夢で追われる男
「はぁ、はぁ......」
自分の荒い息遣いが聞こえる。
誰かに追われている。
何かが追ってくる。
逃げないと......。
捕まったら終わりだ。
そんな気がする。
「わぁっ!」
声を上げて、飛び起きた。
自分の叫び声で目が覚める。
ここ数日、こんなことが多い。
なんだか眠っても疲れが取れた気がしない......。
病院に行って、睡眠薬でも処方してもらおうか。
また、あの息遣いが聞こえる。
今夜も追いかけられている。
もう逃げられない。
とうとう追いつかれてしまった。
「おめでとうございまーす!!」
何が?
「ご当選おめでとうございまーす!」
テレビのビックリ企画とか?
それにしては、服装が変だ。
まるで三河万歳みたいな格好をしている。
でも今は正月じゃないぞ。
カメラも持っていない。
「何に当選したんだ?」
「あなたは運のいいことに『苦しまずに死ねる権利』を手に入れたんですよ。」
「なかなか手に入れられませんよ。多くても十人に二人ぐらいしか手に入れられないんですからね。」
そう言いながら片方は扇をひらひらさせ、もう一人はチンドン屋の太鼓みたいなのを叩いてはやし立てる。
十人に二人ってことは、二割だろ?
これって少ないのか?
「いや、俺はまだ死ぬような年じゃないから。」
そう言うと、
「今回のチャンスを逃すと、もう苦しい死に方しかできませんよ。
痛かったり、苦しかったりするのは、嫌でしょう?」
「今なら眠ったように安らかに逝けますよ。お得です!」
死ぬのにお得も何もあるものか。
「ちょっと考えさせてください。こういう大事なことは、ゆっくり考えないと。」
「残念ですが、今から三分以内に決めないと、当選の権利は他の方に移ります。
さぁ、どうします?」
なんだか詐欺の手口みたいだな。
でも42歳、独身。
家族はいない。
会社から帰って、コンビニ弁当を食べて、テレビを見て寝るだけの生活だ。
特に趣味もない。
このまま死んでもいいのか。
悲しむやつもいないしな。
このままあくせく働いて、年をとって年金暮らしでやりくりしながら、死んでゆく。
どっちがいいのかな。
楽に死ねるなら、それも悪くないのか。
困った、どうしたらいいか、わからない。
「さぁ、そろそろ三分経ちますよ。
どうしますか?
十、九、八、七、六、五、四、三、二、一!」
「答えは?......」
俺の答えは、......




