ほな、悪役令嬢と違うかぁ
「あっフレイク様、ちょうど良いところに」
「おお、ボーイか。どうした?」
「潜入させている調査員からこんなのが上がってきましてね」
フレイクはこの国の第一王子である。
ちょっぴり短気で人の話を最後まで聞かないところもあるが、あとは概ね優秀な部類といえる。
そんな彼の側近が懐から取り出したのは『政敵の浮気や不正の証拠』であった。
「おー、ありがとう。こんなん、なんぼあってもいいからな」
「一番いいですよね。」
「ウチの調査員は優秀な奴ばかりで有難いな、本当に」
「後で褒めておきましょう。ところ王子」
一段声のトーンを落として囁くボーイ
なんでも、王子といい感じになっている平民出身の聖女ミルクが、最近陰できつく当たられているらしい。
「そうなのか。許せんな、犯人は誰だ。」
「影が言うには女性みたいなんですが」
「いわゆる悪役令嬢と言うやつだな」
「それがですね、そうとも言い切れないんですよ……」
言葉を濁すボーイに、そんなはずないだろうと訝しむフレイク
あんなに可憐でいい子なミルクにきつく当たるなんて、絶対にろくでもない悪役令嬢に違いない。どんな特徴があるか、ちょっと言ってみろと続きを促す。
「金髪の縦ロールで、扇でよく口を隠していますね」
「悪役令嬢やないかい!その特徴はもう完全に悪役令嬢やがな」
「悪役令嬢なんですかねぇ」
「すぐわかったやん、こんなんもー」
あからさま過ぎる特徴に素の口調が出るフレイク
しかし、ボーイはそこで話を終わらせず「でもこれ、ちょっとそうとも言い切れないんですよね」と続ける。
「何で言いきれないんだ?どう考えても悪役令嬢だろう」
「それが、その女性、取り巻きを連れたりはしていないんですよ」
「あー、ほな悪役令嬢と違うかぁ」
おもわず素の口調が出るフレイク。
取り巻きのいない悪役令嬢など、牛乳のないコーンフレイクのようなものである。
ビタミンパワーのエネルギーが圧倒的に足りていない。
「じゃあ、いったいどういう女なんだ?」
「プライドが高く、態度は大きく、笑い声はおーっほっほ」
「悪役令嬢やないかい!そがいに態度でかいのはもう悪役令嬢で決まりやがな。悪役令嬢って実力はさほどないくせに、コーンフレークの箱に書いてある栄養バランスの五角形かってくらい態度でかいからね。」
あからさま過ぎる特徴に素の口調が出るフレイク
しかし、ボーイはそこで話を終わらせず「でもこれ、ちょっとそうとも言い切れないんですよね」と続ける。
「何で言いきれないんだ?その態度はどう考えても悪役令嬢だろう」
「地道な努力で身に着けた、実力と地位に伴う態度ですからね。」
「あー、ほな悪役令嬢と違うかぁ……」
悪役令嬢は努力が嫌いだからね。楽して結果だけ出したい煩悩の塊やから。
努力の果てに、実力と地位を身につけたなら、それは本当にただの立派な女性やもの。赤いスカーフを巻いたトラのごとく腕組みしてドやるのもわかるわ。
「じゃあ、いったいどういう女なんだ?」
「ミルク嬢には時々『今の貴女は王妃にふさわしくない』って言ってますね」
「悪役令嬢やないかい!そのセリフからは悪役令嬢しか浮かんでこんよもう。きまりやがな。そんなひどいこと言うなんて法律スレスレよ?もう一段階ひどいこと言うのなら、俺は断罪に動くよホンマ。悪役令嬢や絶対。」
あからさま過ぎる特徴に素の口調がry
「でもこれ、ちょっとそうとも言い切れないんですよね」
「言い切れんことない。悪役令嬢に決まりそんなん」
「でもミルク嬢が言うには、『これは今の私に必要な叱咤激励だ』と」
「ミルクが……でもそれ、自罰的になっているだけとちゃうの?」
「そういうわけでも無いようで、事実その女性はミルク嬢を手厚く指導もしていて」
「どうなってんねん!?」
もう、ホンマに分かれへん……と頭を抱えるフレイクに、「国王様がおっしゃるには……」と話を続けるボーイ
「父上?」
「よいか、オカーンは次期王妃を教育する義務があるのだ。当然厳しいことも言う。もちろんその時は人目を避けて、陰でこっそりとだがな……とのことです」
「それ、母上がミルクに王妃教育しとるだけやないかい!」
ええ、その通りです。
本当にありがとうございました。
「それを早く言ってよもう」
「だって全部言う前に王子がツッコむんですもん」
「むぅ……」
これを教訓に王子は、人の話を粘り強く最後まで聞く良い王様になりましたとさ。
めでたし、めでたし。
「ご愛読ありがとうございますー」
「いま読者さまからポイントを頂きましたけれどもね」
「ありがとうございます」
「こんなん なんぼあっても良いですからね」
「作者が一番喜ぶやつですからね」
「ねー 有り難いですよ ほんとにね」