世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(白髪の魔女と輪廻の夢)「私が……あの世界を滅ぼした……?」
この物語は、世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(禁断の理想郷)「貴女こそが、世界の敵です」(完成版)(挿絵80枚以上)の偽りの世界である地球の日本でのお話。
「ねえ、結衣。あなたが見ているこの世界が、本当に全てだと思う?」
結衣
結衣
背中まで伸びる、まるで新雪のような白い髪を持つ結衣は、赤い瞳を窓の外に向け、問いかけた。都心の喧騒が遠くに聞こえる、高層マンションの一室。十四歳の彼女にとって、この世界はどこかぼやけて見えていた。
「結衣には、誰もいないんだ……」
両親は幼い頃に交通事故で亡くなり、親戚を転々とした後、今は一人暮らし。その美しいながらも珍しい白髪と赤い瞳のせいで、周囲の視線はいつも好奇と警戒がないまぜになっていた。学校でも浮いた存在で、心を開ける友達はいなかった。
そんな結衣には、誰にも言えない秘密があった。時折見る白亜の都市の夢。石畳の道、見たことのない植物、そして何よりも、そこで暮らす人々の穏やかな笑顔。夢の中の光景は鮮明で、まるで自分がそこにいたかのような感覚を覚える。
結衣と過去の風景
ある夜、いつものように眠りについた結衣は、夢の中で広大な都市を見下ろしていた。それは、高い水堀に囲まれた、円形の美しい都市。朝日に照らされ、夕焼けに染まるその姿は、まるで幻想のようだった。
(ああ、またこの夢だ……)
夢の中の結衣は、その都市を創った少女だった。魔法が使える者と使えない者がいる世界で、迫害される魔法を使えない人々を匿うために、彼女は自分の持つ幻想魔法を使ったのだ。都市の中央には巨大な青いクリスタルが輝き、そこから発せられるエネルギーが、人々の生活を支えていた。
結衣と白亜の都市と青いクリスタル
夢の中の人々は、穏やかに暮らしていた。井戸端で話す主婦たち、パンを焼く職人、遊ぶ子供たち。魔法は使えなくても、互いに助け合い、それぞれの得意なことを活かして生きていた。夢の中の結衣は、そんな彼らの声に耳を傾け、皆が安心して暮らせるように心を砕いていた。
[夢の中の街の朝]
公園の清掃ボランティア:早朝、ボランティアの女性たちが集まり、掃き掃除やゴミ拾いをしている。魔法の力はないけれど、自分たちの街を綺麗にしたいという気持ちで協力し合っている。
移動販売のパン屋さん:焼きたてのパンを積んだワゴン車が、住宅街をゆっくりと走る。香ばしい匂いに誘われ、人々が買い求める。
子供たちの登校風景:小学生たちが、親に見送られながら、ランドセルを背負って学校へ向かう。
[夢の中の商店街]
魚屋の呼び込み:威勢のいい声で、新鮮な魚を勧める店主。「今日のマグロはいいよ!」
八百屋の店先:色とりどりの野菜や果物が並び、主婦たちが品定めをしている。「このトマト、安いわね!」
手芸用品店:カラフルな毛糸やボタンが並び、手作りの好きな女性たちが集まっている。
[夢の中の住宅街]
庭の手入れをする老夫婦:丁寧に花壇に水をやり、愛情を込めて育てた花を眺めている。
ベランダで洗濯物を干す母親:朝の光の中で、家族の服を一枚一枚丁寧に広げている。
[夢の中の仕事場]
手織りの工房:職人が、昔ながらの織り機を使い、美しい布を織り上げている。
木工所の作業場:木の香りが漂う中、職人が丁寧に家具を製作している。
農家の畑:汗を流しながら、作物を収穫する人々。
[夢の中の祭り]
手作りの飾り付け:色紙や折り紙で作られた飾り付けが、街中を彩る。
屋台の食べ物:焼きそば、たこ焼き、綿あめなど、素朴ながらも美味しい食べ物が並ぶ。
盆踊りの輪:浴衣を着た人々が、太鼓の音に合わせて踊っている。
夢の中の結衣は、人々に優しく微笑みかけ、言葉を交わしていた。「おはようございます」「何か困ったことはありませんか?」と。
ある日、夢の中で、見慣れない男が、公園のベンチに座る女性に話しかけているのが見えた。
「あなたたちは、もっと力を持っていたはずだ。あの娘の魔法のせいで、本来の力を奪われているんだとしたら……?」
男の言葉は、人々の間に小さな波紋を広げていく。不満や疑念が、静かに、しかし確実に広がっていくのを感じた。
「奪われた?私たちの力を?」
男の言葉に耳を傾ける人々。彼らの表情には、これまで見られなかった陰りが見え始める。
「あの娘の魔法は、私たちの力を奪っているんだ」
そんな噂が、夢の中の街に広がり始める。最初は小さな囁きだったものが、次第に大きな声となり、人々の心を蝕んでいく。
見かけない男:「あなたたちの眠れる力は、あの娘の幻想魔法によって封じられているのです!」
男の言葉は、魔法が使えないことへの鬱積した感情と結びつき、人々の心に小さな火を灯していく。
「私たちの力を返せ!」
「あんな子供に、好き勝手させるべきじゃない!」
夢の中の人々の目は、次第に疑念と怒りに染まっていく。
夢の中の結衣は、戸惑っていた。「みんな、どうしたんだろう?私を避けているみたい……」
(疑いの目を向ける夢の中の人々)
夢の中の人々:「あいつが、私たちの魔法を奪ったんだ。」
夢の中の人々:「あいつのせいで、私たちは魔法が使えないんだ。」
見かけない男は、薄汚れたコートを着て、人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。「皆さん、知っていますか?あの白髪の娘が使う幻想魔法の恐ろしさを?」
男は、群衆に語りかける。「紫紅姫という禁断の魔法で、他者の魔力だけでなく、記憶までも奪い取るという噂ですよ!そして、奪われた者は、操り人形のように、あの娘に友好的な態度を取らされるらしい。」
男の言葉は、真実かどうかはわからないが、人々の不安を煽るには十分だった。
男の正体は、魔法都市の秘密警察のような組織に属する男だった。彼は、魔法を使えない人々の不満を利用し、結衣を共通の敵として作り上げることで、都市の支配体制を強化しようと企んでいたのだ。
見かけない男:「あの娘を排除すれば、あなたたちの力は戻るはずだ。」
男はそう囁きながら、群衆の憎悪の炎が燃え上がるのを、冷たい目で見ていた。
夢の中の人々:「俺たちが、あいつに優しくしていたのは、操られていたからなのか?」
一人の女性が言った。「あの娘の魔法は、まるで私たちを嘲笑っているようだわ……。ずっと、魔法が使えないせいで、どれだけ悔しい思いをしてきたか。やっと手に入れた安らぎも、あの娘の力があってこそ。まるで、私たちは彼女の施しで生きているみたいじゃない!あの男の言う通りよ。あの娘の魔法が、私たちの力を奪っているに違いない。そうよ、きっとそうなのよ。彼女さえいなくなれば、私たちは本来の力を取り戻せるんだ!」
夢の中の人々:「そうだ!あの娘をどうにかしなければ!」
その場に、重い沈黙が落ちた。
夢の中の人々:「やっぱり、あんな子供が、こんな大きな街を一人で作れるわけがないんだよな?完全に、騙されていたんだ!(怒)」
夢の中の街に、男の言葉が浸透し始めた頃、人々の間には小さなざわめきが広がっていた。「本当に、このままでいいんだろうか?」「魔法が使えないのは、ただの偶然なのか?」と。
長年抑えられてきた、魔法への憧れや、自分たちだけが取り残されているような焦燥感が、男の言葉によってじわじわと刺激されていったのだ。
夢の中の結衣の存在は、確かに彼らにとって安寧の象徴だった。しかし、同時にそれは、自分たちの無力さを常に意識させる鏡でもあったのかもしれない。
「彼女がいなければ、私たちは何もできないのではないか?」
「彼女は、私たちの可能性を奪っているのではないか?」
そんな不安が、男の「あの娘は魔法の力を隠している」という言葉に、都合よく結びついていった。
ある日、夢の中の市場で、野菜を売る老人が、隣の店の店主に小さな声で話しかけるのが聞こえた。「あの娘が来てから、確かに暮らしは楽になった。だが、時々、何か隠しているような気がするんだ。」
それは、多くの人々が心の奥底で感じ始めていた、小さな疑念の芽だった。その芽は、男の扇動によって、瞬く間に大きく育っていったのだった。
夕暮れ時、夢の中の結衣が広場に現れると、どこからともなく、険しい表情の群衆が彼女を取り囲んだ。「おい……、お前……」
次の瞬間だった。
夢の中の結衣:「いやああああ!やめて!やめて!やめてよ、みんな!やめてよ!やめて!やめてったらあああ!!!……やめてください……お願いです……お願いですから……」
夢の中の結衣は、匿っていた魔法を使えない者たちから、公衆の面前で、激しい暴行を受け、言葉では言い表せないほどの屈辱を味わい、着ていた服を破られ、裸のまま置き去りにされた。
(破かれる夢の中の結衣の服)
街を創ったあの日、夢の中の結衣の心は、希望に満ち溢れていた。魔法が使えない人々が、互いに支え合い、笑顔で暮らせる場所。それが彼女の夢だった。
暴行を受け、尊厳を踏みにじられた痛みは、肉体的なもの以上に、彼女の心を深く蝕んだ。信じていた人々の裏切りは、彼女にとって何よりも耐え難いものだった。「なぜ?私があなたたちのために作った街なのに……」何度も心の中で叫んだが、届くはずもない。
彼女の瞳から光は消え、代わりに深い絶望の色が宿った。それでも、心の奥底には、微かながらも生きることを諦めきれない何かが残っていた。それは、彼女がかつて抱いていた、人々の笑顔を見たいという願いの残滓だったのかもしれない。しかし、今はまだ、その小さな光を見つけることすら困難だった。
そこへ、一人の男が近づき、夢の中の結衣の髪を掴んで言った。「調子に乗るから、こうなるんだ。魔法都市のためだ。」彼女は、悟った。黒幕は、魔法都市だったと。
その瞬間、夢の中の結衣が作り上げた巨大な都市は、音を立てて崩れ去り、見るも無残な廃墟と化した。
(素足で、破られた服で肌を隠し、廃墟になったかつての幻想都市を見つめる夢の中の結衣)
夢の中の結衣が去った後、街には一時的な解放感と高揚感が漂った。男は英雄のように祭り上げられ、人々は自分たちの手で未来を切り開いたと信じて疑わなかった。
その後、わずかな力を振り絞り、夢の中の結衣は、荒廃した都市から逃げようとしたが、本能のままに牙を剥き、嘲笑う声と共に、無数に伸びてくる手に捕まり、彼女は、荒廃する都市に連れ戻され、長い間、そこで、奴隷のように強制労働させられた。
おじさん:「おら!股広げろ!クソガキが!」
白髪しろかみの少女:「はぁ⋯い⋯。」
(少女は、何度も何度も不快な接触を受け、その度に嫌悪感と疲労感に苛まれる。顔見知りの憎悪が、彼女の肌をぞっとさせる。少女は、屈辱と混乱の中で、自分が何なのか分からなくなる。)
おばさん:「休むんじゃないよ!さっさと腰振るんだよ!アバズレが!」
白髪しろかみの少女:「ごめ⋯ん⋯なさい。」
(少女は、言われるがままに身を動かす。自分の大切な部分が、他者を不快にさせないために使われる。『感じたくないのに⋯⋯⋯。』少女の意思とは裏腹に彼女の体は、何かを少女に伝えようとする。『いったい、私は、何をやってるの?』)
知らない男:「しっかし、いい女だな。エロい体しやがって。いっぱい、可愛がってやるからな!感謝しろよっ!?」
白髪しろかみの少女:「あ⋯りがと⋯う⋯ござい⋯ます。」
(まるで、値踏みするかのように、触れられる。『いったい、私は、何なの?』)
知らない女:「ほんと、このクソガキ、いいもん持ってんじゃん!まるで、そういうことをするために生まれてきたようだね!ハハハハハッ!」
(『親から、もらったこの体をそんなふうに言わないで⋯⋯⋯。』)
知らない老人:「しっかし、この年でこんな思いをするとは思ってもみなかったよ?」
(『私は、あなたのものじゃない⋯⋯⋯。』)
知らない老婆:「今のうちに、しっかり教え込んどきなよ!誰が!ご主人様かってことをね!ほら!口を開け!」
白髪しろかみの少女:「は⋯⋯い⋯⋯ご主人様。」
(少女の口の中に、不快な感触の何かが侵入してくる。それは、口の中で何度も擦れ、喉の奥深くまで届く。次の瞬間、苦く熱いものが少女の口の中を満たした。)
白髪しろかみの少女:「オェッ⋯⋯⋯。」
知らない老婆:「吐き出すんじゃないよ!、しっかり飲むんだよ!」
(ゴックン。。。それは、少女の中に侵入してきて、彼女を構成する体の一部となった。)
見たことのない子ども:「あのお姉ちゃん何やってるの?」
(『やめて⋯⋯⋯。見ないで⋯⋯⋯。』)
見たことのない子どもの母親:「償いをしてるんだよ?私達に酷いことをしたからね?」
男の歪んだ欲望が何度も何度も少女の中に押し寄せ、少女の体は、熱く溶けるような、言いようのない苦痛を少女に、現実として突きつけていた。
(『私が、いったい何をしたというの?』)
町の群衆:「いい気味だ!」
四つん這いになった少女の下半身は、熱く溶けるような悲鳴を上げていた。呼吸することすら許さないように、男の醜い欲望が少女の口を塞いでいた。
町の群衆:「このアバズレが!」
満足げな表情を浮かべる男の上にまたがり、男のために何かをするために創られたのかと思うほどに、その敏感なところは、自分の意思とは裏腹に何かを感じていた。
町の群衆:「たっぷり償ってもらうぞ!」
体の自由を奪われ、欲望の対象と化した少女の純粋な体は、それを否定することができなかった。
町の群衆:「お前には、無力ってものを教えてやる!」
優越感に満ちた表情を浮かべる人々の壁に囲まれ、少女に逃げ場はなかった。ただ、それを受け入れることしかできなかった。
町の群衆:「たっぷり、可愛がってもらえよ!」
肉体的にも精神的にも逃げ場のない異常な空間で、少女は、意識を必死に保とうとする。
町の群衆:「あ〜ぁ〜!。出すぞ!クソガキ!」
白髪しろかみの少女:「うぅ⋯⋯⋯。」
男達の憎しみが少女の中に注ぎ込まれる。
町の群衆:「ハハハハハッ!立派な女になったな!」
もはや、少女に希望を抱くという気力すら残っていなかった。少女の無垢だった体は、その初めてを人の皮を被った憎悪と悦楽を糧にする獣達に無残にも弄ばれ、目も当てられない無惨な状態と化していた。
来る日も来る日も、彼女を蔑む男達の相手をさせられ、彼女を蔑む女達からは、罵声と侮蔑の言葉を浴びせられていました。休むことも寝ることも許されず。
冷たい部屋の隅で、少女は首輪につながれ、気に入らない服を着せられていました。時々運ばれてくる食事は、いつもクリームシチュー。でも、それには少し変な、ねばねばした白い液体が混ざっていました。それが何なのか、少女にはなんとなくわかりました。それでも、生きるために、少女はそれを口にしました。体は嫌がりましたが、少女は必死に気持ちを抑えつけました。生きていくためには、そうするしかなかったのです。
少女は、体の奥から湧き上がる感覚に気づきました。でも、今はまだ我慢しなくてはいけません。そうしないと、怖い顔をした女の人たちに叱られてしまうからです。そして、その時は突然やってきます。じめじめとした暗い路地に連れて行かれ、まるで犬のように、そこで排泄することを強いられるのです。ご主人様は、冷たい目で少女の体を見下ろします。周りには、その瞬間を待っていたかのように、たくさんの人たちが集まり、じっと少女を見つめています。
男の人たちが去った後、少女の体はいつもと違うにおいがしていました。冷たい部屋の中、小さくなって座り込む少女に、ご主人様たちはバケツに入った冷たい水を何の気なしにかけます。部屋の寒さと水の冷たさで、少女はぶるぶると震えました。心の中で小さな希望を持とうとしても、すぐに厳しい現実が押し寄せてくるのです。
少女に、人権という言葉はありませんでした。
少女は、衰弱していく中、絶望と悲しみの中で、苦しみ続けました。
体は、何度も揺れ、気力は、遠のくばかり。男たちの汚濁の色が白皙の肌の白髪しろかみの少女の身体に深く刻み込まれ、消えない印を残していく。
男の不快な接触が、少女の中で何度も何度も繰り返される。肌と肌は触れ合い、口と口は何かを交わす。意識の逃げ場がない。男の生温かい温もりをその白い肌で感じながら、少女は何度も何度も何かを知る。自分の体は、誰でもいいのか?少女の体は何かを知りすぎ、熱を帯びていた。男は、少女の体を求め、一体化することをやめず、歪んだ関係を少女の体に刻み込み続けた。
「やめて…お願い…」と懇願する声は、何度も繰り返されるうちに、喉の奥で小さく震えるだけの音になった。
最初は抵抗していた体も、何度も男たちに踏みにじられるうちに、まるで抜け殻のように、ただただ重く、感覚が鈍くなっていった。
温かかったはずの白亜の床は冷たく、希望に満ちていたはずの空は、今はただの灰色に見える。
彼女の瞳から光は失せ、映るのは天井のシミばかり。かつて、人々の笑顔を守りたいと願った心は、今はひび割れて、冷たい絶望だけが染み渡っていく。
毎日繰り返される屈辱と暴力は、彼女の中で「なぜ?」という問いを何度も反芻はんすうさせた。しかし、答えは見つからない。ただ、自分が生きていることの意味さえ、分からなくなっていく。彼女の思考は、停止した。
彼女の透き通るような白い体は、男達のその歪んだ欲望をただただ無言で、もはや何も感じない抜け殻のように、男たちの熱を帯びた荒い息遣いを間近に感じながら、ただその動きを受け止めていた。(もう、何もかもどうでもいい…)心は遠い場所に彷徨い、目の前の光景は現実感を失っていた。それは、もはや彼女にとって、非日常では、なくなっていた。
「彼女を守ってくれるものはいなかった。 彼女の境遇を知りながら、誰一人として⋯⋯⋯。」
ある夜、また見知らぬ男が近づいてきた時、みゆきの心の中で、何かが音を立てて壊れた。抵抗する気力も残っていなかったが、その男の歪んだ笑顔を見た瞬間、これまで感じたことのない黒い感情が湧き上がってきた。
(少女の魂に最後のとどめを刺す男の歪んだ笑顔)
「もう、こんな世界は嫌だ⋯⋯⋯。」
それは、か細いけれど、確かに彼女の中から生まれた叫びだった。なぜ、自分だけがこんな目に遭わなければならないのか?なぜ、あんなに優しくしてくれた人々が、手のひらを返したように自分を傷つけるのか?
理解できない不条理への怒りが、静かに、しかし確実に彼女の中で燃え上がっていく。
「そうだ…こんな世界なら、いっそ壊してしまえばいい」
(魂の限界を超えた白髪の少女の叫び)
絶望の淵で、彼女は一つの考えに取り憑かれる。自分を傷つけた者たちも、傷つけ合う愚かな人々も、全てを自分の作り出した人間という名の人形に変えてしまえば、争いのない、優しい世界を作れるかもしれない。それは、歪んだ希望だったかもしれない。
しかし、彼女にとっては、生き残るための、最後の光だった。過去の優しい記憶を封印するのは、あまりにも辛い選択だった。でも、あの裏切りと痛みを忘れることができなければ、彼女はきっと壊れてしまうだろう。
「もう二度と、あんな思いはしたくない」
そう強く念じながら、彼女は、人形の世界を創造する決意を固めていく。それは、彼女なりの、世界への復讐であり、同時に、自分自身を守るための、最後の手段だった。
青白い光が彼女の体から放射状に広がった。
夢の中の結衣は、世界を改変した。
世界の民の魂は、白髪の少女が作った人形に全て封じ込められました。
本来の世界を愛していた者たちは、偽りの世界に閉じ込められ、愛する者がいた者たちは、それぞれ、バラバラに引き裂かれました。
長い長い夜が訪れます。
この人形の世界では、色々な人形がいます。人間、草食動物、肉食動物、虫、魚、鳥、植物など。そして、人形は自分の体を維持するために、他の人形を喰らう必要があります。本質的な意味で共食いです。
しかし、人形が人形を殺し続けたら、いずれ人形はいなくなってしまいます。なので、この世界では輪廻転生という呪いが稼働しており、人形が死んだとしても、人形の中にとらわれていた者たちの魂という名の本体は、また別の新しい、赤ちゃんという名の人形に強制的に押し込まれる仕組みになっています。こうして、質量保存の法則のような仕組みが成り立っています。
(地球という名の果実)
ある人形(元は優しい母親)が、飢えに苦しむ我が子である人形を見つめている。周囲には食料となる他の人形が見当たらない。彼女は、理性では決して考えられない「共食い」という選択肢が頭をよぎり、激しい自己嫌悪と葛藤に苛まれる。「まさか、私が…」と心の中で叫びながら、本能的な飢餓感に抗えない。
穏やかな草食動物の人形(元は平和主義の老人)が、肉食動物の人形に追い詰められる。かつての自分の知性は、死の恐怖を増幅させる。「助けてくれ…」と心の中で叫びながらも、人形の体はただ震えることしかできない。捕食された後、彼の魂は新たな赤ん坊の人形に押し込まれ、再びいつ捕食されるか分からない恐怖の中で生きていく。
小さな虫の人形(元は無邪気な子供)が、巨大な肉食動物の人形に一瞬で踏み潰される。理不尽な暴力と、あまりにも短い「生」の終わりは、この世界の無常さを象徴していた。
何度も捕食され、何度も新しい人形として生を受ける老婆の人形(元は献身的な看護師)。彼女は、過去の苦しい記憶は薄れつつあるものの、根源的な不安感と虚無感に常に苛まれている。「いったい、いつまでこの苦しみが続くのだろうか…」と、終わりなき輪廻に深い絶望を感じていた。
ある若者の人形(元は希望に満ちた青年)が、自分の死んだ恋人が、別の赤ん坊の人形として生まれたことを知る。しかし、過去の記憶を持たない恋人は、彼を見ても誰だか分からない。彼は、再会できた喜びと、愛する人が自分を忘れてしまったという悲しみに打ちひしがれる。輪廻転生は、彼にとって残酷な呪いであった。
ある人形(元は歴史学者)が、断片的な知識として、かつて本当の自分という存在がいたこと、そして、この世界が誰かによって作られた偽りの世界であることを悟り始める。しかし、その真実を他の人形に語っても、信じてもらえず、孤独感を深めていく。
かつて愛し合っていた夫婦が、別々の人形として生まれ変わり、互いの存在を知らずに生きている。ふとした瞬間に、懐かしいような、切ないような感情が湧き上がるものの、それが何なのか理解できない。人形の世界では、かつての人間関係は断ち切られ、人々は根源的な孤独を抱えている。
子供の人形たちが、遊びの中で他の人形を「ごっこ」で襲う。それは、生き残るための本能的な行動であり、無邪気な遊びの中に、この世界の残酷さが垣間見える。
ごく稀に、過去の優しい記憶を鮮明に思い出す人形が現れる。彼らは、この絶望の世界にわずかな希望を見出そうとするが、周囲の無関心や諦めに打ちのめされ、次第に口を閉ざしていく。
ほとんどの人形は、この歪んだ世界を当たり前のものとして受け入れ、感情を深く抱くことを避けるようになる。日々の生存に汲々(きゅうきゅう)とし、精神的な豊かさは失われていく。
さらに、長い夜が過ぎていきます。
人形の姿となった元白髪の少女は、草花が咲き乱れる庭園にいた。隣には、穏やかな笑顔の青年(彼氏の人形)が寄り添い、二人で摘んだ花を編んで花冠を作っている。風が優しく吹き抜け、花々の甘い香りが漂う。かつての絶望を知る元白髪の少女の瞳には、穏やかな光が宿っている。二人は言葉少なげだが、その間には温かい愛情が満ちている。時折、元白髪の少女は遠い空を見上げるが、その表情にはもう暗い影はない。
元白髪の少女は、人形たちがそれぞれの役割や知識を学ぶ学舎に通っている。かつての孤独を知る彼女だが、ここでは分け隔てなく、様々な個性を持つ人形たちと交流している。今日は、植物の世話をする授業で、生き生きとした緑の葉を優しく撫でている。隣の席の明るい少女の人形と微笑み合い、楽しげに言葉を交わしている。放課後には、他の人形たちと中庭で語り合い、笑い声が響いている。
小さな木造の家の中で、元白髪の少女は幼い子供の人形を膝に乗せ、絵本を読んでいる。子供の人形は、元白髪の少女の白い髪を小さな手で優しく撫で、無邪気な笑顔を見せる。傍らには、夫の人形が温かい眼差しで見守っている。夕食の支度が始まり、優しい香りが漂ってくる。かつての孤独な日々とはかけ離れた、温かく穏やかな時間が流れている。
戦争が起きた!
ある時、元白髪の少女の目の前には、惨劇が見えていました。
殺し合い、レイプ、略奪。この世の惨劇の全てが少女の目の前にありました。
(戦争)
(レイプ)
(人間という名の人形の箱庭という絶望の世界)
(略奪)
「なんで?なんで?なんで、みんなそんなひどいことするの?」
元白髪の少女は、記憶を封印していましたが、本能的に、感じていました。
「私は、魔法が使えるはず。」「私なら、何とかできる。」
その瞬間、元白髪の少女は、全てを思い出しました。
すると、目の前で、起こっていた惨劇がピタリと止み、みんなが元白髪の少女を見ています。
みんな言います。「さあ、元の世界に戻ろう。みんな、君を待っているよ!だから、早く、幻想魔法を解いてよ?私達は、あなたを責めたりしないよ?」
そこには、会ったこともない者達、元白髪の少女を陵辱した者達、元白髮の少女に罵声を浴びせた者達、元白髪の少女を陥れた者がいました。
元白髪の少女は、思いました。「あぁ。。。そうか。みんな、私を騙していたんだ。私が見てきたものは全部お前達の演技だったんだな?そうか。。。そういうことか。。。私が抱いた感情は、全て嘘だったんだ?そうか。。。そうか。。。ふざけるな!!!ふざけるな!!!ふざけるなよ!!!この、ゴミどもが!!!(怒)」
(怒り狂う元白髪の少女)
元白髪の少女は、怒りに身をまかせ、幻想魔法の力で、世界を海に沈めてしまいました。
ゴォォォゴォォォゴォォォゴォォォゴォォォ
ガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン
バキィバキィバキィバキィバキィバキィ
「津波だーーーーーーーーーーーーー!!!」
「早く!逃げて!みんな!早く!!!」
「ママーーーーーーーー!!!(泣)」
「早く!立って!逃げるのよ!!!」
「お姉ちゃ〜ん!(泣)」
ウゥーウゥーウゥーウゥーウゥーウゥーウゥー
「国民のみなさん!早く高台へ!高い所へ!!!避難してください!!!早く!!!」
ワンワン!!!ワンワン!!!
(巨大津波と街)
(逃げ惑う人々)
多くの人形が死にました。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
(絶望という名の暗闇に堕ちる人形)
長い長い夜が訪れます。
ある時、結衣は目を覚ました。いつもの、殺風景な一人暮らしの部屋。しかし、心には昨夜の夢の残滓が、鉛のように重くのしかかっていた。
(あの夢は……一体何なんだろう?)
学校へ向かう電車の中、結衣は窓の外をぼんやりと眺めていた。見慣れたはずの日本の風景が、どこか歪んで見える。夢の中の白亜の都市、そこで暮らす人々の笑顔と、最後に見た彼らの憎悪の表情が、交互に頭の中でフラッシュバックする。
(あれは、ただの夢じゃない……)
胸の奥に、これまで感じたことのない強い感情が渦巻いていた。悲しみ、怒り、そして何よりも深い孤独感。まるで、自分が本当にあの夢の世界に存在し、同じような経験をしたことがあるかのように。
学校に着いても、結衣の心は上の空だった。周囲の騒がしさ、友達の楽しそうな笑い声が、遠い世界の出来事のように感じられる。彼女にとって、現実は夢よりも曖昧で、夢の方がずっと鮮明で真実味を帯びていた。
放課後、結衣は一人、近所の公園のベンチに座っていた。夕焼けが空を茜色に染める中、彼女は夢の中の光景を思い出していた。あの美しい都市、そこで確かに生きていた人たち。そして、自分を裏切った彼らの顔。
ふと、結衣は自分の白い髪に触れた。夢の中の自分と同じ、雪のような白髪。赤い瞳もそうだ。これは、ただの偶然なのだろうか?
その時、彼女の脳裏に、夢の中で聞いた言葉が蘇った。「あなたが見ている世界。それは、本当に本当の世界ですか?」
結衣は、ハッとした。もしかしたら、自分の見ているこの世界も、夢と同じように、何かの力が作り出した偽りの世界なのではないか?
その考えが頭をよぎった瞬間、結衣の体に微かな変化が起こった。これまで感じたことのない、温かいような、懐かしいような感覚が、体の奥底から湧き上がってくる。それは、まるで眠っていた力が、ゆっくりと目覚め始めるような感覚だった。
結衣は、そっと手を握りしめた。長い白髪が、夕焼けの光を受けて、淡く輝いていた。彼女の赤い瞳には、これまで見られなかった強い光が宿り始めていた。
(もし、この世界が偽りなら……私は、どうすればいいんだろう?)
その答えは、まだわからない。しかし、結衣の心には、確かに何かが変わり始めていた。夢の中で感じた絶望と、そこに確かにあった人々の温もり。その両方を胸に抱き、彼女は、自分が生きるこの世界の真実を探し始めることを決意したのだった。長い白髪が、夕暮れの風に静かに揺れていた。
数日後、結衣は奇妙な出来事に遭遇するようになる。通学路で見かけるはずのない古い石畳の道が一瞬現れたり、カフェで聞こえてきた音楽が、夢の中の祭りで流れていたものと酷似していたり。まるで、夢の世界の断片が、現実世界に少しずつ侵食してきているかのようだった。
そんな中、結衣は学校の図書館で、古文書に関する本を手に取った。何気なく開いたページに、見慣れない文字と紋様が描かれていた。それは、夢の中の白亜の都市で見たものと酷似していた。
(これは……夢で見た魔法陣に似ている……)
結衣は、その紋様を必死に目に焼き付けた。もしかしたら、夢の謎を解く手がかりが、現実世界にも存在するのかもしれない。
図書館に通い詰めるうちに、結衣は古代の魔法や伝承に関する記述の中に、自分の髪の色や瞳の色を持つ者が、「異界の記憶を持つ者」として語られているのを見つけた。彼らは、異なる世界や時代の記憶を夢を通して垣間見ることがあり、時にその力は現実世界に影響を与えるとも書かれていた。
結衣と図書館
(異界の記憶……?私が毎晩見る夢は、本当に過去の記憶なの?)
結衣の中で、夢と現実が少しずつ繋がり始めた。あの美しい都市、そこで生きていた人々、そして最後に味わった裏切りと絶望。それらは、単なる夢物語ではなく、彼女自身の魂に深く刻まれた記憶なのかもしれない。
ある夜、結衣はいつものように夢を見た。荒廃した都市の瓦礫の中に一人佇む自分。冷たい風が吹き抜け、焼け焦げたような匂いが鼻をつく。夢の中の結衣は、深く傷つき、絶望に打ちひしがれていた。
その時、遠くから微かに、しかし確かに、誰かの声が聞こえた。「……なぜ……なぜ、こんなことに……」
それは、夢の中の結衣自身の声だった。その悲痛な叫びは、結衣の胸に突き刺さり、彼女の魂を激しく揺さぶった。
(私は……あの夢の少女……?)
夢から覚めた結衣は、いてもたってもいられず、夜の街を彷徨い歩いた。どこへ向かうべきかもわからず、ただ、心の奥底に湧き上がる衝動に突き動かされていた。
気がつくと、彼女は見慣れない場所に立っていた。古い鳥居が立ち並び、鬱蒼とした木々に囲まれた小さな神社。静寂の中に、時折、虫の声が聞こえるだけだった。
(ここは何だろう……初めて来たはずなのに、どこか懐かしい……)
結衣は、吸い寄せられるように神社の奥へと進んだ。本殿の前には、苔むした古い石灯籠が置かれており、その台座には、図書館で見た紋様とよく似たものが刻まれていた。
結衣は、震える手でその紋様をなぞった。触れた瞬間、彼女の頭の中に、強烈な映像が流れ込んできた。白亜の都市が崩壊する光景、人々の悲鳴、そして、空を覆う巨大な津波。
「ああああああ!」
結衣は、その衝撃に耐えきれず、膝から崩れ落ちた。洪水のように押し寄せる過去の記憶。自分が何者だったのか、そこで何が起こったのか。全てを理解した瞬間、彼女の心は、再び深い絶望に染まった。
(私が……あの世界を滅ぼした……?)
自分が犯した罪の重さに打ちのめされ、結衣はただただ涙を流すことしかできなかった。あの美しい都市、そこで穏やかに暮らしていた人々。彼らの笑顔は、今となっては、彼女にとって最も残酷な記憶だった。
しかし、絶望の淵で、結衣の心に微かな光が灯った。夢の中で感じた、人々の温もり。自分を信じ、優しくしてくれた人たちの存在。彼らは、偽りの世界の人形だったのかもしれない。それでも、彼らの優しさは、きっと本物だった。
(そうだ……全てが嘘だったわけじゃない……)
結衣は、ゆっくりと顔を上げた。夜空には、満月が静かに輝いている。彼女の白い髪は、月の光を受けて、一層白く輝いていた。赤い瞳には、再び強い光が宿っていた。
(私が、あの世界を終わらせたのなら……この世界で、もう一度やり直せるかもしれない……)
過去の罪を償うように、結衣は自分の力を使うことを決意した。異界の記憶を持つ者として、彼女に何ができるのかはまだわからない。それでも、彼女は前に進むことを諦めなかった。
長い白髪が、夜風に吹かれて静かに揺れていた。その瞳には、過去の悲しみと、未来への微かな希望が入り混じった、複雑な光が宿っていた。彼女の戦いは、まだ始まったばかりだった。
結衣