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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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20話 アイゼン

いよいよアイゼンの登場、プラス説明回です。

 近年。各諸国の国境線上、実質の無法地帯となっているそのエリアに自らを【国境線の盗賊団】と謳う世界規模の犯罪集団が集結、結成しコロナ大陸全体及び全諸国を脅かしている。

 彼らが盗んだ品々は数知れず、現在も世界のあらゆるところで金品が盗まれ、今や暗黙の了解とされる裏市場を牛耳っているのが彼らだというのはもはや言うまでもない。

 そんな彼らの一番恐ろしいところは盗まれた品々や手口などははっきりとしているのに、未だにどの国も彼らの尻尾を掴むどころか見えてさえいないところだろうか。

 しかし、類にもれず被害を受けたオジー王国内で今や大陸全体に名の知れた盗賊団が唯一価値のあるものをまだなに一つとして盗めていない村があった。

 それがオジー王国の国王の城が建てられたフーガ村だ。

 フーガ村はオジー王国の三分の一を占める乾燥地帯、ソーマ、というはっきりとした名の由来は検証されていない、砂漠の座標を点々と埋めるオアシスの内の一つで、コロナ大陸の最西端、オジー王国ソーマ砂漠の最南端にあると同時に、隣国パナーム大国やさらに南の群小国から遠く離れた位置に存在するオアシス都市だ。

 四方を小高い丘に囲まれ、丘を越えた西は大海、東はオアシスによって成り立つ魔の森と大地を分け隔てる巨大な崖、南北は砂漠によって構成されたフーガ村は城壁がないのにも関わらず一度と進軍を許したことのない歴史を持ち、過去百年に関しては魔物も犯罪者でさえも侵入させたことがないほぼ絶対的な守備体制を誇っている。いや、誇っていた。

 そう、約一週間前。かずやが偶然にも出現した洞窟の近くの結界が破られ四人の侵入者が潜伏するまでは。

 結果的に何も盗まれずにすんだものの、この事態に頭を抱える人物が城に数名、そして例のフーガ村に向かって行軍する集団の内に一人存在した。



 ◇◇◇



「アイゼン様。アントワンヌ様の使者から報告書とお手紙を授かりました」


 夜が近づき、魔の森を越えた崖を更に東北に進んだ小さなオアシス。

 水分補給と休憩ぐらいしかすることの出来なさそうなそのオアシスの周辺ではラクダに乗った男達が野営用のテントを張っていた。

 そのテントの内、一際丈夫そうに見えるテントの中ではどっかりと胡座をかくアイゼンと呼ばれた大男が小さな蜘蛛を手に乗せた秘書らしき男から手紙を受け取っていた。


「うむ。では報告書を読みあげよ」

「恐れ入ります」


 大男の低い声による了承を得た秘書が一通り読みあげる。彼が淡々と読み進めて、最後の文章を読み終えるとアイゼンは眉をピクリと曲げながら彼に確認をとった。


「叔母上が異世界の男をこちらに連れてくる、と?」


 僅かに苛立ちのこもった声に秘書は軽くピクリと首を竦めながら肯定する。その秘書の様子に眉間のシワを寄せはじめたアイゼンは更なる質問を秘書の上にかぶせた。


「国境線の盗賊団の件ですぐに戻らねば分からぬのに、どうしても叔母上とその者の面倒を見なくてはいけない、と?」

「さ、左様にございます、アイゼン様」


 ドスの効きはじめた声色に思わず口調が震える秘書。アイゼンはまるで納得がいかないとでも言うかのように前のめりになると血管の浮き出た拳を床につけて彼に尋ねた。


「後一日で村に着くのに待てない、というのか?」

「な、なにぶん緊急のことでして……バーチャマ様も今日中に着くようにこちらに向かっているようですし……」

「何、それは本当か⁉︎」


 一日待機ではなく今日中に来るように急いで来るということはよほど緊急のことなのであろう。

 アイゼンは苛立ちのこもった態度を引っ込めてハァと溜息を吐くとしばらくの熟考の後に秘書に下がるように命じた。


「失礼いたしました」


 と、何処かホッとした様子でテントの外に出た秘書を見送ったアイゼンはゆっくりと立ち上がって肩をほぐすと、そのまま仁王立ちになってポツリと呟いた。


「国境線の盗賊団のせいで色々と面倒なのに、何やってるんだ、バーチャ叔母さんは……」


 本音の混じった嘆きと口調に文句をつける者は誰もいない。


「……ったく、早く戻ってこいって言うから早めに帰還してきたのにさ……」


 誰も聞いていないことをいいことに目をつぶって上空を仰ぎながら小言をブツブツと漏らすアイゼン。

 一種の瞑想に近いのだろう。アイゼンは自らの感情とともに思考を整えながら自分を落ち着かせていると、突然外が僅かに騒がしくなった。


「今度はなんだ?」


 瞑想タイムを邪魔されたアイゼンは頭のてっぺんをボリボリとかきながら意識を整えると、先ほどの威圧感に溢れる雰囲気と得物を身につけてテントの外へ出た。そこには……。


「アイゼン様、村の方角から灯りをつけた荷車が接近している模様です」


 ラクダの兵士が何やら警戒心を高めながらこちらに駆け寄ってくる。

 近頃の国境線の盗賊団に対する警備問題のおかげで神経がすり減ってきているのだろう。

 兵士は何処か疲れの伴った目で荷車が来る方向を見ていると、アイゼンは全護衛兵士に向かって警戒態勢を解くように呼びかけた。


「おそらくだが、あれは叔母上の乗った荷車だろう。心配などせずに皆元の配置につけ……」

「若い者は警備を強化しろ!前方を老戦士で構築し、新人は荷車とは真逆の位置で待機するように。バーチャマ様に姿を見られないように急いで隠れるんだ」

「「はい!!!」」


 アイゼンの指示を大きく湾曲させて指令を出す軍司令官に若者がさっと顔色を変えて動きだす。


「命令通りに…」


 アイゼンはあーそうだった、と何かを思い出すと同時にこの異常なまでの一体感と移動スピードに呆れて目眩を覚えながら、バーチャマを迎え入れるために秘書と少数の付き添い人を呼び寄せてこう告げた。


「では今から叔母上の出迎えの準備を整えるとする。早急に終えるように」

「「ははっ!!」」


 アイゼンの言葉と共に料理の支度などの点検をはじめる秘書達。

 アイゼンは相変わらずバーチャマが急ぎで合流する意味を図りかねながらも背筋をピンと伸ばすとそのまま自分のテントに戻りながらバーチャマが来るのを待った。

 そして数分後。


「バーチャマ様が到着いたしました」

「うむ。通せ」


 秘書がテントの向こう側から声をかけると同時に返答したアイゼンは、入ってきたバーチャマを正面に座るように招くと、バーチャマは慣れた様子で正座をして早々切羽詰まったように口を開いた。


「お前さんと会うのは久しいが、時間がない故に先に尋ねておく」


 何を聞いてくるのかと身構えるアイゼンにバーチャマは姿勢を整えながら言葉を発した。



































「私に姿を見られないようにとは一体どういうことじゃ?」


 地味に地獄耳なバーチャマが最初に告げた一言がどうにも恐ろしく感じられて仕方がないアイゼンだった。

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