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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
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32話 ムブラナの食事

 砂、砂、砂。一面中どの方角を向いても黄土色の砂しか見当たらない。

 照りつける日差しと喉を焼くような乾燥しきった空気の中、とある一行がこの先にあるオカリナ遺跡に向かって歩みを進めていた。


「ねぇ、母ちゃん、遺跡ってどこ?まだ着かないの?僕お腹空いた」


 しかし、ダラダラと続く道のりに飽き飽きしたのか、ダチョウの子供、ムブラナが母親であるトゥインカに自分の空腹を訴えていた。

 トゥインカは困ったかのように顔をしかめながら至って冷静に返事をした。


「もう少しで遺跡だから我慢しなさい、ムブラナ」


 トゥインカは必死になってムブラナを宥めながらもう何度目となる言葉を返すと、そのまま首を伸ばして前方を確認した。まだ見えないオカリナ遺跡に少しだけ残念そうに息を吐きながら若い二体のダチョウと夫であるバザールに声をかけた。


「あんた、サンドロ、ココナム。そっちの方向で手頃な獲物は見えるかい⁈」


 そう声を張り上げながら獲物の有無を問うトゥインカに対し、いずれも首を横に降っている。チッと舌打ちをしながらもトゥインカは母親らしく表情を和らげると、そのままムブラナに向き直った。


「母ちゃんがすぐに獲物を見つけるからそれまではここで待って我慢するんだよ。その間はちゃんとこの人達と荷車を守りなさい。分かったかい?」


 ムブラナはトゥインカの言葉に頷くとそのままトゥインカの背中に乗っていたマイを自分の背中に乗せようと体を近づけた。

 マイは案の定寝ていたが、起こさない程度に器用にマイを受け取ったムブラナは今度は荷車の方に近づいた。

 その様子を心配そうに見つめながらトゥインカは二、三度振り返ると、そのままオカリナ遺跡の方へ走っていった。



 ◇◇◇



「ねぇ、兄ちゃん。僕としりとりしようよ」


 今俺は若いダチョウの内の一体、サンドロに乗ってムブラナとしりとりをしながらオカリナ遺跡を目指していた。

 カエデさんの馬、ハーブ二号が昨日の猛ダッシュのせいで足が疲れていたり俺が速いスピードに弱いということを考慮してカリンさんがゆっくり進もうって言ったのがすごくありがたい。

 相変わらず強い日差しだったがバーチャマおばあちゃんの結界、エアコンとこのサンドロのおかげで俺は比較的快適な旅を満喫していた。

 暫く歩いていると、少しだけ急な坂に入った。砂だらけで荷車が進みにくいので俺たちは一旦ダチョウから降りて荷車を後ろから押した。

 やがてそこを登りきると砂だらけだった周りから少しだけ大きな岩がチラホラと目立ち始め、最終的には赤茶色のように見える大きな岩がイギリスのストーンヘンジみたいに規則正しく並べられているところに辿りついた。

 そんな中ムブラナがまだしりとりをしようと強請ってきたが周りの景色が変わるに従って次第に静かになっていく。

 すると、ムブラナは周りを見渡し俺や他の人達を見上げながら非常に明るい声をあげた。


「もしかしてここがオカリナ遺跡?大きな石がいっぱい落ちてるね、かずや兄ちゃん、サンドロ兄ちゃん‼」


 ムブラナの子供っぽい明るい無邪気な声に自然と頬が緩むのを感じながら、俺は荷車の中にいるバーチャマおばあちゃんに声をかけた。


「ここがオカリナ遺跡ですか、バーチャマおばあちゃん?」


 俺がそう尋ねるとバーチャマおばあちゃんは指を左右に振りながら得意げに口を開いた。


「お前さんもいい線いってるんじゃがの、ここはまだ遺跡じゃなくてただの入り口じゃ、ホホホ」


 そう言いながらバーチャマおばあちゃんは少し先に見える黒い点を指差すとまた笑った。


「あのダチョウのお母さんがやってきたところが私達の目的地、オカリナ遺跡じゃよ、ホホホ」


 すると、段々と黒い点が大きくなってきてこちらに近づいてきた。あー、またか、と少し文句を言いながら俺はサンドロから降りて荷車の後ろに隠れる。そのすぐ後、砂が思いっきり荷車に当たる音と共に現れたのは何かを口に加えたトゥインカさんだった。



 ◇◇◇



「ほら、ムブラナ。ご飯よ」


 少し含んだ声でダチョウの母親、トゥインカは息子、ムブラナにご飯を与えていた。何やら虫のような得体の知れないものを口移しするトゥインカを見て少しだけ気持ち悪さと吐き気を催しながら、かずやはダチョウの食事の一部始終を観察していた。

 確か口移しってペンギンとかがするやつじゃ、と頭に思い浮かべながらかずやは遺跡の方からやってきたトゥインカに声をかけた。


「えっと、トゥインカさん。遺跡はどうでしたか?」


 かずやはさりげなく口を抑えながらそう尋ねると、食事を与え終わったのかトゥインカが振り向きながらかずやに返事を返した。


「そうですね、遺跡の内部には行ってないので詳しいことは分かりません。それよりもムブラナの食事のことを考えていましたから、すみません」


 あっそうですかとあっさり引き下がるかずやを見て何を思ったのかムブラナが口をもぐもぐとしながらかずやに声をかけた。


「砂漠トカゲの白アリソース和え、美味しいよ。兄ちゃんも食べる?」


 そう言って口の中身を見せながらかずやに口移しをしようと迫るムブラナを手を振って思いっきり拒否を示しながらかずやはムブラナにこう答えた。


「おえっ、だ、大丈夫だムブラナ。しっかり食べて大きくなれ、なっ⁈それに口移しはやっぱり女の人と……」


 最後の方はしりすぼみだったが、かずやは苦笑いを浮かべながら断ると後ろに下がった。

 しかし、何故かバーチャマがかずやの言葉を聞いていて彼に悪戯っぽい笑みを向けると口角をあげたままかずやに言い募った。


「なんなら私が口移しをしてあげようかの、ほれ、女じゃし」


 バーチャマの言葉を聞いた途端顔色を変えたかずやはすぐさまジャンピング土下座をするとそのまま頭を床につけて謝った。


「も、申し訳ありませんバーチャマおばあちゃん。それだけは勘弁を……あ、アチ、熱い‼‼」


 かずやの返事にかずやの周りの結界を解くバーチャマ。すぐに空気が暑くなり砂が熱するとかずやは飛び跳ねながらその場を去っていった。

 しばらくの間ポカンと口を開けていたムブラナはかずやの様子を見て何かを心の中に刻み込んだ。

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