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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第二章 オジー城編
59/95

3話 違和感の正体

遅くなってすみません。ちょっと長めに書いたら一週間を過ぎていました。

慣れないことはするもんじゃないですね…。


違和感の正体どうぞ。

 かずやが走り去った空間。虚脱感さえ抱かせるその場を見つめているのは、どこかやるせない風に溜息をついたバーチャマだ。

 バーチャマはいそいそと下着を身に纏いながら目を逸らすと、淡々とした声で口を開いた。


「やりすぎじゃぞ」


 呆れの色と同時にどこか苛立ちも感じさせる声色に、告げられた張本人達はシュン、と肩幅を狭めている。


「全く……。一体誰の考えじゃ?【魅了】の力を使いながら遊ぶことを考えたのは。しかも、罰ゲームに男性の欲を掻き立てるようなものまで選びよって……」


 全員の目をしっかり見据えながら話すバーチャマに一層縮こまる女性達であったが、その内の一人が意を決したように一つ息を吐き出すと、バーチャマを真っ直ぐ見つめ返しながら短く語りだした。


「私です、大叔母様」


 さもや意外だったのか、声を発した人物に対し目を見開くバーチャマ。女性は、バーチャマの様子に気まずそうに一度目線を背けると、絞りだすように声を漏らした。


「かずや君の気を紛らわそうと思って、それでーーー」

「ーーー何故じゃ?」


 女性の言葉に重ねるように疑問を繰り出すバーチャマはどうやら全員に尋ねたようで、一人荷車の隅で固まっている女性に目を止めると、バーチャマは同じ質問を繰り返した。


「何故じゃ、サキ?」


 サキと呼ばれた女性は、バーチャマの問いにピクッと肩を震わせると、少しばかり慌てた様子で口を動かした。


「えっと……かずや君、元気ないように見えたし、異世界への帰還方法も結局分からず終いだったし、それから……」


 しどろもどろに話すサキに一度制止をかけたバーチャマは何かを悟ったかのように眉間を抑えながら息を漏らすと、そのまま呆れた様子で続きを語った。


「つまり、この遺跡で何の成果も無くてあの小僧が悲しんでいるように見えたからあやつを元気付けたかったんじゃな?」


 一を聞いて十を知るを具現するバーチャマの鋭い指摘に、もはやしりすぼみな口調で肯定するサキ。

 そんなサキを始めとする女性達を困り顔で見つめながら、バーチャマは先程発言した亜麻色の髪の女性に声をかけた。


「アミ。お前さんは止める側の人間じゃろ?第一、私が身を呈して止めに入らなかったらあの小僧の理性が崩壊しただけではなく、アミ達まで欲求が抑えられなくなっていたぞ。元気付けるのは大いに構わんが、もう少しやり方を考えなさい」


 女性陣の中で一番年長であるアミに短く説教を加えたバーチャマは、反省の面影を見せる他の姉妹を見やりながら一旦声を落ち着かせると、今度は嗜める為にもう一度口を開けた。


「とにかく、今後は元気がなさそうだからとかいって【魅了】の能力を使わないこと。良いな?」


 全員が頷くのを満足気に見たバーチャマは今度はドアが開いたままの荷車の後方に視線を向けると、また悩み事が増えたように眉を顰めながらおでこを抑え、少し不機嫌な口調でポツリと呟いた。


「とりあえず、まずはあの小僧を落ち着かせるとするかの……」


 そう言って、薄暗い車内を何十倍も明るくしたような砂漠を見つめたバーチャマの視界には、裸足のまま熱い砂の上を跳ねるかずやの姿があった。


「少し早いが、休憩を取ることにしよう。それにあやつにも話さなければいけないことがあるしの……」


 元々ゆっくり進行していた荷車が静かに停まる。バーチャマはようやく揺れが収まった車内で立ち上がると、眩しさに目を顰めながらも車内から降りていった。



 ◇◇◇



「あっち〜!!!足が〜、あ、足が〜」


 真夏のプールサイドを歩くと、自然と脚を振り上げる速度があがる感覚といえばいいだろうか?

 今俺の足の裏は熱々の鉄板を無理矢理押し付けられ、それから逃れるように跳ね回っていた。

 足の裏にバネを取り付けたように高く飛び上がりながら、なるべく足の表面積をを縮めて最低限に着地する。

 しかしその度に熱が足の裏を伝っていって、俺はまるでコサックダンスをしている気分を味わっていた。


「あつ、いやぁ、ち!やっぱり裸足で、ちゃ、出るのは、あっ、まずかったかな、あっち〜」


 その後も陸上選手のように足を回転させながらカエルのように跳ね回る。

 去っていく荷車を追いながら、心配そうにこちらを見つめるトゥインカ達に手を振ると、荷車は俺の意志を汲んだように停まり、まるで中に入ってくださいと言わんばかりに扉が開いた。

 直様、中に戻ろうとした俺は、しかしそこにバーチャマおばあちゃんが突っ立っているのを見て進行方向を百八十度回転させると、後方にいたサンドロを目指して走りだした。


「ちょっ、小僧!どこ行くんじゃ?」


 と、尋ねるバーチャマおばあちゃんを無視しながら一目散に駆ける俺。

 もう、バーチャマおばあちゃんのお色気など懲り懲りだった俺はまた熱くなった足で跳ねながらサンドロに近づいていった。


「サンドロ、一回乗せてくれっ……ってあれ?身体が浮いてる…」


 サンドロに声をかけていた俺は何故か分からないが肩をがっしりと捕まえられると、本来飛べるはずのない空中を歩行していた。


「えっ?カナさん?どうして……」

「大叔母様から逃げようなんて駄目だよ、かずや君。どうやら話したいこともあるみたいだしね」


 俺は、犯人の一人である巨大な鳥と、それを操っているカナさんに声をかけると、案の定カナさんは悪気も屈託も無い声で俺にそう告げた。


「えっと、カナさん……分かりましたから意味もなく高度をあげないでください。えっ?カナさんじゃない?えっ?鳥さん?どこまであがるの?」


 徐々に見晴らしが良くなっていくと同時に地面から遠ざかっていく俺。

 鳥、いや鳥様。分かったんで早く降ろしてください。

 俺の言葉に爪を一つ一つ俺の肩から離していく鳥、いや、鳥様。

 俺は悪戯の度が過ぎる鳥、いや、鳥様に高所恐怖症という病を植え付けられると、少しだけ泡を吹いた。



 ◇◇◇



「ハイ。ナンデショウカ、バーチャマオバアサマ」


 俺は錆びた機械音と共に超反省してますよオーラを醸し出しながら土下座でバーチャマおばあちゃんの前に座って、いや、座らされていた。

 なんでも純粋でピュアな乙女心を傷つけた罰らしい。

 どこがピュアで誰が乙女だと罵ってやりたかったが、バーチャマおばあちゃんの傍らに鳥、いや鳥様が鎮座していらっしゃるので、言いかけた言葉を飲み込む。


「それでどういった話でしょうか?」


 今俺たちは砂漠の西端に限りなく近い場所で休憩をとっている。本来の予定では、半日かけてフーガ村までの中間地点に止まる予定だったのだが、力のないバザールのおかげで当初の予定より遅れているらしい。

 トゥインカさんに高速で突かれているバザールを視界の隅に収めながら、油を差したように声の調子を取り戻した俺は何故か真剣な面持ちでこちらを窺うバーチャマに改めて質問した。

 なんでも重要な話らしく、先程のゲームのことなんだとか。

 バーチャマおばあちゃんは俺の言葉におもむろに視線をあげると、俺の他にもアミさんやサキさんの方を見ながら話しだした。


「さっき、遊んでいた時、変な気分にならなかったか?こう、やたらと異性を意識してしまうような」


 普段なら悪戯半分に尋ねるであろう言葉でも、今回は何というか重みが違うように感じる。

 俺は、別に、と言おうと思っていた口を閉じると僅かに考えこむように腕を組んだ。


「そういえば、なんかいつもより心拍数が多かったような……」


 確かに思い当たることはある。

 いつもはあまり意識しないようにしている女性陣に対して、なんか目が離せなかったし、普段ならまずいと分かるようなことでも口を噤んでしまったし、何より俺の分身は過剰に反応していた。

 俺は、最後の方ははぐらかしながらさっきまで感じていた違和感を告げると、バーチャマおばあちゃんはやはりな、と溜息をこぼしながら俺に言った。


「まぁ、それはお前さんのせいでは無くてアミ達の持つ特殊な体質によるものなんじゃ」


 ただ暑かったから、とか俺が男だからとかそういう理由ではなく何か訳があるらしい。

 バーチャマおばあちゃんはアミさん達にチラリと視線を向けると、やけにヒソヒソとした声で俺に説明をはじめた。


「アミ達には【魅了】と呼ばれる特殊な体質というかフェロモンのようなものがあっての、異性の欲を意図的に増やすものなんじゃ。まぁ、普段は漏れ出すことはないんじゃが意識的に外に出すことは出来るからの。お前さんも心当たりはないか?何故か無意識にアミ達の身体の一部に目線が釘付けになったり、急に意識しだしたり」


 バーチャマの推測に思考を巡らせてみる。そういえば、と思い当たることがあった俺はここ数日のことを思い返していた。

 遺跡の中でカナさんと身体が当たったことや何故かサリーさんのうなじに目を向けていたこと、遺跡調査の初日でマキの身体のラインに目を奪われたり、マイの寝顔にドキッとしたり。

 俺は素直にハイ、と頷きながらバーチャマおばあちゃんを見つめ返す。

 だが、それと、遊びのことになんの関連性がと考えて俺は尋ねた。


「えっと、その【魅了】と遊び、何か関係があるんですか?聞いた感じ、あんまり害はなさそうですけど」


 普通、耐性のない男だったらそれぐらい簡単に意識してしまいそうだし、第一アミさん達は美人だ。

 あまり言いたくはないが身体が反応してしまうのは仕方がないだろう。

 俺はそんな感じのことをバーチャマおばあちゃんに告げると、バーチャマおばあちゃんはとんでもない、と目を僅かに見開きながら俺に言った。


「小僧、本気で言っているのか?いわば【魅了】は相手を長時間の間興奮させることが出来るものじゃぞ?ずっと興奮状態が続いてみい、お前さんの身体は麻薬を濫用したのと同じ状態になるのじゃぞ?」


 何か突然突拍子もないことを言い出したバーチャマおばあちゃんに目が点になる。

 えっ、つまり俺は何かヤバイものを受けながら遊んでたってこと?

 俺は背筋に冷たい汗を流しながらバーチャマおばあちゃんに確認をとると、案の定、バーチャマおばあちゃんは首を縦に振った。


「ですが、短時間だけだったので大丈夫です。かずや君の身体に異常はありませんよ。幸い、魔力が皆無のかずや君にはあまり効果がなかったようですし」


 そこにアミさんが口を添える。

 俺は、アミさんの言葉にホッと胸を撫で下ろすと、ふと気になったことを尋ねることにした。


「何でそんなことをしたんですか?」


 まぁ、アミさんのことだから悪気は無かったのだろうが如何せん納得がいかない。

 俺の言葉を既に待っていたのか、アミさんは短拍おかずに申し訳なさそうに答えた。


「今回の遺跡調査、結局、異世界に帰る手掛かりが見つからなかったじゃないですか?それでかずや君の顔が浮かないように見えたんで何かインパクトのあるもので気を紛らわそうとしたんですけど……」


 その後のことはあまり耳に入らなかった。

 もちろん、気を使われていることは嬉しかったし、親切心でしてくれたことだから怒りも覚えなかったけど意図的に背けていた事実に俺はまっすぐ見つめることしか出来なかった。

 しかし、日本への帰還方法か。

 結局、手掛かりも何も見つからなかったな。

 なるほど。違和感の正体はこれだったのか。

 俺は長話をはじめたアミさんの言葉を聞き流しながらぼんやりと考えた。

 しかし、考えても帰還方法の手掛かりを掴むどころか遠ざかっていってしまった気がする。

 ふと、視線を上にあげる。そこにはすっからかんに澄んだ青空が広がっている。しかし、そんな晴れ晴れとした空とは対照的に俺の心には曇りがかかっていた。

作者自身今回は違和感を覚えているので3話は書き直すかもしれません。

その時はご了承ください。

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