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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
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4話 疑問

 ーーーああっ、何故だ、どうしてだ?なんで病院じゃないんだ。


 今俺の心と頭と手と足とその他諸々の俺の身体の全ては疑問符に包まれている。目を開けば先ほどまで見ていた部屋があり、先ほどまでの女性までいてまだ厄介なことになっていた。正直このままではまずいと思った俺はまた気絶しようと試みるが、なぜか気を失おうとする度に軽めの電気のようなものがピリッと身体中を走り回りなかなか思うようにいかない。諦めずに何度も繰り返すが全然上手くいかず、今はただ現実を受け止めることしか出来なかった。


 ひとまず状況を整理しないといけない。このままだと頭がおかしくなりそうだ。とはいえ自分の状況がきちんと理解出来ていない俺は、未だに恐怖心があるにも関わらず、隣に座る女性に声をかけることにした。


「えっと……。どちら様でしょうか?」


 彼女は蜘蛛だ。あの黒くてでっかいやつ。分かっていたものの、今の状況を受け入れたくない俺と何かしなきゃいけないという二つの思いが混ざりあって、結局ありきたりな普通の質問になってしまった。


 女性が黙り込んでいる。少々俯き気味に下を向き肩を小刻みに震わせて何かを堪えているようだ。しばらくその状態が続いた後、女性は静かに顔をあげた。黒くて切れ長の猫のような目でまるで探るような視線をこちらに向けている。真っ直ぐなその目はなんだか俺の心の中の恐怖心まで見透かされそうで思わず視線を背けてしまったが、彼女の美貌が頭の中に残りまるで何かに魅了されて吸い寄せられるようにまた彼女に目を向けてしまった。やがて何かに満足したのか再びあの玉のような声でクスッと笑うと、俺の問いに答えはじめた。


「私の名前はアントワンヌ、アントワンヌ・オジーよ。一応この地域の長を務めています。失礼だけど、あなたは誰?見たことのない顔だけど、どこからきたの?」


 ーーー完全に外国だ、ここ。さっきの蜘蛛はきっと……そう、メイクだメイク、特殊メイク。俺は多分なんらかの理由で太平洋を超えて外国まで来たんだ。でもあれっ?なんで日本語なんだ?てかここ和室だよな……。ああっもう意味わかんねぇ!早く質問に答えてここがどこか聞いて帰ろう!そうしよう。


 一瞬理解が出来ず頭がこんがらがってしまった俺はとりあえず質問に答えることにした。そしてここがどこか聞いた。後で後悔することも知らずに。


「僕の名前は竹田かずや。あっそっか、外国だからカズヤ・タケダです。一応日本から来ました。あの、ここは一体どこなんでしょうか?」


 まるで知らないものを初めて見た時のような驚き方をするアントワンヌさん。目を大きく開いてこちらを見る様は、すごく綺麗なはずなのにどこか間の抜けた印象を受ける。少し困ったようにはにかむと子どもに絵本を読み聞かせるような柔らかな口調で話しはじめた。


「ここはフーガ村よ。オジー王国の西側にあってこの地域の中心部に当たるわ」


 ーーー聞いたことがない名前だな……。


 流石に地理に疎い俺でもそんな国があるかどうかぐらい分かる。まず、日本語を話しているのに日本じゃないところから驚くべきなんだろうけど、はっきり言ってどこから驚けばいいのか分からない。しばらくいろいろと頭の中で考えていたが、埒があかないと感じた俺はとりあえず大雑把にかんがえることにした。そう、まずは知ることが大事だ。オジーだかなんだか知らないがとりあえずは帰る方法を考えよう。俺が黙り込んで考えはじめると見兼ねたアントワンヌさんが今度は探りを入れるかのように聞きはじめた。


「なぜ貴方は砂漠で倒れていたの?」


 それは簡単な質問だった。しかし声がとてつもなく冷たい。簡単なのはいいのだが、今回はどの言葉にも殺気に近いものが込められている。どうやら完全に俺を怪しいやつだとおもっているらしい。先ほどまでと態度も声も雰囲気も違っていて、直感的に危険を感じた俺は正直に何もかも正確に伝えることにした。


「僕は先輩と友達の六人で海岸の近場で人気のパワースポットの洞窟かどこかで二人一組で肝試しをしていたんです。そしたら友達が急に気分が悪くなって、そのパワースポットに一人で入ることになりました。日も落ちかけの遅い時間だったので急いでそのパワースポットから出ると、出たところはなぜか砂漠で、しかもパワースポットに戻ろうとしてもあったはずの出入り口はなくなっていました。履いていた海パンもサンダルもなくなってどうすればいいかわからなかったのでとりあえず歩きました。そして暑さに負けて倒れたと思います」


 最後の方は自信が無かったが、覚えていることは全て話した。なぜか垂れていた額の汗を拭い今度は俺がアントワンヌさんの顔を正面から覗き込む。しかしまだ不服そうにこちらを見ていて、何を間違えたのか思考を巡らせてみるがどうしてそんな顔をしているのか俺には分からなかった。


「ではどうやって結界を通った?あの結界には魔力を感知する能力がついているはずよ」


 結界………魔力。日常会話ではまず聞かない言葉を二つ聞いた俺は自分の耳を疑うことしか出来なかった。悪い予感がして俺は恐る恐るアントワンヌさんに聞いた。


「結界って何のことですか?」


 俺の言葉を聞いた途端、アントワンヌさんは顔を真っ赤に染め、鬼のような形相で声を荒げた。


「しらばっくれるな‼ どうやってあの結界を破ったか聞いているのだ‼」


 先ほどまでの丁寧な言葉遣いではない、拷問する時に使う人を罵るような声。もう泣きそうだったが、寸前で堪え弁解する為に口を開いた。


「知りません。………そもそも結界ってなんですか?」


 叩かれる。その時、バタン、と大きな音がしたかと思うとふすまが開いて若い女性が息も絶え絶えに口を開いた。








「お母様、ハァ………ハァ。侵入者を………捕まえました」

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