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第1話.私の為にある世界


「も、もしかして蓮ちゃんですか....??」


ドラマの収録終わりの午後6時。適当に渋谷をふらついていた所に、見知らぬ女の子が声をかけてきた。

ボサボサ頭にニキビだらけの顔。その容姿を見ただけで笑みがこぼれそうになる。


「うん、そうだけど。何?私のファン?」


きっかけは今から約1年前、中学三年生の時に受けたテレビのインタビューだった。それがSNSに抜かれ100年に一度の美少女だと大バズり。そこからアイドルとしてデビューを果たし、今やメディアから引っ張りだこ。15歳にして、見事にスター街道を歩み始めていた。街角を30秒程歩けばすぐに声をかけられ、写真を求められる。ここ最近は美人ばかりだったので、こういったブスが来てくれるのは有難い。

人間、下を見ないと疲れちゃうからね。


「そ、そうなんです!!よければ写真とかって...」


「写真?いーよ全然。じゃ、撮ろっか!!」


私が少し微笑むだけで泣き出すブス。この瞬間が堪らなく気持ちいい。そうだよね、辛いよね、そんな顔じゃあ。生きていけないよね。私だったら外歩けないもん。そんな事を思いながら、虚空の笑みを張りつけて写真に写る。醜いブスにあげてやれる程私の笑顔は安くないの。



翌朝、無機質なアラームで目が覚める。高校生ながら東京で一人暮らしをしている為、全て1人でやらなければやらない。温室育ちの私にとって、それは堪らなくストレスだった。けれども朝のニュースをつけた瞬間、そんなストレスは一瞬にして吹き飛ぶ。理由は1つ。私がテレビに映っているから。画面越しに見る私もやはり可愛い。横のイケメンアイドルも少しばかり顔を赤らめているような気もする。世の中性格だとか言い張るブスもいるけど、いい加減現実を見て欲しい。大物俳優が選ぶ相手はいつも可愛い女優だし、人気女子アナが選ぶのはいつもイケメンアスリート。1番大事なのは容姿と金。これに気づけない奴らはただの負け組。こんな事を毎日考えているが飽きた事は一度も無い。何故かって?理由は簡単。学校にいる負け組達に、今日はどんなことをしてあげようか計画が捗るから。そのために学校に行っていると言っても過言では無い。

"イジメ"を辞めましょうとか、相手の立場に立ってだとか、そんな事は何千回も言われた。でも分かる訳ない。単純な事だ。私は勝ち組で、アイツは負け組なんだから。


「おはよ〜!」


ガラガラと重い教室のドアを開ける。ドラマは既に始まっているみたいだ。


「床、ホコリ無くなるまで舐めろって言ったよな?」


世界は、今日も私の為にあるみたいだ。


初めまして、渚です。

初心者ですので、暖かい目で見守ってくれれば嬉しいです。

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