35話 オカリナ遺跡前
かずやがダチョウ達と戯れている間、荷車の中ではバーチャマがせっせと遺跡に入る準備をしていた。
「なんだか外が騒がしいのぉ、もう少し静かに出来ないのかねぇ」
バーチャマは先ほど言いたかった台詞を取られた悔しさからか鬱憤を晴らすようにブツブツと文句を言いながら手を動かしていた。
記録用の紙とペン、オカリナ遺跡の過去の資料、魔法結界の術式が記された本などをあらかじめ持って来ておいたカバンの中に入れると、蝋燭とそれを入れるランプ、縄など調査に必要な道具を取り出していった。
時々唇を動かしながら持ち物を確認するバーチャマは大分この作業に慣れているようだった。
バーチャマが一通りの荷物を取り出すと、荷車の入口からカリンが顔を出しバーチャマに声をかけた。
「大叔母様、何かお手伝い出来ることはありますか?」
カリンの姿に気づいた様子のバーチャマは少し腰を落ち着かせると床に転がっている荷物を指差しながらカリンにこう返した。
「じゃあ、早速で悪いけどここに置いてある荷物を分けてカバンの中に入れてくれないかい?」
見ると紐やら薬草やらがごちゃ混ぜになって並べられている。
カリンは食糧は種類ごとに、薬は薬品ごとに手当たり次第分けていくと、ものの一、二分で整理が終わってしまった。
バーチャマはカリンの手際の良さに感心しながら全ての荷物が整うところを見届けると、そのまま窓から顔を出した。
「準備が整ったぞ。荷物を分けるからこっちまで来るんじゃ」
嗄れた声を張り上げながら全員に呼びかけると、マイやマキ達を始め、ぞろぞろと全員が荷車の中、もしくはその周りを囲むように集まっていった。
「まずタミは食料の入ったこのカバンを。一応はぐれた時の為に食べ物は他のカバンにもいれてあるぞ」
そう言ってタミに手渡すバーチャマは次のカバンを手にとると、何故か近くにいたマキに渡した。
「中にはランプとか縄とか調査に必要な物が色々入ってるから気をつけるんじゃよ」
バーチャマの言葉にハッとしたマキは片手で受け取っていたカバンをすぐさま両手で支え慎重に扱った。
そして、バーチャマは残り一つとなったカバンをかずやに渡すと、全員を視野に入れながらこれから行われる調査について大まかに指示を出した。
「これから私達がどう動くか伝えるから皆良く聞くんじゃよ。まず遺跡に入るのは私と、補佐のカリン、食料係のタミ、調査用具のマキ、そしてこの坊主じゃ」
名前を一人一人呼ぶと同時に視線も動かすバーチャマ。最後にズシリという音が聞こえてきそうな重いカバンを引きずるかのように持つかずやに目を向けたバーチャマは、今度は呼ばれなかった者達の方を向いて口を開いた。
「カエデはここに残って荷車の管理と、緊急時の連絡係、マイはダチョウ達と一緒に魔物がよって来ないように辺りを警戒しておきなさい。今日は着いたばかりであまり長くは調べないじゃろうから、その間はしっかりと頑張るんじゃぞ」
寝ぼけた目をこすって自身の頬を叩きながら頷くマイの姿を確認すると、バーチャマは自分用のカバンを背負い、荷車から降りて遺跡の入口に向かった。
その様子を見届けながら小さく意気込みを入れるかずや。そして、そのまま手で持っていたカバンを背負う。背中にかかる負担を振り払うかのように息を整えたかずやは高鳴る期待感を胸に最初の一歩を踏み出した。
しかし残念ながらかずやが正に一歩目を踏み出すその瞬間、緊張のし過ぎで足をあげすぎたかずやは背中の重みのせいで後ろに倒れてしまった。
◇◇◇
「イテテテテ……」
俺は尻餅をついた時に運悪く当たった尾骶骨をさすりながらゆっくりと起き上がっていた。幸いにも下が砂だったおかげで衝撃は少なかったが、受け身も取らずに不意に後ろから倒れたせいで背負っていたカバンが背中に思いっきり当たって痛かった。
「マジ、何入ってんだこのカバン?」
起き上がった際に小さく悪態をついた俺は今度は背中から倒れないように慎重に歩き出す。
周りから聞こえる笑い声を意図的に無視しながら俺は……
「やーい、転んでやんの、アハハ」
笑い声を意図的に無視しながら俺は……
「何か痛そうだな。このバザール様が治してあげようか?えっ?痛いのはお尻?転んだから?」
意図的に無視しながら俺は……
「うぇーん、痛いよママぁ〜ん」
意図的に無視しながら……
「痛いの痛いの飛んでけ〜。ついでにお前も飛んでけ〜」
無視しながら……
「泣くなよ、かずちゃん。もーガキなんだから」
……。
「フーグ」
歩こうとした俺は急いで靴を脱ぐとバザールの顔面目掛けて靴を蹴り飛ばした。更に俺は驚いて怯むバザールに追い打ちをかけるように背中のカバンを降ろすと、ハンマー投げの要領で思いっきり投げ飛ばす。
流石にさっきの追いかけっこで自分の行動が子供っぽいことに気づいた俺はすぐに自重しようと決めていたがどうやら無理だったようだ。
見事にクリティカルヒットしたカバンを見た俺は思わずガッツポーズを取ると、その様子を見ていたバーチャマおばあちゃんにカバンを投げるなと窘められた。
その言葉にシュンとなる俺。何故だか分からないがバザールといると子供っぽくなってしまう。
先ほどの期待感はどこへいったのか俺は急いでカバンを取り戻すと、しょげたまま遺跡の入口へ向かうのだった。
流石かずや。ヘタレ⁈、でいいのかな…。
何故フグなのかは知りません。




