12話 ターコイズ色の髪の少女
ーーーーゲッ、こいつさっき爆笑してたやつじゃん……。
今俺はあの悲しき自己紹介を思い返している。あの緊迫した雰囲気の中勇気を振り絞って言葉を発したのは良かったものの、緊張のあまり噛んでしまったのがいけなかった。噛んでしまったという事実を裏付けるようで癪だが今俺の隣に座っている女性は俺が噛んですぐに腹を抱えて笑ってきた張本人だ。もちろん俺に非があったわけだから仕方がないけど人が一生懸命頑張ってる時に腹を抱えて笑わなくてもいいじゃないか!と叫びたくなるくらいあれは恥ずかしかった。
隣に座るこの女性を羞恥心と罪をなすりつけたい思いのあまり睨みつけようとしたがさすがに大人気ないなと思い改め、口だけで笑う高度な作り笑いで俺は彼女を見つめた。すると彼女は俺の顔を覗きこみ初対面であるにも関わらずいきなりキツすぎるストレートな質問を投げかけたのであった。
「それで?誰がタイプだったの、かずやおじさん?」
………………。
……………お、おじさんだと〜?!
もし俺がかの有名なあいつだったら怒りのあまり髪を黄色に逆立て3とか4ぐらいまでレベルをあげていただろう。21でおじさんだって。いや、まだバリバリの学生だし。世間一般だとまだ俺若造だし。
…………グスン、しょげるぞ。
それになんだタイプって?俺まだ会ったばっかりだぞ⁈
脳内で意味の分からない一人漫才をしながらかつてない絶望を味わう俺。おじさんと言われたのはショックだったがここは大人らしく乗り越えようと質問の内容について考えることにした。だがまずはこの直球すぎる女性に常識を植え付けるため、初対面の人には名前を伝えるべきことを教えることにした。
「いきなり意味の分からない質問をしないでくれ。それよりまず君の名前は?それに俺はおじさんじゃない!」
結構ハッキリ伝えたことでスッキリした。出そうで出なかったくしゃみがようやく出た感じだ。やっぱり言いたいことはちゃんと言わないとな、と一人感慨深く物思いに耽っていると、俺の張った声が原因なのかそれとも別の要因か彼女は気まずそうに固まってしまった。少し言い方がまずかったのか分からないが急に黙りこまれてもこっちとしては困る。仕方が無いので素直にどうして固まっているかを聞いてみることにした。
「なあ、どうして急に固まるんだ?俺なんか悪いことしたか?」
いきなりそんなこと聞かれて意外だったのかしばらく呆然とする彼女。だがしばらくして意味がようやく伝わったのか首を横に振って否定を示した。そしておもむろに口を開けるとこう言った。
「すいません、いきなり調子にのりました。まさか怒らせてしまうとは……」
なるほど、俺を怒らせたと思ったから急に態度がガラリと変わったのか。そう納得した俺は今度はなるべく優しげなトーンで生徒を宥める時の先生のようにゆっくりと聞いた。
「分かればいいんだ。怒ってもいないしね。さっき自己紹介したと思うけど僕はかずや。君は?」
「うち……私はイツキです。14です」
「そんな堅苦しくなくていいよ。本当にもう大丈夫だから。イツキちゃんね、よろしく」
俺の口調に安心したのかターコイズ色の髪の少女、イツキちゃんはさっきまでの暗い表情から一転して今度は悪戯っぽい笑みを浮かべはじめた。そして懲りずにもまた同じ質問を繰り返す。
「で、誰がタイプなの?教えて!」
ーーーーなんだこの変わり様は⁈しかもまたタメ口⁈ そ、そういえばアントワンヌさんも…………。
またもや脳内ではツッコミが行われ、最終的にはこの変わり様は親譲りなんだろうという結論に辿り着いた俺は指摘するのも馬鹿らしいと思い直し、結局彼女の質問に正直に答えることにした。
「いや、初対面だし。そういうのは分かんないから」
なるべく冷たく素っ気なく答える。なぜなら変な風に解釈されて女子を敵にまわすのは得策じゃないからだ。そう、経験者は語る……。
「で、結局誰がタイプなの?かずやおじ、お兄さん」
こいつ絶対わざと間違えたなと分かるくらいの笑みを浮かべしつこく聞いてくるこの少女に俺はどうすればいいか分からなかった。すると、前から助け舟が出されこう言った。
「イツキ、かずや君が困っているでしょ?それに今日は彼を案内する日だから話がしたいなら後にしなさい」
イツキちゃんははい、お母様、と返事をすると名残惜しそうにその場を去っていく。その少し淋しそうな背中を眺めながら俺は気になることを質問した。
「アントワンヌさん、僕はこれから何処へ案内されるんですか?」
アントワンヌさんは軽く笑みをこぼしながらこれから俺が行くところを伝えてくれた。また後で俺が驚くことも知らずに。
「これから行く所はこの村の工房や職人が集まるところだ。おそらく私の三女達が働いているだろう」
そう言ってまた先を歩き出す……と思ったらアミさんがすっと前に出て俺についてくるよう促した。三女達とかまた言葉遣いが変わったこととか聞きたいことはたくさんあったが、まずここ全体のことを知るのが先決だと分かっていたから素直にアミさんに従い付いていくことにした。
出来れば書くペースを戻したいのですが作者は学業を優先しなければいけない悲しい状況にあります。出来るだけ同じペースで投稿するつもりですが出来なかった場合はこの場を借りて先にお詫び申し上げます。
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