40話 作戦会議(1)
ゴクッ、ゴクッと水が口内を滑り落ちていき、渇いた喉を潤していく。
「プハ~~~。生き返った…。ありがとう、タミ」
タミに礼を言いながらコップ一杯分の水を一気に飲み干したかずやは気持ち良さそうに大きく息を吐きだした。同時に、身体中の水分がドバーッと溢れ出てくる。
「もう一杯くれ、タミ」
かずやの要求に溜息を吐いたタミ。もうすでに八杯目となるであろうにまだまだ飲む姿勢を崩さないかずやにタミは呆れて返す言葉も見つからず、もはや機械的にコップに水を注いでいた。
「なんで私が…。はぁー……」
タミの口からもう何度目か分からないぐらいの溜息が漏れる。
そもそもこんなことになったのにはくだらないとしか言いようのない理由があった。
今からほんの少し前、バザール達の首が完全に解けた後、幸運なことにタミの手によって助けられたかずやは喉の渇きで飢えていた。
見兼ねたタミは急いでかずやに飲み物を渡すと、彼はそれを一瞬にして飲み終えもう一杯、と催促してきたのである。穴の中に放置されて約一時間、喉が渇くのも仕方ないなぁ、と思いながらそんなに飲むはずはないと高を括っていたタミは次々と空になっていくコップに呆然とし、驚いていた。
それを幾度となく繰り返し現在に到る。
かずやは喉仏を上下に動かしながら八杯目の水を飲み干すと、水腹でタプンタプンになった腹の辺りをさすり満足気に息を漏らした。
「にしても一時間放置は無いよな、一時間は」
息と同時に愚痴を漏らしたかずやはコップをタミに返しながらゆっくりと立ち上がった。そして同じように座っていたタミを見下ろすと、かずやは他の人達が何をしているのか尋ねた。
タミはコップの水気を切りながらかずやを見上げると、そのまま立ち上がり無言でついてくるよう促した。
タミの後を追って荷車の裏側に周るかずや。そこには何かしらの料理の準備をしている女性陣と、バーチャマを中心に話し合っている増援組が何やら深刻な顔を浮かべていた。
◇◇◇
「あれっ?アミさん達だ⁈」
俺は話し合いをしているグループの中から見知った顔を見つけて思わず声を漏らしていた。バーチャマおばあちゃんを中心に集まっているこの女性陣はどうやら先ほど着いたらしく、真剣な話をしながらもリラックスした体制で座っている。そんな中一人の女性が髪を妖美に靡かせながらこちらに振り向くとキリッとした表情を無邪気な子供のようにくしゃっと曲げながら笑みを浮かべた。
「お久しぶりです、かずやさん。元気でしたか?」
俺はその純粋無垢な笑顔にしばし見惚れながら首を振って何事も無かったように取り繕うと、そのままぎこちなく会釈した。そんな俺の姿に気づいたのか他の女性達も一旦会話をやめると声をかけてきた。
「あっ、どうもお久しぶりです」
サリーさん、アミさん、サキさんにカナさんといずれも面識がある彼女達に無難に返事をしていると、バーチャマおばあちゃんが少し不機嫌そうに俺とタミに座るよう言ってきた。まだブツブツと何か言っていることからさっきのことをまだ根に持っているのは確かだろう。ハハ、と乾いた笑い声をあげながら言われたとおり大人しく座ると、アミさんが代表して小一時間ほど何を話していたか説明してくれた。
「まぁ、まずはこれを見てください」
説明を始める前に砂の上に描かれた見取り図のようなものを見せられる。随分と簡略化されているが見るからにこれはオカリナ遺跡内部の地図だろう。俺が地面に描かれた地図を認識したことを確認すると、アミさんはゆっくりと説明をしはじめた。
「ここが遺跡の入口でその隣に描かれた五つの四角は各部屋の入口だと思ってください」
俺が地図を指でなぞりながらそう言うアミさんを見て頷くとアミさんはすぐに言葉を続けた。
「そしてこの五つの線が通路です。この通路の先にはいずれも部屋があってさっきまでかずや君がいたのはこの遺跡の入口に一番近い通路から続く部屋です。元は武器や装備品の保管庫のように使われていたのは大叔母様に聞きましたよね⁈」
アミさんは俺が話についてきているか聞いてきた。もちろんここまでは知っている話なので首を縦に振りながら肯定を示す。アミさんは俺の様子を見て安心したのかまた地図に目線を落として話しだした。
「ここからが問題なんです。大叔母様によると、今日運良く入れたこの部屋は別として他の通路は毎日通れる場所が変わるためか全部廻れる保証は無いし、かといってここにずっと滞在する訳にもいきません。それに蛇の問題もありますし……」
ずっとアナウンサーのようにハキハキと説明していたアミさんの顔色が冴えないものに変わる。俺はその表情から事態は深刻なものと勝手に判断すると、そのまま続きを促した。
「ですからまぁ、今日のところはとりあえずこの部屋の調査だけして、残りは明日以降調べる、というところまで話し合いました」
いろいろ省かれたようだがとりあえず何を話していたか分かった俺は今後どうするのか聞いてみることにした。誰がまた遺跡内に入るのか、とか明日はどうなるのか、とか。
すると、さっきまで影の様に静かに佇んでいたバーチャマおばあちゃんが俺の言葉を制してこの場にいる全員に呼びかけた。
「続きはご飯の後にするかのぉ。腹が減っては戦は出来ぬと言うしの、ホホホ」
バーチャマおばあちゃんの言葉に腹の虫が鳴き始める俺。俺は気まずくなったので頭をかきながら立ち上がると、そのまま食事を作っているメンバーを手伝いにいった。




