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オジー王国の謎  作者: 寺子屋 佐助
第一章 オカリナ遺跡編
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24話 ダチョウ

「で、このダチョウはどうするんですか?」


 俺は現在縄で首と嘴を縛られたダチョウを指差していた。全員がその答えを考える中、捕まった三体のダチョウは俺の見る限り大人しくしていて、まるで自分は無罪ですよ、とでもいうかのように首を左右に振り辺りを見渡している。

 しばらく顎に手をあてて何かを考えこんでいたカエデさんは突然パッと何かをひらめくとキラキラとした目でみんなを見つめた。


「ねぇ、このダチョウに乗ってオカリナ遺跡までいかない⁈」


 捕まえたばかりのダチョウを逃がすならともかくまさかの乗りこなそうというカエデさんの案にみんなが目を点にしている。

 さすがに捕まえた本人であるカナさんも心底意外だったようで何故かこめかみを押さえ出したカナさんはしばらく無言のまま何かを考えこんでしまった。

 どう考えても無理があるだろう、と俺が反論しようとすると最年少であるマイとマキが衝撃の言葉を放った。


「ダチョウ……の卵って食べられるよね⁈」

「美味しいかな……親子丼」


 二人ともうっとりとしながら空想上の巨大親子丼と卵をふんだんに使ったクレープを食べ尽くす。

 一見可愛らしい乙女のような表情を浮かべる二人も考えていることが丸分かりのこの状況ではただの食い意地の張った子供にしか過ぎない。

 オジー家に限ってよく見られる見た目可愛いのに中身が残念な姉妹というのは少し、というか男としてはかなり勿体無く感じた。


「無理だよ、だってこのダチョウみんなオスなんだもん」


 すると突然カエデさんがマイとマキに向かって至極当たり前のことのようにダチョウがオスであることを伝えた。

 何故オスであることを見破ることが出来たのか疑問に思った俺はカエデさんに尋ねようと口を開くと、俺と同じことを考えていたマキが俺よりも先に口を開いた。


「なんでそんなことがカエデお姉ちゃんに分かるの?」


 親子丼のことしか頭にないマキをよそにカエデさんは荷車の方へ振り向くとビシッと迷いのない動作で自身の人差し指を広げた。


「だってハーブ二号がアレルギー反応を起こしてるんだもん」


 その指の先には銃で撃たれたかのように胸元を抑え釣りあげられたばかりの魚のようにピチピチと横たわるハーブ二号の姿があった。

 王子様が乗るような白い馬が白目を向きながらピクピクと小刻みに痙攣するその姿はなかなかにシュールではっきり言って面白い。

 俺が必死になって笑いを堪える中、カエデさんは荷車の中へと消えて行くと、すぐに小さなタブレットのようなものと水の入った容器を両手に戻ってきた。

 そしてすぐさまタブレットをハーブ二号の口の中に押し込むともう片方の手でハーブ二号の口を抑えながら水を流しこんだ。

 ゴクン、とハーブ二号が水とタブレットを飲み込むとだんだんと痙攣が治まっていき、最終的には元の元気な馬に戻った。


「なんだ、親子丼は無しか…」


 一部始終を見終わった俺がホッと胸を撫で下ろしていると、マキがいかにも残念そうにそう呟いた。まだ空想上の親子丼に未練があるのか、マキはハーブ二号のことよりもダチョウのことを考えていた。

 マイはマキほど卵に執着心があった訳では無かったようで、またいつものどこか眠たそうな目で瞼をトロンとさせている。

 俺は呆れた様子で同じように頭を抱えているカナさんを見ると、カナさんは苦笑いを返しながら今度はマキのことで何かを悩み出した。

 心の中で同情しながら今回の被害者であり事の発端であるダチョウを振り返ると、三体は体を抱き寄せあって震えていた体を離し、安堵の色がこもった声で高らかに鳴いた。


「良かったな、お前らオスで」


 唇だけを動かしてそう呟く俺にダチョウは同意を示すかのように首を縦にブンブンブンブンと取れるんじゃないかと思えるほど激しく、そして必死に振った。俺はその様子に共感しながら言葉を続ける。


「やっぱりどの世界に行っても女ってやつは恐ろしいよな」


 誰かに睨まれた気がするが気にしない。

 俺は素直に思っていたことを言い終えると三体の中でも特に背の高い真ん中のダチョウがまるで俺の言葉を理解したかのように鳴いた。


「本当、全くだぜ。にいちゃんも苦労してんな。やっぱりオスの気持ちは男にしか分からねぇもんだ」


 うんうん、そうだよなと頷きながら返事を返すと俺はあることに気づいてしまった。


「ダチョウが喋ってる……」


 それも八百屋のおじさんのような威勢のいい声で。

 ダチョウの声が聞こえたのはどうやら俺だけではないらしい。

 頭を抱えて考え込んでいたカナさんもハーブ二号の面倒を見ていたカエデさんも、卵のことで沈んでいたマキもいつの間にか現れたカリンさんも、眠そうな目を擦っていたマイも驚愕に目を見開きながら三体のダチョウを見ていた。


「お、おい、お前ら…」


 声を出したダチョウも自身の声に驚いたのか隣のダチョウ達を交互に見ながら羽をバサバサと動かしている。

 俺は信じられないものをみた時のような目でダチョウを見ていると突然荷車の方から演技をするマジシャンのようにバーチャマおばあちゃんとタミが現れた。


「まさかこのタイミングで使うことになるとはの…」


 そのままバーチャマおばあちゃんは思いっきり息を吸い込み種明かしという名のネタバレをしようと口を開くと、それを遮るようにタミが話し出した。


「ダチョウが話し出した理由は大叔母様が開発し異種族間のコミュニケーションを可能にしたこの結界の中に入ったからよ」


 俺たちは意味が分からずまるで取り残されたかように首を傾げる。俺たちの視界の片隅には


「台詞とられた……」


 と嘆くバーチャマおばあちゃんのどんよりとした姿があった。

次回は12月21日午前11時予定です。

ちなみに時間を変えているのは個人的なデータをとるためです。ごめんなさい。

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