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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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12話 バザールとの夜

最近筆のノリが良くて清々しいのです。


さて、皆さん。

今後の趣旨の変更についてご報告がございます。

以前は2000〜3000文字を目安にしてきた作者ですが、一年間の歳月を経て同じ執筆速度で+500文字上げることに成功しました。

つまり、これ以降作者は毎週2500〜3500文字を目安に投稿していきます。


以前の短いほうが良かった方には申し訳ないのですが、これもストーリーを早く展開させるために必要なことだと思うのでご了承ください。


前書きでの長文、失礼しました。

 砂ばかりだった風景が段々と変化していく。

 俺たちはいよいよ砂漠と平野の中間地点に差し掛かると、僅かにスピードをあげた。

 遠くに小さな点が見えるが、おそらくあれはフーガ村の城だろう。

 小高い丘の上に建てられた学校ほどの大きさの城は何故かこの地点からでもよく見えた。


「クケェ~!!!」


 バザールが小さく雄叫びをあげる。

 いよいよラストスパートをかけるのだろう。

 その証拠にサンドロやココナムもスピードをあげてるし。


「ぅあ~……。眠ム……」


 俺はサンドロの背中の上で彼らを見つめながら欠伸をする。

 そしてそのまま俺はしっかりとサンドロの首に捕まると、彼らと過ごした昨晩のことについて思考を移すことにした。



 ◇◇◇



 満天の星空。

 少しずつ顔を覗きはじめた月。

 真っ黒な夜空のカーテン。

 この世界に来てから何度目になるかは分からないが、俺は日本より遥かに星の数が多い空に見惚れていた。

 冷たくなった砂の上に横になり、そのまま宇宙に向かって手を伸ばす。

 今にも届きそうなのに決して届かない星にすごいもどかしさを感じる。

 それなのに俺はどうしてか胸の中に湧き上がる躍動感に困惑していた。

 多分この躍動感はこれから起こることに対して待ちきれない気持ちと、なんとしてでも元の世界に帰ってやるぞ、という意気込みとやるせなさが合わさって生まれたものだと思う。

 そう思うと、目の前の星空が虚しく見えてくるから不思議だ。

 だって俺はどうやって帰るかわからない元の世界のことしか考えていないのだから。

 そう思うとまた……。

 いや、もうこのことを考えるのはやめにしよう。

 せっかくの空をじっくりと見れなくなるじゃないか。

 俺は自分の思考の中で元の世界のことに一旦そう結末をつけると、今度こそ天体観測に集中することにした。

 知ってる星座を見つけようにも星の数がありすぎて全く分からない。


「あーあ、星座とか分かればなぁ、ってここ異世界だから関係ないじゃん」


 一人呟いている内にそう結論付けた俺は、どうせ知らないから、と星座に名前をつけることにした。


「あれがギョウ座で、こっちがモナリ座。それからあれは……うん。バザール座だな」


 誰もいないからと星座に子供っぽい名前をつけていると、何か近くで物音が聞こえた。

 思わず身構えるも、何も出てくる様子はない。俺は念のためにすぐに逃げられるように靴をそっと履くと、そのまま今度はどんな物音も拾えるように耳を傾けた。

 …………。


「良かった。何も聞こえな、うわっ⁈」


 一瞬気を緩めた隙に、目の前が真っ暗になる。

 声を出すために暴れようにも、口には変な感触がする布みたいなのを押し付けられ、声が出せない。

 さらには、暴れようともがいてみるが、全く歯が立たず、むしろ雁字搦めにされる始末である。

 俺は最後の抵抗とばかりに手足をバタバタさせていると、足が枝のような固いものに当たった。

 必死に手を伸ばそうにも全然手が届きそうにない。

 しかたがないので、足で蹴って届く範囲に動かそうと思ったら、蹴られた枝が地団駄を踏んで俺ごと揺さぶった。


「っ!ちょ、俺だ俺。バザールだ。いいから落ち着け」


 すると俺の後方から聞き慣れた声が。


「えっ?」


 という素っ頓狂な声と共に起き上がった俺は目隠しを思い切って振り外して振り向くと、そこには申し訳なさそうに翼で頭を掻くバザールの姿があった。


「あー、悪りぃ。起こしたか?」

「いや、起こしたも何も一生起きなくなるところだったけど」


 バザールの謝罪に皮肉で返す俺。

 窒息死するかと思ったんだから当然の仕打ちをした、と思いたい。


「ほんと、ゴメン。……で、あのさ」

「何?」


 その後も何か言いかけるバザールにぶっきらぼうに尋ねる俺。

 バザールは棒立ちのまま無言で佇んでいると、やがてふー、と一つ息を吐きながら俺に告げた。


「あのさ……。話があるんだ」


 バザールの普段とは程遠い雰囲気にさっきまでの苛立ちも息を潜める。

 俺は何やら深刻そうなバザールに向き直ると、バザールはなんだか照れ臭そうに頭を掻きながら嘴を開いた。


「なんかさ。明日で終わりじゃん。俺たち」


 まったりというかたどたどしいくらいの速さで喋るバザール。

 俺はバザールの態度からなんとなく言いたいことを察すると、ぶすっとした表情を元に戻しながら頷いた。


「そういえば俺たちを村まで送り届けるまでだったな」


 ボソッとそう言い返しながら身体の向きを変えて、横目で相手の反応を窺う。

 バザールは徐に空を見上げていた。

 だけど、バザールの目は星ではない物を見つめていて。

 俺も同じように空を見上げると星を見つめた。

 そのまま無言で佇む俺たち。

 バザールは突っ立ったままで。

 俺は腰を落として体育座りをしたまま。


「……とな」


 そのままただ静かに空を見つめていると、バザールがボソリと何かを呟いた。


「んっ?」


 しかし、声の大きさが虫の羽音ぐらいで俺は大げさに恍けたフリをしながら尋ね返す。

 また沈黙が場を包み込む。

 俺がまた視線をなんとなしに上方に移すと、今度はバザールがはっきりと聞こえる声で俺に告げた。


「三日間、ありがとな」

「…………おう。俺もな」


 本当に悔しそうな表情を作りながら礼を告げるバザールに、俺も感謝の気持ちを込めた言葉を伝える。

 全く。

 俺たちにこんな空気は似合わないだろ。


「…………と、トゥインカさん達にそう伝えておいてくれ」

「はっ?テメェ、俺が必死に絞り出した言葉をコケにしやがって」


 俺は思いっきり顔の筋肉を緩めてバザールの顔を指差しながらオーバーに笑うと、バザールはからかわれたことに気づいたのか俺の顔に砂をかけはじめた。

 それをサッと躱しながら同様に砂をかける俺。

 本当に俺たちは行動や思考回路が小学生のガキ以下だ。

 でも今だけはガキ以下でもいいと思った。


 月が俺たちを照らしだす。

 砂のかけ合いは、結局、俺とバザールが砂の中に埋まるまで繰り返された。

 えっ、誰が俺たちを埋めたかって?

 もし名前を言ったが最後、ミシンのような速さで頭を貫かれてしまうので、俺は黙っていることにする。

 バザールはもちろん、死ぬほど突つかれていたが。

 こうして俺たちは遺跡調査の旅の最後の夜を過ごしていった。



 ◇◇◇



 翌朝、砂に埋められていた俺たちを救出してくれたのは何故かタミだった。


「はぁ、どうして厄介なことは私の手に……」


 と、天に向かって嘆いていたが、タミによると今回助けてくれたのは特別らしい。

 なんでも、他のメンバーは名を名乗ってはいけない例の方に口を止められていたらしい。

 訳を聞くと、他のメンバーではありがたみを感じないからとかなんとか。

 まぁ、とにかく。

 俺たちはそのまま軽めの朝食を摂ると、直様フーガ村に直行した。

 今回は別のルートを辿るらしく、その証拠に行きではあまり見かけなかった草がちらほらと見えはじめている。

 こうして俺たちは最後の道のりを行くことになった。


 そして、今に至る。

 あれからバザールは目の上にたんこぶを作りながら走っている。

 俺は特にダメージはないが、あれからずっと黙ったままでいるバザールにはかなりの痛手だったのではないだろうか?

 俺はそんなことを思いながらサンドロの首に捕まっていると、突然辺りが暗くなった。

 何事かと思い、空を見上げる。

 すると、俺がこの世界に来てから一度も見なかった雲が空を漂っていた。

 真っ白でふわふわに見える入道雲。

 どうやら俺の気づかない間に雲が集まってきていたらしい。

 まぁ、特に興味はないので前方に目線を向ける。


「えっ?ちょっと待て。さっきまであんな雲無かった、よ、な?」


 俺の視界の向こうには先ほどよりほんの少しだけ近くなった城の先端が。

 しかし、その横。方角でいう西の方向にそれはあった。

 まるで波が襲いかかるような速さでゆっくりと、しかし着実に歩を進めているそれは正しく雲。

 しかし、普通の雲との違いはそれが大きな渦になっていたことだ。

 薄汚れた鼠色の巨大な渦に。

 自然に発生したとは思えないその大きさと形成されていく速さに俺はもはや言葉を失っていた。


「ハリケーン……」


 誰かがそう呟く。

 しかし、俺の耳には何処か遠い所から鳴り響く警報の音のように聞こえた。

次回は7月5日15時を予定しています。

ですが、作者の別の作品があと一話で完結なので、それを優先して書きたいと思っています。もし遅れたらすみません。


それではまた!

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