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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
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30話 トゥインカ

 ジューっと肉を焼く香ばしい匂いが鼻をくすぐる。流石に生肉では無くて燻製肉だったが、俺の空いたお腹を鳴らすには充分だった。

 既に味付けされている燻製肉は少々しょっぱかったが、昨日の昼食の時食べたようなふんわりとした卵と食べれば何の問題もなかった。

 砂がまだ温まっていなかった為、普通に調理したことが少し残念だった。

 そんな朝食も無事終わり、俺たちは皿などの後片付けを始めた。


「俺たちはそろそろ帰ることにする。一晩世話になった」


 俺が鉄板の焦げを擦り落としていると、ダチョウ三体のリーダーが俺たちに声をかけた。どうやらもう自分達の縄張りに帰るようで、俺たちは一旦片付けの作業を中止すると彼らを見送る為に集まった。


「背中に乗せて頂きありがとうございました。短い間でしたがどうぞお元気で。さようなら」


 カリンさんが代表してそう伝えると、リーダーダチョウが翼で頭を掻きながらもごもごと何かを口にした。


「その、俺たちも世話になった。お前らの食うソーセージ⁈ってやつは美味かった。まぁ、元気でな」


 照れ臭そうに俯きながら礼を言うダチョウはなんだかツンデレの人が誰かに告白しているかのように素っ気なかったが俺たちは笑ってそれを受け止めた。


「またメスのことについて語りあおうぜ、かずや。それじゃあお前ら達者でな」


 そう言って踵を返すダチョウの方から振り向き際に小さな雫が飛んできたことは内緒の話だ。ダチョウのくせに案外人情深いんだな、と感慨を受けながらその背中に手を振っていると、隣からマキの鼻をすする音と共に親子丼、という言葉が聞こえてきた。

 手をダチョウの方に伸ばしながら呟かれた親子丼、という言葉をダイレクトに背中に受けたダチョウは足をブルブルと震わせながら一歩一歩道を踏みしめていた。

 この場に及んでまだ親子丼のことしか頭に無いマキに呆れながらふとさっきの雫は涙ではなく冷や汗だったのではないかと考えた俺はきっと正しいのだろう。

 俺は食べ物としてしか見られていなかったダチョウに少し同情しながら彼らの姿が点になるまで見送り続けた。


「それじゃあ片付けに戻ろうか……。マイ…起きて…」


 タミが全員に声をかけ、ついでに早速居眠りを始めたマイを起こしている。俺たちはテキパキと片付けを終わらせるとそのまま俺が寝ていた黄色いテントを畳んだ。ふー、と一息つく俺たち。

 俺は昨日ダチョウに乗る時以外は頭に巻いていたターバンをまた被りながら遺跡調査の準備を整えていると、遠くから大量の砂を巻き上げながら急激な速さで何かがやってきた。

 慌てて武器を拾ってその何かに備える護衛組一同。やがて近づいてきた何かの正体を確認出来るようになると、カリンさん達は武器を降ろした。


「助けてくれ〜‼」


 助けを呼ぶ声が聞こえてくる。声の先には先ほどそこそこ感動的な別れをしたはずのダチョウ達のリーダーが悲鳴に近い叫び声をあげながら大急ぎでこちらに向かってきていた。

 俺たちはダチョウが巻き上げるであろう砂を回避する為に荷車の裏へ周りながらダチョウが来るのを待った。

 何かが急ブレーキする音と共に、荷車に大量の砂がかかる音が響き渡る。

 やがてその音が止む頃合いを見計らって荷車の前まで戻ると、そこにはあれほど威厳たっぷりで偉そうだったダチョウのリーダーが別のダチョウに思いっきり嘴で突かれている姿があった。

 急いでそれを止めようにもリーダーはそのダチョウにミシンの針のように高速で突かれていて、正直俺たちにそれを止める術は無かった。

 すると、この状況を見て仕方がないと思ったのかカリンさんが実力行使の為に長い槍を持って構え出した。そのままタイミングを計って突きを入れようとするカリンさん。


「ゃ、やめてくれ、母ちゃん……」


 しかしカリンさんの攻撃はリーダーダチョウが発した情けない言葉によって不発に終わってしまった。


「勝手に外泊してあんたタダですむと思ってるのかい⁈」


 母ちゃん、と呼ばれたダチョウが目を大きく開きながら怒りを露わにしている。


「わ、悪かった、だから許してくれ、母ちゃん‼」


 それに対し、翼で頭を必死に覆いながら許しを乞うリーダーダチョウ。

 しかし未だに身体中を突かれているダチョウを見ていられなくなった俺は覚悟を決めながら二体の間に入った。


「二人……共、事情は良く分かりませんが一旦喧嘩を止めてください!」


 ダチョウに対し二人という言葉はどうかと一瞬考えてしまったが、まずはこの騒ぎを抑えなければと考え直した俺は二体に向かってそう伝えた。

 俺の言葉に嘘のように止まるダチョウと、ホッとしながらもブルブルと頭を抱えてうずくまっているリーダーダチョウ。

 するとリーダーじゃない方のダチョウがクエ〜、と鳴きながら俺の方向を向いた。よく見るとこのダチョウ、何故かまつ毛があってしかも非常に長い。

 ダチョウの方も俺のことを興味深そうに見つめている。

 やがてこのダチョウは俺から目線を逸らすと視線を俺の後方に向けながらその形のいい嘴を開いた。

 ダチョウが何かを言おうとしたその瞬間、遠くからドドドドドド、という音が聞こえてきた。

 そのまま音が聞こえてきた方へ向き直りながらダチョウは大きく翼を開いた。


「母ちゃ〜ん‼‼‼」


 すると、大きな翼を見つけた何かは猛烈な速さで一直線にこのダチョウの胸元へと駆け込んでいった。

 あの速さをなんの反動も無しに受け止めるダチョウさん。

 俺はこの光景をポカンと口を開けて見つめながらその何かを抱きしめるダチョウさんを見守った。

 すると、流石に状況についていけなくなったのか、今度はマキがダチョウさん達に声をかけた。


「えっと、どちら様ですか?」


 ダチョウさんは今度はマキの方へ振り返ると、そのまま丁寧に頭を下げながら俺たちに挨拶をした。


「私の名前はトゥインカ。そしてこっちは息子のムブラナです。よろしくお願いします」


 そう言って俺たちにも頭を下げるトゥインカさんに俺たちも頭を下げると、トゥインカさんは横でまだ震えているリーダーダチョウを見下ろしながら言葉を続けた。


「この私の隣にいるバザールの妻です」


 開いた口が塞がらないとはこの事をいうのだろう。まさかこのリーダーダチョウ、いやバザールに妻子がいたとは…。

 俺は多分この中で一番間抜けな顔をしながらもその事実に驚くことしか出来なかった。

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