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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
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4話 フーガ村の準備(1)

お待たせしました。

よろしくお願いします。

 エアコンのおかげで涼しくなった空気の中で、俺は一体の若いダチョウ、サンドロの背中に乗ってぼんやりと思考に耽っていた。


「今後のことか……」


 そして、俺はバーチャマおばあちゃんに先程言われたことについて考えながら何もない空を見上げていた。


 時はほんの少し前に遡る。

 俺はアミさんが発言する暫しの間ぼんやりと別のことを考えていた。

 日本に帰還する方法についてである。

 俺がやってきた洞窟のことがわかるかもしれない、と意気込んでやってきたオカリナ遺跡の調査であったが、結果は収穫なし。しかも、手掛かりどころか、キングコブラのせいで壊滅した最後の部屋からは俺が見つけた石板しか回収出来なかったのである。

 せめて謎を解く鍵くらいは見つかっても良かったと思うわけだが、世の中そう簡単に上手くいかないということだと思う。

 俺は最終的に打ち砕かれた希望を嘆くようにそんなことを考えていると、バーチャマおばあちゃんは聞いているのか聞いていないのかも分からない俺に何か言葉をかけてきた。


「せっかく異世界に来たんじゃ。帰還方法は分からなかったとはいえ、貴重な体験は出来たじゃろ?どこか別の場所に手掛かりがあるかもしれんし、もっと楽観的に考えたらどうじゃ?」


 その際に満面の笑みを浮かべながら俺を見つめたバーチャマおばあちゃんに悪気はなかったのだろう。

 ただ、俺にとってその笑顔はどこか偽善的で、いつもより無責任に見えた。


「休憩は終わりじゃ。そろそろ出発するぞ」


 沈み込む俺を励ますように人一倍明るい声で全員に呼びかけたバーチャマおばあちゃんは、そそくさと荷車の中に戻るアミさん達を追って荷車の中に戻ると、そのまま静かに扉を閉めた。

 今回は、サンドロと一緒に進むことになった俺は一旦荷車に背を向けると、後方を歩くサンドロの背中に乗った。


 そして現在に至る。

 俺はもう既に見えなくなったオカリナ遺跡の方向を見ながらゆっくりと考える。浮かんでは消える雲のように次々と思考を巡らせるも、最終的には一つの円のように思考が原点に戻ってくる。


「どうやったら元の世界に戻れるんだろう」


 この地点からこの星を一周しても遠いであろう世界に思いを馳せながら俺は吹き付ける風から目を守るようにターバンを巻き直した。

 砂埃が目に入って目頭が痒くなる。

 俺は目の汚れを落とす為に現れた涙をそっと拭うと、そのまま目を閉じてまた思いに耽った。

 別のことを考えよう。何か楽しいことを考えよう。

 しかし、俺の思考は涙のように簡単には消え去ってくれなかった。



 ◇◇◇



 時は同じくしてオジー王国フーガ村、そしてフーガ城内部では数々の女性達が来るべき時に備えあらゆるものを準備してその時を待っていた。

 和気藹々とした雰囲気を漂わせながら村では一人一人がその表情を綻ばせ、各自の仕事を一生懸命全うしている。

 何故なら三日後には村の男衆が皆、オジー王国の首都アトラスから帰ってくるからだ。

 息子や、夫、若い女性の想い人が帰村するこの期間は村にとっても大事な時期であった。

 しかし、そんな嬉しさや喜びが溢れる村の中、フーガ城のとある一室では黒髪を長く伸ばした女性、アントワンヌが別の女性に何やら神妙な眼差しを向けながら声をかけていた。


「それで、例の盗賊団の件はどうなっているの?」


 アントワンヌの漆黒の瞳が真っ直ぐに女性の顔を見つめる。

 女性は目線を合わせるかのように顔をあげると、凛々しい態度を見せながら気品を感じさせる声で報告した。


「まだカホが追跡中とのことです」

「そうか……」


 女性の声にアントワンヌは複雑な表情を浮かべながら小さく唸ると、腕を組みながら目を閉じた。

 その様子を静かに見守る女性。


「ちなみに、盗賊団が向かった先は?」


 やがて、目をもう一度見開いたアントワンヌは女性に確認をとった。

 声色から察するに彼女は既に盗賊団がどこに向かったのか確信していたようだが、一応の社交辞令のようなものであろう。


「北に真っ直ぐに進んでいったようです。大方、王国の国境にでも向かったのでしょう」


 案の定、女性から返ってきた答えはアントワンヌの予想通りであり、眉間の皺を一層深めたアントワンヌは頬杖をつきながら女性に告げた。


「他に、盗賊団のことは?」


 イライラしているのか不機嫌な態度で女性に尋ねるアントワンヌ。

 そんな彼女の不機嫌な視線を物ともせずに受け取った女性は、僅かに俯いて首を横に振りながら否定を示した。

 アントワンヌはその様子を見てもう一度溜息を漏らすと、さっきまでの真剣な眼差しを維持したまま、しかし今度は慈愛を孕んだ雰囲気を醸し出しながら女性を労った。


「はぁ、ありがとう、アキ。慣れないことして大変でしょ?」


 と、同時に長としての口調を大幅に変えながら母親として接するアントワンヌ。アキは、そんな母親の姿に少しだけ苦笑を浮かべると、心配をかけないように返事をした。


「いいえ、大丈夫です。アミが不在の間だけですから」


 アキは礼儀正しくお辞儀をしながらそう告げると、アントワンヌはほっこりとした微笑を浮かべながら白い歯を見せる。


「では、私は他の場所を手伝ってくるので……。失礼しました」


 そのままドアの外に消えていったアキの姿を見送ったアントワンヌは崩していた相好を正すと、誰もいなくなった目の前の空間にポツリと呟いた。


「もう村の男衆が帰ってくる時期か……」


 やがてアントワンヌは猫のような目をトロンと曲げると、頬を僅かに紅潮させながら口元を綻ばせた。


「あの人も帰ってくるな……」


 アントワンヌは、意中の人に思いを馳せながら静かに部屋の窓際まで移動した。

 眼下では数々の女性が熱心に村全体を綺麗にしている。

 そのまま目線を空にまであげたアントワンヌは、眉を微かに湾曲させながら何かを考えはじめた。

 アントワンヌの視線の先には怪しげな雲がおどろおどろしいほどゆったりとした足踏みでこちらに向かっている。

 何か悪い事が起こらなければいいが、と思わずにはいられないアントワンヌであった。

いよいよ男がいなかった理由が解き明かされそうです。


お読みいただきありがとうございました。

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