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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
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48話 キングコブラ(1)

いよいよキングコブラとご対面ですね。

いやぁ、長かった……。すみません。


お読みいただき本当にありがとうございます。

 壁が振動し天井からは砂埃が降り落ちる。顔の輪郭が辛うじて見える程度の明るさの部屋で、俺は立ったままでいられるようバランスをとっていた。

 壁に背中を押し付けるようにして安定感を保つ。その間に俺はこの部屋の様子を見渡した。

 確かに部屋の造りは前の部屋とそっくりだったが、幾分広めに感じる。恐らくさっきの部屋は蛇がいたせいで無意識に窮屈に感じていたのだろう。

 それに今は立ち込めるような毒の臭いや鉄臭い血の匂いはしない。おかげで俺はほんの少しだけだが言いようのない安心感を抱いていた。もちろん、さっきよりはの話だが。

 けれど、それは俺だけの話で他のメンバーは違う。段々と短い間隔で響いてくる無声音や叫び声にアミさん達は危機感を覚えはじめていた。

 アミさんとカナさんはそれぞれナイフなどの武器を確認し、サリーさんとサキさんに至っては互いの手をがっしり掴みあいながらも真剣な表情でもう一つ壁に出来た穴の中を覗き込んでいる。

 だが俺は得体の知れない何者かに近づいているというのに何故か緊張感というか現実味が湧かなかった。確かにさっきまで蛇に対して畏縮していたにも関わらず、今ではまるで喉元を過ぎた熱さのようにケロっと忘れている。

 多分、もうすぐ帰れるという甘い期待感が現時点で危機感に勝っているからだ。


「イヤー!!!」


 しかし、そんな期待感は穴から聞こえてきた人の叫び声に紛れて霞んでいってしまった。アミさん達も驚いたように顔を穴に向けている。


「あれはタミの声よ、間違いないわ」


 すると、サリーさんが切羽詰まったように声を荒げた。他のメンバーも互いに確認するように頷きあっている。


「私達も行くわよ!!!」


 アミさんがカナさん達に向かってそう告げる。すると全員が順に穴の中に突っ込んでいった。


「かずや君も早く行きましょう!」


 最後になったアミさんが俺に向かって声をかけながら穴の中に潜っていく。

 俺はアミさんの後に続いて穴の中に一歩踏み出していった。



 ◇◇◇



 途轍もない威圧感を感じる。部屋に入る前からもそうだったけど、まるでここは別次元だと錯覚するくらいこの部屋に漂う雰囲気は普通のとは明らかにかけ離れていた。


 話は少し前に遡る。

 私達は大叔母様を先頭に真ん中の部屋に続く廊下を歩いていた。罠があるかもと警戒しながら進んでいたものの、私達は結局何の障害も無しに奥の扉に辿り着いた。

 流石の大叔母様も何かがおかしいと感じていたのか、大叔母様はドアを強引に蹴るとすぐにしゃがむように指示を出した。そしてその指示は正解だった。大叔母様や私達が歩いていたところから弓や槍が何本も現れて、もししゃがんでかわしていなかったら全員息を引き取っていたと思う。


「恐らくこれは大軍で押し寄せられた時の最後の罠じゃよ。その証拠にほれ、上からガスが漏れているじゃろ?流石に今となってはその機能は劣っておるようじゃが、これだと迂闊に前に進めんし、後ろにも戻れん。さて、ガスを大量に吸い込む前に先に行くかの」


 そう言って大叔母様がドアを開けると全員が急ぎ足で中に入っていった。

 ドアの向こう側はまだ廊下が続いていて、しかも今回は下に下る為の緩やかなスロープになっている。

 私達はその中をまた慎重に歩いていった。途中、穴が空く場所があったり壁が迫ってくる場所があったけど、大叔母様の類稀な推察力のおかげで何とか乗り越え、遂に最後と思われる扉に辿り着いた。

 大叔母様は胸を踊らせ、マキは安心したように息を整え、マイは相も変わらず立ったまま寝息をたてている。

 私は心を落ち着ける為に大きく深呼吸をすると、分厚そうに佇むドアを見つめた。吸い込んだ空気は少しだけ湿っていた。


「では開けるぞ」


 そして大叔母様の声と共にドアが開け放たれた。確かその時だった。雰囲気がガラッと変わったのは。恐る恐る足を踏み入れる大叔母様に続き私も進む。


「えっ?これって、尻尾?」


 そう、そこにあったのはドアの枠に挟まりきらないほどの太い何か。尻尾と判断したのは、広い部屋の中央に牙を剥き出しにした巨大な蛇が体を大きく揺らして暴れていたからだ。


「あれは、正しくキングコブラじゃ。じゃが、あんな大きなもんは見たことが無い」


 確かにこの蛇、キングコブラの大きさは異常だった。見上げるほど高い部屋が一瞬で小さな犬小屋になったかのように感じさせる大きさ。そこから吐き出される迫力はこれまで見たどの動物とも比喩にならないくらい凄まじく、私の膝も知らないうちにガクガクと笑い出した。


 そうして今に至る。もはや別次元の迫力に足元がすくみ、体が震え出した。こんな化け物を退治するイメージがこれっぽっちも湧かない。

 もう逃げ出したかった。

 でもその時、キングコブラがこちらに首を向けたかと思うと、爛々とした目を輝かせながら睨んできた。

 無意識に後ろに動かしていた足がまるで意思を持ったかのように止まる。本能的にもう動いてはいけない、という信号を伝えながら。

 隣を横目でチラリと見れば戦い慣れているはずのマイもマキも静止画のように止まっていた。大叔母様でさえも額から冷たい汗を流しながら指一つ動かさないように細心の注意を払っている。

 しかし、汗だけは今の状況などお構いなしに大叔母様の頬を伝い、やがて顎に到達したかと思うと、ポタっと地面に滴り落ちた。ずっと続いていた無声音がピタリと止まる。

 そして、一瞬だけキングコブラが舌を出し入れしたかと思うと巨体だとは思えない俊敏な動きで尾を叩きつけてきた。

 逃げたい、でもそんな自分の意志とは裏腹に足は全く動く素振りを見せなかった。徐々に迫ってくるキングコブラ。私はあまりの恐ろしさに思わずしゃがみ込むと恐怖心のあまり悲鳴をあげてしまった。

 だけど、思っていた衝撃は襲ってこない。それどころか蛇の攻撃は私の頭上を通過し、壁に思いっきりぶち当たってはずれた。


 ーーーチャンスだ。


 私はこのチャンスを逃すまいと踵を返し、すぐにドアを開けようとした。だけど、ドアは開くどころか何かに引っかかっているようで全く開かなかった。


「ううっ……」


 すると、私の隣の方向から何かに押し潰されるような呻き声が聞こえてきた。パッと顔を向ける。そこには蛇の尻尾の下敷きになった大叔母様とマイとマキの姿が。

 私は目の前の光景が信じられなかった。一瞬の内に行われたことに何故か上手く反応出来ない。

 私はもう何も出来ない、そう思っているとキングコブラは今度は私に狙いを定めて尻尾を振り落としてきた。


「イヤー!!!」


 訳もわからず悲鳴をあげる。もう私には叫ぶことしか出来なかった。

 これから潰されて終わる。私はそう確信していた。

 その時、部屋の入口の反対の方向から何か鋭いものが飛んできたかと思うと、そのまま蛇のとぐろの中央部分に当たり、突き刺さった。

 グギャー、とキングコブラが呻く。


「大丈夫?タミ」


 声がした方を向くと、そこにはナイフを片手に掲げた、カナお姉ちゃんの姿があった。

 突然現れた救世主に私は安心すると、そのまま倒れたマキ達のところに駆け寄っていった。


「シャー!!!」


 痛みに身体を揺らすキングコブラ。地面も床も今の私達のように怯え、震えていた。

明日は夕方に投稿しておきます。

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