15話 【フーガシャワーの雨】
前回のあらすじ
かずや一同が帰還する間、アカリとイツキがミサばあちゃんのところで何かの準備をしていた。はたして何の準備だったのか?
フーガ村に近づくにつれて次第に層が分厚くなっていく入道雲。それに比例するように辺りの暗さが増していく。
「えっ?あそこに突入すんの?あれマジヤバイんじゃね?」
更にブルブルブルブルと戦慄するかずやのリアクションも大きくなっていくが、迷惑そうにしているのはかずやを乗せているサンドロだけだ。
「ホホホ」
他の一同はニヤニヤとした眼差しで不気味な奇声をあげている。実際に声をあげていたのはバーチャマただ一人だったが。
かずやはそんな彼女達の様子におどろおどろしい気分を抱いていると、サンドロが上で暴れるかずやに流石に痺れを切らしたのか、少し苛立ちながら声を荒げた。
「かずやさん、僕の上で暴れないでください」
「そんなこと言ったって無理だ」
「ちょ……っ、全く、呆れるくらいバランス感覚がいいんだから……」
移動するダチョウの上でブリッジやムンクの叫びのモノマネをするかずやが自分からずり落ちないことに対してサンドロは感心を通り越して溜息をついていると、かずやは今度はコアラのお菓子のようにサンドロの首をギュッと抱きしめながら反論した。
「お前これが暴れないでいられるか!雨ならまだしも誰が好きこのんでハリケーンのある地域にわざわざ近づくんだよ⁉︎台風十八号にわざわざ裸で挨拶にいくようなもんだぞ!これが落ち着いていられるか!」
「大丈夫ですから、落ち着いてください」
最後の方は理解に及ばぬものの、あのハリケーンに対して類まれなる恐怖を抱いていることを瞬時に察したサンドロは、腫れ物に触れるように慎重にかずやを宥めていると、見兼ねたバーチャマが何かを含むように笑みを浮かべながら口を開いた。
「落ち着け、小僧。何、あれは安心、安全じゃよ。なぜなら……」
バーチャマが話す内にとうとうかずや達の辺りの雲が空を覆いはじめる。
夕暮れ時を過ぎた時間帯にでもなったような暗さとバーチャマの前振りにかずやは徐々に言いようのない肌寒さを覚えていくと、バーチャマは入村目前になり、点となってその姿を現してきた村の南口に薄っすらと目線を向けながら高らかに告げた。
「もうすぐ、あのハリケーンがフーガ村名物の期間限定のテーマパーク、【フーガシャワーの雨】に生まれ変わるんじゃからな」
ドヤ顔でかずやを見つめるバーチャマ。
かずやはバーチャマのとんちんぷんかんな発言にこれでもかというくらいの疑問符を漂わせる。
「何ですか、その【フーガシャワーの……」
「すみません」
そのまま詳細を問いかけようとするも、突如アミが二人の会話に乱入する。そして、アミは荷車の中にいるバーチャマを振り返りながら口調を大きくした。
「大叔母様。間も無く結界の中に入ります、いかがなさいますか?」
「そうじゃの。雲行きも怪しくなってきたし、本格的に始まる前に村に入っておこう」
「聞いたハーブ二号じゃあはりきって行こう!!」
その声に応えるようにカエデが待っていましたとばかりに万を辞して先頭を走るハーブ二号の横腹を蹴る。
ハーブ二号を皮切りに最後のラストスパートをかけた一同はフーガ村の南口に向かって一目散に駆けていった。
「ちょっと、僕の質問が」
暗闇に近い中を走ることにビビりながらも声を絞り出したかずやは震え出した身体に似た視線でバーチャマの方向を見つめると、バーチャマはすかさず不敵な表情で顔を固めながらいつものような笑い声をあげた。
「論より証拠じゃよ、小僧。口で言っても説明は出来ん。男ならこれから起こることを楽しみに待っておれ」
「そうだよ。ビビってても意味ないよ」
「「そうそう!!!!」」
「zzZ...」
バーチャマに同調するようにタミが、そして他の面々が(約一名除く)息を合わせる。
「そんなこと言われたって……」
無理なものは無理だ、と文句をつけようとしたその時、話を聞いていたトゥインカが突如口を挟んだ。
「一度来てみたかったんです、ここのテーマパーク。無料で、子連れオッケーらしいですし」
「えっ?トゥインカさんも?ってかそんな有名なんですか、ここ?」
更にはトゥインカまでもがまるで口コミで聞いたかのような母親目線で語りだしかずやはもはや訳が分からずに焦り出す。
しかし、トゥインカはそんなかずやなどお構いなしに前方を走るバザールの方向に目線を動かした。
「家族サービスでいつかは連れてきてくれるって言ってたのに、全然連れていってもらえなくて……」
トゥインカがチラチラとバザールを盗み見ながらしくしくと同情を誘う真似をすると、バザールが必死の形相で翼をバタバタとしながら弁解した。
「いや、母ちゃん。勘弁してくれよ〜。結界だってあるんだぜ〜。それに今回はかずや達を送り届けるだけって言ったじゃねぇーか」
もはや言い訳に近い弁明に女性陣からのブーイングの嵐が巻き起こる。
「結界のせいにしないでください!」
「そうですよ、心外です」
「それは言い訳にすらならないよむしろ悪化させてる」
「やっぱり親子丼にして食べといた方がよかったかな」
最後の一言に悪意を感じたのか、バザールと一緒に鳥肌を覚えるサンドロとココナム。
しかし、バザールにはまだもう一言、重たい言葉が待ち構えていた。
「父ちゃん、母ちゃんとの約束、破ったの?」
ガーン、と首を落とすバザールにかずやは内心ざまみろとほくそ笑む。
しかし、かずやがいい気味だと構えていられたのもこの瞬間だけだった。
なぜなら後ほど、かずやの苦手なものが全員にバレることになるのだから。
「結界に突入します!!」
アミの声に従い、全員が全速力で駆けていく。やがて、一瞬ふわふわな布団に包まれるような感触の後に結界内に入ると、そこからはまるで暖房のきいた部屋に入ったかのように空気が変わっていた。突然、肌寒さが消えて蒸し暑さが戻ってきたことに衝撃をおぼえていたかずや。
しかし、次の瞬間。
ピカ〜ゴロゴロ!!!
突然の稲光と共に雷鳴が轟くと、雷が落ちた結界の箇所からは充電をするかのように結界全体が発光し、空は完全に雲で覆い隠された。
「「着いた!!!」」
かずやとマイとダチョウ達を除く歓喜の声が漏れると同時に一同はフーガ村の入り口に滑り込むように駆け抜ける。やがて何処かの広場に辿り着くと空から異常気象の始まりを告げる最初の一滴が降り注いだ。
「みんな〜一肌脱いで広場まで行くよ!!!」
「えっ⁈……え〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
かずやがカエデの声に驚いたのも束の間。その途端にバケツをひっくり返したばかりか滝のように流れ落ちる大量の雨が降り始めた。
バッシャーン、とかずやの頭上から一気に身体全体が濡れる。かずやが辺りを見渡すと、その先では明らかに降水量の違う雨が一部では霧状に、また一部ではジョウロから注がれた水のように様々な形状で地面を湿らせていた。
目を疑うばかりの光景にかずやは思わず目を擦ると、突然、辺りを揺らさんばかりの地響きの音が耳朶に触れて顔をあげた。
「な、なんじゃこりゃーーーーーー!!!!!」
かずやが声をあげるのも無理はない。
「やった!遊ぶぞ!!!」
「今月は【泥場】で遊ぼうよ!!」
「滑り台は私のものよ!!」
なぜなら彼の視界一面には実に五、六歳はくだらない幼稚園児くらいの小さな子供達が我先にと年男を決める祭りのように広場を目指して走ってきていたのだから。
裸で。
随分と久々になってしまいましたが、作者は絶対にエタりません!
本当は書き溜めてから投稿したかったのですが、忙しかったので無理でした。
長い間放置してしまい誠にすみませんでした。またぼちぼち再開するのでよろしくお願いします。




