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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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13話 待ち受ける者達

今回はかずやが出る代わりに新キャラの正体が分かります。

お見逃しなく。

 オジー王国、フーガ村。

 大陸中央部分の西端に位置し、最もオジー王国内で隔離された村である。

 その理由は千差万別とされているが、その内の一つにあげられるのはフーガ村を含む地域特有の異常気象によるものだ。

 赤道付近に位置するフーガ村は本来、西端に位置することも手伝って雨が殆ど降らない地域になっている。

 フーガ村より南に行けばすぐに砂漠が広がっているのも、東の方だけに小さな森が広がっているのもその影響を大きく受けているからだ。

 しかし、フーガ村では何故かその常識に当てはまらない異常気象が発生する。

 それは、大量の海水が急激に熱され、高気圧を作り出し、その所為で生み出される巨大な竜巻。

 地域や人によって、ハリケーンや嵐、サイクロンなどと名称が異なる大型の雲の渦のことである。

 本来西へ、西へと流れていくはずの巨大な雲がフーガ村ではなんと毎月に一度と頻繁に発生しているのだ。

 理由ははっきりとは解明されていないが、そんな異常気象が頻繁に発生する地域では人間は愚か生き物など生息出来ない。

 ましてや永住などもってのほかだ。

 しかし。

 フーガ村にはハリケーンに対抗でき得るだけの秘策があった。

 ハリケーンを打ち消すのではなく、その力をそっくりそのまま利用する裏の裏の秘策が。



 ◇◇◇



「アキ、結界の強度は大丈夫かしら?」

「はい、お母様。先ほど警備の者達に確認させたところ、どこにも異常はないと判明しています」


 迫り来る大雲を城のバルコニーで見つめながら、黒髪の女性、アントワンヌが確認をとる。

 傍らに佇む、紫色の短髪の女性、アキは彼女の質問に一つ頷くと、すぐに即答した。

 いつもは物理的に刺されるように感じる熱気も、今は少しだけなりを潜め目前の雲に感化されている。

 ピリリと伝わる空気の変化にアントワンヌは僅かに身体を震わせて反応しながら、アントワンヌは今度はアキに視線を向けると、やけに心配げな目で彼女に言った。


「やけに面倒な時期に帰ってくることになったわね……アミ達に村の男達」

「はい、お母様」


 母の不安げな発言に深妙に頷くアキ。

 しかし、アントワンヌはそんなアキの態度に呆れたのか少し口調を変えて彼女に伝える。


「あのね、アキ。今は母親として話してるからそんなに畏まらなくてもいいのよ?」

「いいえ、今の私はアミの代わりという任務中なので」


 さっきからアキは片手を胸に当て、何処かの執事か騎士のような格好でアントワンヌと対応している。

 それを指摘したアントワンヌだったが、アキのよく言えば責任感の強い、悪く言えば頑固な返答に思わず苦い笑みをこぼした。

 何を言っても変わらないと判断したのだろう、アントワンヌはアキから視線を逸らして身体の向きを変えると、眼下に広がる景色を見下ろした。

 陽もまだ登らない早朝であるがゆえに村は暗く、活動を停止しているが、アントワンヌはこれから男衆が帰ってきた時に村で起きうることを想像して相好を崩した。

 そんな母親にアキはきりりとした表情を向けると、そのまま淡々と別の報告をはじめた。


「ところで、村の方でもそうなのですが、城の方でも歓迎パーティーの準備が進められています」

「あら?それなら良かったわ」


 単純に安心する気持ちもそうだが、それよりもアキが的確なタイミングで今知りたいと思っていたことに対してすぐに報告したことに驚嘆するアントワンヌ。

 アキは一瞬唖然とした母親の様子に少しだけ得意気な顔ではにかむと、また業務用の表情を顔に張り付けながらもとの姿勢に戻った。

 そんな彼女の様子に軽く頷いたアントワンヌは空を僅かに仰ぎ見ながら腰の後ろで手を組むと、やけに慎重に言葉を選びながらアキに尋ねた。


「それで、例の件はどうなっている?」


 こちらも業務用の言葉遣いに変更したアントワンヌにアキは表情一つ変えずに手元に持っていた書類を渡すと、そのままゆっくりと申告した。


「それは本人から直接話を聞いた方がいいと思われます、お母様」


 アキの言葉と同時にアントワンヌが絶景から背を向けると、部屋の陰から現れたとある人物に目を合わせながらおもむろに口を開いた。


「なるほど。もう戻ってきていたか」


 アントワンヌの視線の先で揺らぐプラチナブロンドのポニーテール。

 すらっとした体型を動きやすい格好に閉じ込めた女性からはアントワンヌと同じか同様の雰囲気、惑いは妖気のようなものが醸し出され、どこか近寄りがたいような不思議な空気を見にまとっていた。

 そんな彼女にアントワンヌは成果を尋ねる。


「で、どうだった。例の盗賊団の様子は」


 アントワンヌの威厳溢れる声に女性は臆するそぶりすら見せることなく顔をあげると、そのままアントワンヌのように漆黒の瞳で彼女を見つめながら答えた。


「やはり盗賊団は川の向こうの隣国との境界線あたりに向かって進んでいきました。おそらくは他の仲間と合流するためでしょう。私も隣国側の川岸まで後をつけていたのですが、なにぶん警戒心が強かったもので……。最終的には二手に別れ更に二手に別れるといったように移動されてしまい撒かれてしまいました」


 感情性が感じられない女性の返答に若干眉を曲げながら不機嫌そうに息を漏らすアントワンヌ。


「まぁ、こちらに寄せてきたのも下っ端の方でしょうから、さしずめ本部とは別の場所へ報告にでも行ったのでしょう」


 アキが自分の意見を掲示すると、ひとまず落ち着いたのか、アントワンヌは不機嫌そうな表情を上手く取り繕いながら彼女達に告げた。


「そうか……。まぁ、過ぎたものは仕方あるまい。今後も国境線の盗賊団について情報が手に入りそうなら速やかに連絡してくれ。今留守にしている王に伝えるためにも重要になってくるから、カホ。王の為に報告書を書いてほしい。出来るだけ早急に頼む。そしてアキは男衆を迎える準備と結界の準備を並行して進めておいてほしい。二人とも頼めるな?」


 アキは言われたことに対してすぐに反応すると、軽く一礼してからその場を去っていった。

 しかしカホ、と呼ばれたプラチナブロンドの髪をポニーテールにした髪型の女性は少々戸惑いながらアントワンヌに告げた。


「私、報告書は、苦手です」


 相変わらずの感情が読めない声色に比べ、カホの表情からは拒否を示す負のオーラが醸し出されていた。


「ま、まぁ、これも重要な案件で時期的にも手の空いているものはいないから、どうにかやっておいてくれ」


 そんな不気味なカホに若干冷や汗を掻く覚えを抱きながらもそう伝えたアントワンヌは、カホにもう下がるように命令した。

 どこか不満気だが、あくまで指示は指示と開き直ったカホは静かに頭を下げながら足を一歩部屋にいれると、そのまま瞬く間にその場から消えてしまった。

 しばらくカホが消えていった先を見つめるアントワンヌ。

 そのまま振り返って村を見下ろすと、さっきまで全体的に暗かった空間にうっすらと影が浮かび上がっていた。


「さて、私も動くとするか……」


 アントワンヌの呟く先にはオレンジ色に染まりはじめた小高い丘が。

 しかしそんな明るい色合いとは裏腹に海からはどす黒い雲が近づいてきている。

 そんな迫りくるものを受け入れるため、アントワンヌは部屋の中に戻っていくと、窓をパタンと閉めた。

勝手な事情なのですが、実は七月に海外旅行に出掛けるのでまたしばらく更新出来ないかもしれません。

その際は更新が遅れるのでご了承ください。


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