く指輪に手を触れると、カメレオンのような動物に変身しながらその場を去っていった。

詳しいことは今日書く活動報告内に書きますが、9月に入ってからまた忙しくなった身としては週一更新は難しくなると思います。

ペースは落ちますが連載は続けるのでどうかご理解のほうをお願いします。


それではまた次回。書き上がった時に。

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