表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
40/95

39話 立て直し

「な、何だこれ…。明らかに普通の蛇のサイズじゃない……」


 かずやは部屋の角にある巨大な蛇の抜け殻に目を奪われ、驚愕と恐怖で顔が引きつっていた。体長二、三メートルはあるのではないかと疑われるその抜け殻はかずやを畏縮させるには充分であり、彼は思わず一歩後ろに下がってしまった。

 しかし、そんなかずやとは裏腹に巨大蛇の抜け殻に近づく者がいた。偉大なる魔法結界学者であると同時に考古学者でもあるバーチャマである。

 バーチャマは怯む様子を見せずに抜け殻まで近寄ると、そのままそれを手に持って観察しはじめた。長さ、太さ、大きさなどを大まかに測って抜け殻の特徴を調べていくと、バーチャマは僅かに顔を曇らせながら誰ともなしにポツリと呟いた。


「キングコブラ………」


 まるで信じられないとでも言うかのように呟かれたその生き物の名前は運が良かったのか悪かったのか先ほどまでバーチャマの隣にいたマキの耳に入っていった。マキがその名前に首を傾げていると、マキの隣に立っていたカリンが重々しく口を開きながら静かに語りだした。


「キングコブラは本来、砂漠の中央付近のごく限られた場所にしかいない存在よ…。少なくともこんな砂漠の端の遺跡なんかに出るものじゃないわ」


 カリンがおどろおどろとキングコブラについて説明すると、バーチャマが全員の方を向き、それに付け加えるように口を開いた。


「そうじゃ。普通のキングコブラは基本的にはこの辺りには出てこんよ。何せ餌が少ないし小さいからの。じゃが、このキングコブラはおかしい。これでも充分な長さじゃがこの抜け殻の乾燥具合から相当前に脱皮したものだと思うのじゃが……」


 バーチャマがキングコブラの抜け殻を持って頭から尻尾まで観察しながらそう言うと、マキが何かに気づいたように目を見開き、気づいた事実に少し青ざめた顔で話しだした。


「つまりキングコブラはこれよりも大きいってこと⁈」


 話している最中に事の重大さに気づいたのかさっきより顔をどんどん青くしていくマキ。気が動転したのか知らず知らずの内に語尾が裏返っている。

 バーチャマはマキの言葉に力強く頷きながら全員を見渡すと、顔の表情を引き締めてゆっくりと言い渡した。


「このまま何の計画も無しに調査するのは危険じゃ。一旦上に戻って計画を練り直すぞ」


 力強いバーチャマの指示にハイと頷く調査班一同。その中の一人、カリンは気づいていた。バーチャマの手が恐怖に震えていたことに。



 ◇◇◇



「うわ、眩しい‼‼‼」


 遺跡の内部にいたからか、照りつける日差しが十倍眩しく感じる。俺たちは今、遺跡の中から出るために一人ずつ順番に三メートルの壁を登っていた。

 まずは一番身軽で小柄なマキ。マキは背中に背負っていたカバンをカリンさんに預けると、そのまま壁の窪みを見つけながら右に左にと移動して登りはじめた。慎重にゆっくりと登るマキを見守ろうと視線を上に上げると、なんとそこには綺麗なラインを描くマキの後ろ姿が。マキが動く度に形のいい曲線が突き出たり横に動いたり……。

 やはり男の性には勝てなかったのか頑張って見ないようにしても視線が移ってしまう。しかし、残念ながら意地悪な日差しのせいで俺は絶好な景色を堪能出来なかった。そうこうしている内にマキは壁を登り終え、梯子を持ってくると言って荷車に戻っていってしまった。悔しさと日の光のせいで目から汗を流しはじめた俺は目を覆ったまま下を向くと、何を勘違いしたのか、バーチャマおばあちゃんが目をキラキラと輝かせながら俺を見て感嘆の言葉を漏らした。


「お前さんはなかなかピュアじゃのぉ、目の前にあんな綺麗なお尻があったのに見ないように目を極力逸らして……。男は性欲だけじゃと思っておったが少しだけ見直したわい。なんなら私のをちょっと……」


 いや、待て、俺が見てたの知ってたんかい、と思う前に何故か背筋が凍るような身の危険を感じたので俺はすぐさま渾身の力で飛び跳ねると正しいフォームでジャンピング土下座を繰り出した。


「すみません、丁重にお断りさせていただきます」


 俺の心からの謝罪にしばらくの間、場に沈黙が訪れる。やがてバーチャマおばあちゃんは分かった、と一言告げると地面に頭がつくほど深く土下座する俺を踏み台にして上に上がっていった。バーチャマおばあちゃんが登り終えたのを確認した後、俺は背中についた砂の足跡を払おうと立ち上がると、上から梯子が落ちてきた。カリンさん、タミの順に登っていきようやく俺の番が来たかと思うと、どうしてか梯子がスルスルと上に戻っていった。

 俺が訳が分からず狼狽えていると、穴の上からバーチャマおばあちゃんがひょこっと顔を出し、舌を出しながら意地悪な顔で俺に話しかけてきた。


「乙女心を粗末に扱う奴に梯子は無しじゃ。だから自力で這い上がってくるんじゃな。ふん、見直して損したわい……」


 ブツブツと文句を言いながらその場を去っていくバーチャマおばあちゃんに心の中で溜息を吐きながら俺はさっきのマキのようにロッククライムの如く壁をよじ登りはじめた。しかし、マキのように身軽では無く、背中の荷物のせいでマキの体重よりも遥かに重い俺は壁の窪みに手をかける度に砂がボロボロと崩れ落ちて全くと言っていいほど登れなかった。


「あのー……。皆さん、僕にも梯子を貸してください……」


 俺がそう呼びかけても返事がない。結局、俺の言葉は寂しい虚空の中へ消えていった。



 ◇◇◇



「かずや君をあのままにしてもいいのでしょうか?」


 一方地上ではカリンが穴の中で悪戦苦闘しているかずやを心配し、バーチャマに声をかけていた。


「放っておけ、あの不届き者が……」


 まるで悪態をつくかのようにブツブツと文句を言うバーチャマはそのまま手でカリンを遮った。バーチャマの態度に若干苦笑気味に彼女を見るカリン。すると、バーチャマは険しかった表情をコロリと変えて遠くを見つめながらボソリと呟いた。


「これぐらいの壁でつまづいていたらあの小僧もこの先やっていけんよ…」


 バーチャマの意味深に聞こえる言い草に首を傾げるカリン。そして遺跡に背を向けるバーチャマ。

 すると、荷車の方へ振り返ったバーチャマから呆れたような溜息がカリンの耳に入っていった。考えるのをやめ、振り向いたカリンの視界の先には三体のダチョウのこんがらがった首を解こうと試行錯誤するマイ達の姿が。

 思わず渋い顔でお互いを見つめあったバーチャマとカリンはクスリと小さく笑うと、天然の知恵の輪をはずすべくマイ達のもとへ駆け出して行った。























「あ、暑い…。喉渇いた……」


 後にかずやは穴の中でピクピクと痙攣しながら死んだカエルのようにのびた姿で発見されましたとさ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ