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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
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34話 ダチョウと戯れ

「よっしゃあーーー!!!!」


 俺は今猛烈に感動している。感激のあまり俺は拳を上に押し上げ、思いっきり雄叫びをあげた。

 短いようで長かったここまでの道のり。数々の出会い。

 俺はそんな短かった過去を振り返りながら、ここまで来るのに夢中過ぎて忘れていた本当の目的を思い出した。

 もしかしたら日本に帰れるかもしれない。たとえ帰れなくても何かしらの手がかりが見つかるかもしれない。

 そんな想いに包まれた状態ではオカリナ遺跡の入口に辿り着いた喜びをただ手を叩くだけで済ませるなんて俺には無理に等しかった。


「………………」


 心からの雄叫びが外に漏れていたのか、気がつくと皆がどこか懐疑的な目線で俺を見ていた。別に悪いことをした訳では無かったが、今全員の視線が俺に一丸となって浴びせられていることに加え、心の雄叫びが全て聞かれていたことに恥ずかしくなった俺は顔を真っ赤に染めあげてしまった。

 またやっちまった………、と気づいた時にはもう遅い。俺が大勢の場で初めてした自己紹介の時のように失態を侵した俺はあの時と同じように笑いのツボにはまった彼女達を止めることは出来なかった。


「アハハハハ、かずや君またやらかしてる」


 俺の今の顔のように真っ赤な太陽に照らされてオレンジ色に輝く髪を揺らしながらカエデさんはケラケラと笑った。そのお隣のハーブ二号も腹を抱えながら地面を転がっている。俺はハーブ二号に対して憶えていた王子様の白い馬のイメージを静かに捨てると、そのまま場を紛らわすようにムブラナを見た。


「今のどこが面白かったの?」


 ムブラナが不思議そうに首を傾げていると、さっきまで黙って震えていたバザールがニヤリと笑いながらこう答えた。


「何、真っ赤になった時のかずやの顔を見て笑ってるのさ。ほら、普段はそこまで悪くない顔してるのに今はピチピチの真鯛みたいだろ?そのギャップに皆笑ってるんだぜ」


 最後の部分は皆に確認するように話すバザールにムブラナはしっかりと頷きながら俺の顔を見た。


「何だかフグみたいな顔してるね」


 その時の俺はどんな表情を浮かべていたか知らない。だが、俺は彼らに近づくと少し八つ当たり気味にバザール達の羽を触り小さく囁いた。


「誰がフグだって?おめーら親子揃って俺の晩飯にしたろか?」


 二体は同時にヒィッと短く悲鳴をあげると、一目散に逃げ出した。待てコラっとバザール達を追いかけていると、二体共突然明らかに人間離れした速さで走り出した。まぁ、人間ではないから当たり前なのだが。流石の俺でも追いつくのは無理だった為バザール達の動きを予測して事前に動くようにした。

 後ろから親子丼、親子丼と可愛げのないエールが聞こえてきたが誰が言ったのかは想像しなくても分かるだろう。

 とりあえずまずは比較的予測可能なムブラナから捕まえることにした。

 ムブラナはダチョウと言ってもまだ子どもだ。だから子どもが帰る場所、すなわち母であるトゥインカさんのところで待ち伏せしていれば……ほら、来た。

 俺がトゥインカさんの後ろに隠れてうずくまっているとトゥインカさんの脚の間から何故かバザールが現れ、そのまま俺の頭を突ついた。

 へへへ、とどす黒い笑みを浮かべて笑いながら俺を見降ろすバザール。


「かずや兄ちゃん、丸見えだよ」


 すると、今度はトゥインカさんの陰に隠れて顔だけだしたムブラナが無邪気にそう言うと、また楽しそうに走り出した。

 そう言われて周りを見るとどうやら隠せていたのは俺の頭だけで、文字通り頭隠して尻隠さず状態になっていたらしい。

 仕方がないのでまた追いかけようと振り返ると、トゥインカさんの方から滲むような声が聞こえてきた。

 急いで振り向くとトゥインカさんの脚の間に挟まったバザールの頭が見える。いや、あれは挟まったというよりは脚で首を締めているといった状態に近い。

 バザールがギブアップの印に足をバタバタ動かしていると、トゥインカさんが僅かに嘴を開きながらクェッと鳴いた。


「こんな子どもっぽいことしてただで済むと思ってるの、ア・ナ・タ?」


 そのまま脚を交差させてもっと締め付けていくトゥインカさんにバザールは息を吸うのもやっとの状態で顔色もいつにも増して真っ白だった。


「ご、ゴメン、母ちゃ……ゆる、じで」


 バザールの言葉にようやく許す気になったのかトゥインカさんはバザールの頭を解放すると、そのままムブラナを呼びつけて言った。


「ムブラナ、父ちゃんみたいになりたくなかったら早く一人前の大人になるのよ」


 残念ながら一部始終を見ていなかったムブラナは何故自分の父親がプルプルと情けない姿で震えているのか分からなかったがとりあえずコクン、と頷くとバザールの下へ駆け寄っていった。


「かずやさん、ちょっと…」


 ムブラナの背中を目で追っていると、突然トゥインカさんが俺のことを呼んだ。バーチャマおばあちゃんのエアコンのおかげで暑くないのに、何故か俺の背中からは大量の汗が流れている。俺は覚悟を決めてトゥインカさんの前に立つと、トゥインカさんはバザールとムブラナについて謝ってきた。トゥインカさんの言葉が俺の予想していたものと違っていた為にしばらく固まっていると、トゥインカさんは頭を俺の耳元に近づけながらそっと囁いた。


「ムブラナと遊んでくださってありがとうございました。バザールのことはこちらで対処するので大丈夫ですよ。彼案外Mだから」


 トゥインカさんの言葉に思わずたじろぐ俺。しかし、バザールの方をよく見ると苦しそうだった表情がまるで紐が解けたように綻んでいる。

 イマイチ理解出来なかったが、トゥインカさんの言葉を信じることにした俺はその場を離れることにした。

 俺も子供っぽかったし。また俺の黒歴史に何か刻まれそうだ。

 俺がトゥインカさん達を放っておいてカエデさん達のところへ戻ると、あからさまに苦い笑みを浮かべながらタミがこう言った。


「かずや君ってあんなとこあるんだね。ちょっと意外」


 ちょっとどころかかなりじゃね?とは決して言えない俺だった。

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