第四話~学園ト、ソノ他ノ身ノマワリ~
朝を迎えた。
あの後、案の定母さんは許してくれた。(困っているならしょうがないということらしい。)
妹はまあ、うれしそうだった・・・と思う。なぜなら、妹も僕と同じく感情が希薄・・・というよりも感情を隠そうとしているからである。
まあ、何はともあれ許してもらえて助かった。
そして薙比丘は僕の部屋の隣で生活する事になった。
・・・と、まあこうしてあの後起きたことを語っているのだが、今僕は何をしているかというと
「はーあ・・・憂鬱だ」
絶賛登校中である。
まあ、この後に待っているのが普通の学園生活ならよいのだが、なにせ今の時代には戦う訓練をするために創られた学校が多いわけで、待っているのは訓練、訓練、訓練、訓練、である。
憂鬱にもなるだろう。
だから、今僕の首根っこ《・・・・》を引っ張って心の底から楽しそーうに、にっこにこしているこの女は感情を表す神経が狂ってしまっているのではないかと、ついつい心配してしまうのだが・・・・
「まーた全無くん。学校さぼろうとしてたでしょ」
これだ、この落ちこぼれの生徒に諭すようなしゃべり方(事実落ちこぼれだが)で僕に話してくるこの女の子。
「いや、でも僕はお前みたいなSランクの生徒じゃないんだぜ。出羽《いずう》」
この出羽というこの女の子何故か、この『無能力者』であるこの僕に興味がおありらしい。
「えー、でも学校って楽しいじゃない」
「どこがだよ。あの空間で楽しみを見つけ出すのは不可能だ」
「そうかもしれないけどさ。努力をしてみないことには何もいえないと思うよ」
「・・・まあ、ごもっとも」
努力するだけ無駄だと思うのだが。
「んー。ならさ友達を作ればいいじゃない」
「友達になろうよ。とは言ってくれないんだな」
「あたりまえでしょ。私は全無君を明るくしたいんだから。私が言っちゃったら意味ないじゃん」
「・・・ごもっとも」
「ほら、でもさ保険委員のあの人とは仲いいでしょ?」
「いや、話しやすいだけだ。性格が悪い人間どうし気が合うんだよ」
「性格が悪い・・・ねー」
「なんか言いたそうだな」
「べっつにー」
はぐらかされちゃったか。
「ほら校門だよ。ここまで来たらあとは行けるよね」
話している間にいつの間にか校門までたどり着いてしまったようである。
出羽に首を引っ張られ、というか引きずられながらの登校なので気がつかないのもまあ当然なのだが。
「できればああいうのは、もうやめてほしいな」
「なら、自分で登校できるようにすればいいじゃない」
「またまたごもっとも」
そして、僕は数歩歩くと、
「じゃあな」
「うん、また」
そうして僕達は学校の自分のクラスに向かった。
「・・・・・・・暇・・・・だなあ」
教室には、僕以外の姿は見えない。まあ、それは当然である。この3-Xには僕以外の生徒はいない。
なぜそのようなことになっているのかというと無能力者を能力者と一緒に勉強・・・もとい戦闘の知識
や、過去の日本の歴史(普通の科目もあるにはあるがあくまでも補助的なものなのである)をさせるわけにはいかないということだ。
先生はというと僕の机にもうひとつの机を合わせた状態で寝ている。20だいであろう、普通よりはかっこいいと思われる顔なのだが、その顔も今はだらしない。
僕はこの先生は割りと好きである。とっつきやすい性格であるし、話しやすいからだ。
・・・でも、授業中に寝るからなあこの先生は・・・出された問題も解けたし・・・あいつのところにでも行こうかな。
僕はノートに『解けたので外に行ってきます』と書き、教室をでた。