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病弱な悪役令嬢は失恋からの退場ルートを目指す  作者: 清水薬子


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プロローグ

 喀血しながら蹲った瞬間、前世の記憶を思い出した。


 見覚えのあるドレス、カーテンのように垂れ下がる銀色の髪、そして青白い肌を飾る家紋入りの指輪。

 忘れられるわけがない。かつて何回もプレイした乙女ゲーム『青薔薇のエデン』に登場する悪役令嬢ロザリンデの格好だ。あまりにも見覚えのありすぎる家族が顔面蒼白になって大騒ぎし始める中、私は一つの事実に気がついた。


 私は悪役令嬢ロザリンデに転生したんだ。


 苦しくて、何度も咳き込む。

 あっという間に白いドレスは鮮血で染まるが、咳は止まらない。


 悪役令嬢ロザリンデ。齢十四の侯爵令嬢。どのルートでも必ず登場するキャラクターだ。


 生まれつき病弱な体で、虚弱。色素のない肌に赤い瞳。整った容姿から皇子の婚約者として選ばれたが、かなりの性悪な性格の持ち主なので早々に愛想を尽かされてしまう。


 蝶よ花よと溺愛されながら育てられたロザリンデにとって、ルートに関係なく皇子の心を射止めたヒロインは許すことができない存在。最終章では暗殺者を雇うのだが、攻略対象が庇って重傷を負う。


 調査の結果、ロザリンデの手引きが発覚し、あえなく断頭台送り。唯一、面会に来たヒロインを最期まで口汚く罵るという悪女っぷりは色んな意味で有名だ。


 医者が険しい顔で診察する間、ベッドの上で横になりながら私は考え込む。


 ロザリンデの病気が発覚したのは、婚約が決まった後。ゲーム本編が開始する半年前だ。

 病気が発覚した後、王家は婚約の継続を決めた。病気の令嬢を捨てては、評判の悪い皇子への嫁入り候補が更に減ってしまう。せめて病気になっても見捨てませんよというポーズを見せることで、評判の回復を図っている、という事情があった。


 断頭台送りを回避するには、ヒロイン自ら『あの人はそんな事しません!』と言わせる必要がある。そうでなければ、疑惑の人として扱われる事になるだろう。文字通り、死ぬその時まで。


 攻略対象と関わらない?

 それは無理だ。婚約している以上、皇子を避けるのは難しい。その他の貴族との関わりを最小限に抑えるしかないだろう。

 婚約者に対してそっけない態度を取れば、私を愛してくれている両親の立場を脅かしてしまう。ただでさえ、健康とは程遠い体で心配ばかりかけてきたというのに。


 ならば。

 悪役令嬢からキャラ変するしかない。


 我儘放題で傍若無人、冷酷無慈悲な悪役令嬢とはお別れを告げて、真逆の性格を演じるしかないのだ。


 そうだな。

 深窓の令嬢と思いきや天真爛漫なお転婆娘で、恋に敗れる乙女はどうだろうか。


 潔く身を引き、持ち前のお転婆な性格で新天地を目指す。

 これならばさほど違和感もないだろう。ヒロインだってロザリンデの新たな門出を祝ってくれるはずだ。


 よし、そうと決まれば!

 病の克服は無理でも、虚弱体質の脱却はできるはず!


 ベッドの上で血を吐きながらニヤニヤと笑う私を、家族は青ざめた顔で見ていた。まだ頭は正常だから安心して欲しい。

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