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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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22話 疑われたかずや

今回またもや?急展開です。


残念ながらかずやは名前だけしか出ないのでご注意を。

「私に姿を見られないようにとは一体どういうことじゃ?」


 説明せい、と言われずともその形相で粗方意向を感じ取ったアイゼンはまぁまぁとバーチャマの肩を抑えながら彼女のイライラを鎮めていた。


「まぁ落ち着け。第一自業自得ではないか。叔母上が昔、警備の者達にちょっかいを出そうとしたからあんな反応を示すことになったのだ。命令を無視してまで動くくらいだから余程のことであろうな」

「それは……まぁあれじゃ。若気の至りというやつじゃ」


 アイゼンは苦笑と共に呆れ顔で、警備の者達の独断による行動の発端になった出来事を蒸し返すと、バーチャマは内容に反論することなくどこか遠い目をしながらそんな台詞を口にした。

 どこが若いのか、と問いただしたくて仕方がなかったアイゼンだったが、さすがにバーチャマの冗談だと分かっていたからだろう。アイゼンはハァと溜息を吐きながら挨拶代わりの会話を脇に置くと、そのままバーチャマに本題に入るように促した。


「まぁそう焦るでない、といいたいところじゃが、時間が惜しいのもまた事実じゃからの」


 バーチャマは自身とアイゼンの周りに音漏れ防止の結界を張る。王の血族しか解除出来ない特別の物だ。バーチャマは結界の強度を確認して、袖を捲りながら懐に手を伸ばすとそこからかずやに見せた例の石版を取り出した。


「!!!」


 その石版の正体を認識した途端、先ほどまで威厳に溢れていたアイゼンの様子が変わった。表情にこそ出さないものの、アイゼンの手は驚愕に打ち震えている。


「これは、古文字の石版ではないか。まさか、保管場所からとってきたのではあるまいな⁈」


 国が抱える秘宝や国宝には当たり前の話だが、王位継承権を持つものしか入れない保管場所があり、そこに至るまでにも必要な暗号やその必要性を説いた許可証など様々な過程がある。

 暗号はともかく許可証を出せるものは王位継承権を持つ者、すなわちアイゼンであり無許可で国庫を開ける者は例え血族であっても重く罰せられるのだ。

 アイゼンは叔母であるバーチャマに疑心の目を向けていると、バーチャマはゆるりと首を振りながらアイゼンの予測を否定した。


「では、どうやって……!!!」


 バーチャマが古文字の石版を持つ理由、アントワンヌからの報告書、近々遺跡に行ったことや異世界から来た男のことを思い浮かべながら暫し考えこんだアイゼンは何かに気づくと、その事柄を上手く繋ぎ合わせながらある仮説に思い当たった。


「まさか、それが二つ目(・・・)の石版と言うのか⁈」


 そんな馬鹿なと言いたげなアイゼンの目に、バーチャマは内心その考えに瞬時に思い至ったアイゼンに感心しながらゆっくりと頷くとそのまま口を動かした。


「あくまで可能性としてじゃ。だが検証する価値はあるじゃろう」


 一考の余地があるのは目の前の証拠を見せられた時点で明らかだ。しかし、どうやらまだ不可解な点があったアイゼンは石版を見つめながら尋ねた。


「だが、どうしてこの時期なのだ?城に戻ってからでも時間はあるだろうに。それに叔母上も知っているとおり今は国境線の盗賊団の始末で忙しい。一度城に帰還し、処理を終えたらすぐにでも首都アトラスに直行しなければならないのだ。はっきり言って今は時間が惜しい」

「今で無ければいけない理由の一つがまさにそれじゃ。今で無ければ随分と後回しになるからの」


 そう告げるバーチャマの主張は一理ある。保管場所に直接来る回数すら少ないのにそれが後回しにされればそこに訪れる機会は自ずと減ってしまう。しかし、アイゼンはどちらかというとバーチャマが告げた理由の一つという含んだ言い方のほうが気になったのかそのまま続きを促した。


「二つ目の理由はオカリナ遺跡にある。私達が行った時にはキングコブラによってほとんど破壊されていたが、それ以前に何者かが侵入し何かが盗み出されたような形跡がある」

「何?報告書にはそのような記述は無かったぞ」

「それはそうじゃ。何が盗まれたのか分からぬ以上報告など出来るはずがないじゃろ?まぁ、気がついたのは私だけだったようじゃから仕方がないと言えば仕方がないかのう」


 アミからアントワンヌ、そしてアイゼンに渡った報告書に報告漏れがあったことを示唆したアイゼンにバーチャマは肩を竦めながらそう告げると今度は声を潜めて彼に伝えた。


「続けるぞ。……気づいたのが私だけだから断定出来ぬが、もしかしたら遺跡に侵入し何かを盗もうとしたのは国境線の盗賊団かもしれぬ。そしてキングコブラ自体を放ったのも」


 自信満々に告げるバーチャマとは対照的にアイゼンの表情が曇る。そのまま目をギラリと輝かせたアイゼンはその目でバーチャマを見つめると驚くほど冷たい声で口を開いた。


「深読みし過ぎだ。確かに盗賊団らしき四人組が現れた時期、異世界の男が通った洞窟が出てきたという時期、そして遺跡の惨状と不可解なキングコブラの出現とが偶然にも重なったのは認めるが、そもそも関連性が無さ過ぎる。盗まれた品々も、盗まれた理由などもはっきりとしていない今、保管場所に向かうのは時期尚早だ」


 バーチャマの発言に冷静な分析を見せるアイゼン。その後アイゼンはやめだやめだと手を振るとバーチャマに向かってこう冷酷に言い放った。


「大体異世界の男が現れた洞窟自体が胡散臭いではないか。忘れるな。その男がいかなる者でも結界内に侵入したのは事実であるし、遺跡のこともキングコブラのことも発見出来たのは元を辿ればその男が現れたからだ、違うか?」

「それは……」


 完全にかずやを疑うアイゼンにバーチャマは冷や汗を流す。

 確かにかずやが砂漠の方から不自然に現れなければ洞窟を調べる為に文献を漁ることもなかったし、遺跡に向かうこともなかった。

 破壊された結界の穴を通って入ってきたという事実もかずやのついた出まかせかもしれないし、実はあの盗賊団の四人とかずやは裏で繋がっていて、最終的に石版を回収する為に無関係を装って自分達についてきた、いや遺跡に向かうように誘導したと考えれば全ての辻褄があう。

 ぐうの音も出ないバーチャマにアイゼンは少し前に乗り出すと更にかずやがいかに怪しいかを畳み掛けた。


「石版を素直に叔母上に渡したのも、もう一つの石版を手に入れるために画策していただけに違いない。大体、偶然掴んで手に入れた物が国家機密の古文字の石版だと⁉︎そんな話出来すぎている。きっと叔母上はアントワンヌやアミ達諸共その男に踊らされていたのだ」


 受け止めがたいがアイゼンの言葉には筋が通っている。バーチャマはぐぬぬと歯ぎしりをして必死に反論点を頭の中で模索したが、完全に言いくるめられた今の自分に言い返す言葉は見つからなかった。

 バーチャマの様子にアイゼンは音漏れ防止の結界を指パッチンで解除すると、外で待機している秘書、ノワキに向かって命令した。


「ノワキ。叔母上が乗っていた荷車に男がいる。其奴を捉え、ここに連れてきなさい。他の者は処刑の準備を」

「かしこまりました」


 即座に指示通りに動く配下達をただ黙って見守るしかないバーチャマ。自分の研究欲と若い男に対する甘さに後悔をしながら何も出来ない自分に項垂れていると、外からノワキが何やら青ざめた顔で戻ってきた。


「アイゼン様、アイゼン様!!」

「どうしたノワキ?」


 元々枯れ木のような顔をしたノワキが更に痩せ細ったように見えるぐらいの慌てぶりにアイゼンの口調が鋭くなる。すると、ノワキは深々と頭を下げながらアイゼンに告げた。


「荷車の中を探してみたのですが、男はどこにもいませんでした」

「何?」


 アイゼンの鬼の形相にノワキがヒィっと小さく声を漏らす。しかし、ノワキはほんの数秒でいつもの業務用の態度に変わると震える手でアイゼンにある物を渡した。


「代わりにこんな置き手紙が」


 荒々しく受け取り、無作法に開くアイゼン。目を素早く動かしながら蝋燭の明かりのもとで手紙を読んだアイゼンは自身の目を丸くした。


「『オトコトネコハアズカッタ』だと?」


 その言葉にバーチャマも唖然とし、手紙の中を覗きこむ。すると、バーチャマは驚愕に口を大きく開けたままその場で固まってしまった。

 それもそうだろう。なぜなら手紙の最後の文。この堂々極まりない上に物騒とした脅迫文の最後にはこう記されていたのだから。


『コイツラヲカエシテホシケレバミョウチョウカラヒルマデニ、アクアヒールノイズミニアントワンヌトホカンコノカギヲモッテコイ。メイレイニソムケバコノオトコノイノチハナイトオモエ』



















































「「『国境線の盗賊団より』」」


 同時に読み終えた二人の声は少しだけ震えていた。


かずや君アイゼンに嫌われてるな棒


次回は8月15日7時にお会いしましょう。

果たしてかずやはどこへ……。

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