9話 かずやの予定
うーん。やっぱり出来たらすぐ投稿より、少し待ってもらっても往来の週一投稿の方が良さそうなんだよな。はてさて、どうしましょうか。
「おお、新しい服だ」
荷車の中でとある男が薄気味悪い笑みを浮かべながら、新調された真っ白な服に頬ずりをしている。
なぜならば、ここ数日の間、男は同じ服を何度も何度もそれこそいついかなる時も着用していたからだ。
彼は数日ぶりの服を感謝する思いで身に纏っていくと、幾分かうわずんだ声をあげながら荷車の外で待機している者達に呼びかけた。
「もう、入ってもいいですよ」
朗らかに弾んだ声が響き渡る。
その後、キーというドアの音と共にドアが開くと、外から何人もの女性が荷車の中に入ってきた。
「おーかずやくん決まってるねなんだか臭いけど清潔感があるねいいと思うよ!」
入ってきて早々、橙色の髪のカエデが一声を発する。
「えっ?く、臭いですか?」
「うん臭い」
どもる男、かずやに即答するカエデ。相変わらずの早口に気を取られそうになるも、かずやはそれ以前に彼女に言われた内容にショックを受けたのか肩を落としてしまった。
「えっと、確かに匂いはしますけど、良く似合ってますよ」
「うんうん、臭いけど似合う」
すかさずアミやサキがフォローに入るも、かずやにとっては泣きっ面に蜂だったようだ。
追い打ちをかけられたかずやは荷車の隅っこの方に移動すると、小さく体育座りをしながらどんよりとした空気を放って不貞腐れた。
「こらこら、言い過ぎじゃぞ。全く…。反応が面白いからといってからかってばかりいたら話が進まんじゃないか。もう少し自粛しなさい」
そこに現れたバーチャマの一言に、全員がしゅんと縮こまる。
「分かったら匂いのことなど気にせずにさっさと話を始めるぞ!」
はーい、と言う返事と共に全員が床に座っていく。
かずやは、からかわれてたのか、とか何とかとブツブツつぶやきながらも諦めたように溜息を漏らすと、そのまま他の女性達と同じように輪の中に入っていった。
「では、これからこの小僧の今後について小さな話し合いを行う。初めに言っておくが、ここで決めることはあくまでもフーガ村に帰るまでの決定事項じゃ。その後、この小僧がどうしようと勝手だが、まぁ、まずは現状を把握してもらおうかの。小僧。一応、今日までのことと今後の予定を聞かせておくれ。こちら側としてもいろいろ整理しておきたい」
バーチャマの掛け声とともに全員が聞く姿勢を整えると、彼女はそのまま注意事項、確認を含めてかずやに尋ねた。
「えっと、つまりこの世界に来てから、でいいんでしょうか?」
一瞬首を捻るも、とりあえず話の趣旨を理解した様子のかずや。
「うむ。物わかりが良くて助かる。それじゃあ、アミ。小僧のことを紙に纏めてくれ」
バーチャマはかずやの返答に満足げに頷くと、今度はアミに向かって声をかける。
アミは紙と筆記用具の準備を済ませると、かずやに話を進めるよう促した。
「えっと、じゃあ、どこから始めようか……」
かずやは自分に言い聞かせるようにポツリとそう呟くと、長いようで短かった濃密な七日間について思考を巡らせた。
パワースポットの洞窟を抜け出た先に現れた広大な砂漠。
戻ろうとしても洞窟は無くなっており、行く当ても無ければ帰る当ても無く、おまけに自分が着ていた服も無くなっていた始末。
猛暑と降り注ぐ日差しの中彷徨い、終いには気絶した後は、偶然見回りをしていた女性と鳥に介護された。
その後は大蜘蛛に変身する妖美な女性やその娘達と、盗賊団に遭遇したり、買い物に行ったり。
元の世界に帰還する方法が分かるかもしれないからとオカリナ遺跡に旅立った暁にはダチョウに襲われ、結局遺跡は巨大蛇、キングコブラのせいで崩壊。
そして現在、手がかりも何も見つけられず、途方にくれている状態の自分は今後のことを話し合っている。
かずやはそこまで思考を進めながら淡々と自分が経験したことを語り終えると、自分の話を黙って聞いていたバーチャマがゆっくりと頷いた。
「うん。確かにそんな感じじゃの。一応礼を言うぞ、小僧」
バーチャマは微かに笑みをこぼしながらかずやに礼を告げると、今度は横目でアミがまとめ終えるのを待った。
五秒から十秒の間、ただ紙が擦れる音が場を支配する。
やがて、アミが全てを書き留めると、かずやはタイミングを見計らってバーチャマに尋ねた。
「あの、すごく今更なんですけど、なんでわざわざ確認を取ったりするんですか?ただフーガ村に帰るのにそこまでというか、これ自体に意味はあるんでしょうか?」
かずやの疑問にバーチャマとアミ、カリンとカナ以外の一同が共感を覚える。
ただ帰ることと今のやり取りになんの関連性があるのだろうか。
かずやの素朴な疑問に、バーチャマはまた新たな表情を作ると、かずやに問いかけるように告げた。
「まだ分からんのか?お前さんは介護というよりも、救出されてこの村、しいてはこの国に入ってきたんじゃぞ?」
バーチャマの遠回しな言い方に疑問符を浮かべるかずや。
すると、今の発言で何かに気がついたのかサキが唐突に口を開いた。
「あっ、そっか。かずや君は正式に入国してないんだ⁈」
その言葉にバーチャマが頬を緩める。
「そうじゃよ、ホホホ。つまり小僧には正式な客人になってもらわねばいけぬのじゃ。世間的にも時期的にもの」
「なるほど、違法入国してるから改めて入国しなきゃいけなかったんですね!」
最後の一言に引っかかりを覚えるも、まるで歯車が噛み合ったように納得したかずや。全ての辻褄が合ったことでどことない爽快感を感じながらそう返答すると、バーチャマはかずやの顔をまじまじと覗き込みながらさらに続けた。
「その通りじゃよ。だから新しい服とか、この大きめの荷車とかをわざわざ用意しておいたんじゃ。もちろん、お前さんが帰ってくる場合を想定してな」
バーチャマが告げた衝撃的な事実に目玉が飛び出るほど驚くかずや。
その証拠に口が魚のようにパクパクと開いている。
「やっぱりかずや君、ウケる」
すると、サリーが小声でそう呟きながら口を抑えた。
他の女性陣も必死に笑いを堪えている。
そんな中、バーチャマと年長組(カエデを除く三名)はお互いに目配せをすると、アミが代表して真剣な声でかずやに告げた。
「だからこうして正式に入国する以上、かずや君には一肌脱いでいただきたいんです」
「えっ⁈ 僕にですか?いや、ちょっと意味が分からないというか、何をすればいいんでしょうか?ほら、脱いでも何も出ないし…」
サリーの一言に気を取られていたかずやはアミの発言にイマイチピンときていない様子で、狼狽えている。
同時に返した勘違いな言葉で笑いを煽っていたのは言わずもがな。
「バカもん。違うわい。つまり、入国する際に色々準備しないといけないからお前さんに協力してもらいたいと言っておるのじゃ」
すると、バーチャマがかずやを小馬鹿にした様子で一喝し、説明を加えた。
その言葉にまたもや混乱するかずや。
「何が言いたいのかって言うと、これからかずや君の身分をでっち上げる為に設定を作っていきたいんだ」
「いわゆる身分証明書みたいなのが必要なのでそれを今日からみっちり作っていくんですよ」
カナやカリンが更に付け加え、ようやく彼女達の趣旨が掴めたかずや。
「つまり、入国する際には身分証明書が必要で、今の僕には身分証明書がないから作らないといけないんですね。で、異世界から来た僕はこの世界での記録がないから身分証明書自体をでっち上げるしかないと」
合点がいったかずやはそう言って確認を取る。すると、バーチャマがまたもや笑みを浮かべながらかずやに告げた。
「そうじゃよ、ホホホ。しかも、私達王家との関わりがあってもおかしくない地位にお前さんを置かなくてはいけないからの」
「んっ?ちょっと待ってください。今王家って……」
バーチャマが告げた言葉の違和感と共に何だか嫌な予感がかずやの身体を突き抜ける。
すると、バーチャマは呆然とした様子のかずやに向かってとぼけた口調で口を開いた。
「あれっ?言ってなかったっけの?てっきり誰かさんが話していたと思っていたのだがの」
バーチャマは隣で筆記用具を片手に明後日の方向へ顔を向ける誰かさんに目線を向ける。
その様子に呆れた顔で溜息をつくバーチャマは俄然、唖然とした様子のかずやにこう言い放った。
「まあ、そうじゃ。このオジー王国は私の甥、すなわちこの子達の父親によって統治されている。つまり、ここにいる私達は全員プリンセスなのじゃよ」
「えーーーーーーーーー!!!!」
かずやの驚きの悲鳴が響き渡る。その声は山を越え、海を越え、はたまた人の格差や見解を越え……鳴り響いたのかもしれない。(2回目)
その頃、荷車の隅では今一つ会話に入りきれなかった女子三人が語りあっていた。
「あれっ?大叔母様ってプリンセスじゃない……」
「しー!それは禁句だよ、マキ。ねえ、マイ……って寝てるし」
「まだお昼前だよ、眠いよ」
最後の一人は明らかに寝言だが、この三人が醸し出す雰囲気はとても和やかで平和だった。
ちなみに、会話の内容は以降、誰にも知られることはなかったとさ。
と、いうことで作者は出来れば再来週辺りから往来の形に戻したいと思います。
それまではちょっとだけ我慢していただきたいです。本当にすみません。
もう少し頑張ります。
あと、今日でオジーは一年を迎えました。
特に思い入れは無いと思いますが、ここまで読んでくださった皆様、誠にありがとうございました。これからもまだまだ未熟ですが、オジー王国をよろしくお願いします。
次回は再来週、6月の14日土曜日、18時までには投稿しておきます。
長文失礼しました。




