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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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18話 茶葉専門店にて

「久しいの、ミサ」

「あら、バーチャじゃない!!!いらっしゃい。久しぶりね」

「そうじゃの。こっちに直接顔を出すのは三年ぶりかの、ホホホ」


 ミサの開く茶葉専門店にて。

 バーチャマとミサは久しぶりの再開に十年若返ったかと錯覚するくらいにはしゃぎながら言葉を交わしていた。

 古くから交信がある二人の邪魔をしてはいけない、と席を外したサキとサリーとカリンは先にいた二人の女性にタイミングを計られていたのか、待ってましたとばかりに声をかけられた。


「お疲れ~!!!みんな、遺跡はどうだった!!」


 アカリの明るい声かけに三人は何処かホッとしたように頬を緩める。


「一言では言い表せないほどいろいろありましたよ。まぁ、その割には収穫があまり無かった気がしますが」


 ダチョウに襲われ、キングコブラに襲われ、ほとんど寝ずの番だった気がするくらいのスケジュールを思い出し、少しだけ哀愁らしきものを漂わせながらそう告げるカリンに、アカリはそっかそっかとカリンの肩をポンポンと叩いた。


「そっか、大変だったね……。まぁ、お茶でも飲んで休んでね!!」


 近くにあったコップにお茶を入れてカリンの手に握らせたアカリは、そのまま興味の対象をサキとサリーの二人に移すと、二人はすでにアイコンタクトを取りながら自らの不満点を述べていた。


「私達は護衛というよりはむしろ救援物資部隊みたいな感じだったからね……」

「そうそう。サキはともかく、私は出番なんてなかったよ」

「出番って、私の作った服はすぐに汚されちゃったからもはや出番とは言えない気がする……」

「「ハァー…」」


 意気消沈、を体現した落胆ぶりに、アカリでさえ励ましの言葉を呑み込んでしまう。

 しかし、これ如きで屈しないアカリは話題を変えようと辺りを見渡すと、そこにはチャイを抱きかかえながらその首元を撫でるイツキの姿があった。


「!!!」


 キラーン、と何かを閃いた様子のアカリ。すぐさま、まだ物足りなそうに手を伸ばすイツキの腕からチャイを絡め取ると、よしよしと嫌がるチャイを撫でながらそこはかとなくなんとなしに尋ねた。


「そっかぁ~大変だったね…。かずや君も大変だったのかな~」


 あくまで視線はチャイに向けながらのさりげない質問である。しかし、実際はかずやの実態を探りたい故の好奇心からの質問に、二人は一瞬ピクリと身体を強張らせ、違和感のないように荷車をチラッと一瞥すると、すぐさま何事もなかったかのようにアカリに向き直った。


「かずや君はうん、大変だったかもしれないけどいろいろと活躍してたよ。遺跡に向かう途中で遭遇したダチョウと仲良くなってたり」


 サキはバザールとかずやが悪友に近い間柄だということを隠しながら。


「カナ姉を迫り来る砂の波からカッコ良く助けてたり」


 サリーは実際助けたもののかずや自身も巻き添いを喰らったことを隠しながら。二人が肯定的になおかつ事実を述べたことで一応満足はしたのだろう。アカリはお預けを喰らった状態のイツキにチャイを渡すと、ニッコリと微笑みながら礼を述べた。

 ホっ、と胸を撫で下ろすサキとサリー。なぜならアカリはオジー家姉妹の中でトップクラスの口の軽さを持ち、彼女が広めた噂話は数知れず、人の口に戸は立てられぬをまさに具現化したような要注意人物だからだ。そんな良く言えば流行発信源、悪く言えばスキャンダル発見器なアカリに対して上手く対処出来たと安堵するその束の間。アカリは不意打ちとも言えるタイミングで口を開いた。


「ところで、噂のかずや君は今どこにいるの?アミ達もいないし……。もしかしてもう城にいるの?」


 ギクっと硬直するサキとサリー、そして固唾を飲んで見守っていたカリンが固まる。流石のアカリもまさかかずやが今、荷車の中で拘束されているとは夢にも思わないだろう。幸いだったのはアミや他のメンバーがこの場にいなかったことで、アカリの誤解を招くことが出来たことだろうか。

 カリンは助け舟を出そうと、脳をフル回転に稼働しながら必死になって言い訳を考えていると、サキが一筋の汗を額からタラリと流しながらアカリに告げた。


「かずや君なら今は長旅の疲れで寝てるはずだよ。えっと、正式なお客様として接することになったから……」

「あー、そっかじゃあもう城でアミ達と一緒に休息してるのかな」


 実際にかずやが寝ているのは全くの別の理由による全く別の場所だったが。しかし、いろいろと早合点したのか、何処かワクワクした様子で帰り支度をするアカリ。どうやらこれからかずやの様子を見に行くらしい。実際外も長々と話す内に随分と時間が経っていたのか雨は晴れ、道ももう嵐などなかったかのようにほとんど乾いてきている。

 サキとサリー、カリンが罪悪感に包まれた表情を浮かべながらアカリを見つめていると、アカリはイツキの首根っこを掴みながらバーチャマとお喋りを続けるミサに声をかけた。


「じゃあ、ミサおばあちゃん。私達はかずや君の様子を見に行くからもう帰るね」

「そうかい?じゃあ今期もありがとうね。また来るのよ」


 ミサとのやり取りもそこそこに、もう靴を履き、イツキを片手にスタンディングスタートの構えを取るアカリ。


「えっとお姉ちゃん⁈ウチはまだここに……」

「早くかずや君を見に行こう、イツキ。善は急げだよ。じゃあね、みんな、また後で」


 イツキの言葉など無視して渡り風のようにピューっと勢いよく駆け出したアカリはイツキを引きずりながら城へと戻っていった。


「……どうやって帰そうかと思っていたが手間が省けたの、ホホホ」


 元々、遺跡調査に同行したがっていたアカリだったが、毎年この季節、特にフーガシャワーの雨の時期はミサのお手伝いという予定があるため泣く泣く断念していたのだ。

 今度は村の男衆と合流しにいくと言い出したらついてくる、と言って聞かなくなるだろう。

 最悪、遺跡の資料を取りに行くお使いを頼んでこの場から撒こうと思っていたバーチャマは、きりりと表情を変えながらミサにあるものを注文した。


「……じゃあミサ。至急魔力茶の用意を頼む。これから向かうところがあっての」

「あら、そう⁈じゃあ、お喋りもこれまでね」


 バーチャマの真剣な眼差しに、ミサはいそいそと魔力茶の茶葉を専用の袋に詰めると、そのまま手渡した。


「いつも、すまんの。じゃあ私は急がないといけんから失礼する。あとは頼んだぞ、カリン」

「で、ですが、カナがまだ。それに、やはり従者無しで行くのには無理があるかと」

「荷物なら東口を出る辺りでカナが持ってきてくれるじゃろうし、老いぼれならともかくまだ若いお前さん達を連れていってしまえば男衆が荒れそうじゃ。後はアイゼンがなんとかしてくれよう」


 何を言っても聞かなそうなバーチャマを見て、この件に関しては手を引くことにしたカリン。カリンはそのまま荷車の方に戻るバーチャマを見送ると、サキとサリーに指示を出した。


「私はミサさんの手伝いをするから、二人は大叔母様が必要そうなものを持たせてあげてね」


 一護衛の自分より、小物やガラスなどの繊細なものを作る生産者の二人の方が細かいところに気付くだろう。そう判断したカリンはバーチャマの補佐という役目を二人に課すと、自分は出来る限り邪魔にならないようにミサの隣に座った。

 そのままカナに頼んだもの以外で必要そうな小さなものを荷車内に運び入れる二人。それを見守るカリン。

 すると、ミサが同様にその光景を見つめながらポツリと呟いた。


「本当、アミに似てきたねぇ、カリンちゃん。本当は自分が一番気配り上手なのにねぇ」


 ミサはしみじみとした様子で目を細めている。カリンはフッと口角をあげて笑みをこぼすと、小さく告げた。


「普段工房にこもってる二人だから、たまには自分の仕事以外でも人と関わらせようと思いまして。例えそれが大叔母様のお手伝いだとしても」

「それを思いやりと言うべきか、ちゃっかりしてると言うべきか…迷うところね」


 カリンとミサがやり取りをしてる間に、準備が整ったようだ。


「じゃあ、行くかの、ホホホ。また来るぞ」

「ええ。またね、バーチャ」


 バーチャマは馬に乗って荷車を引き始めると、茶店に残ったもの達に礼を述べながらその場を去っていった。


「私、この調査のおかげでまたいい小物を考えたから先に戻るね」


 そういいながら自分の工房に戻っていくサキ。ミサ、カリン、サリーはバーチャマとサキ両方の背中を見送りながら次の行動へと移っていた。

 カリンはフーガ村南口の仕事場へ。ミサは足りなくなった茶葉を補充する為店内へ。そしてサリーは白猫チャイに餌を与えてから戻ろうと思っていたのだが……。


「あれっ?チャイがいない……」


 いるはずのチャイがいないことに、サリーはただ呆然とすることしかできなかった。結局その日、チャイがどうなったか知るものはいなかった。










































「うわ、毛玉吐きやがった!!ちょっ、やめ、やめろ!眉毛を舐めるな!!耳をあん、甘噛みするなぁ〜!!」


 くどいくらいにまたしてもこの男、かずやを除いて。

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