表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/21

第九場(会議室他)

登場人物

 藤堂淳一(25) 男 霊能力刑事 里見の恋人 

 島村茂(38) 新宿署捜査一係の警部、藤堂の上司

 矢島(55)  新宿署の警視

 柴田幸太郎(29)  新宿署の警部補

 警官1

 警官2

 その他、警官多数



〇新宿警察署・会議室

 会議室入口の「フリージャーナリスト殺害事件特捜本部」の看板をクローズアップ。

 長机が何列も並び、最前列に藤堂、島村の他、矢島など署の上層部が二列目以降と向き合って座る。

 二列目以降にも多数の警官が最前列の警官たちと対峙して座る。その中に柴田もいる。

 最前列の机の背後の壁際には巨大スクリーン、ホワイトボード、OHPなどが置かれている。


矢島「ただいまより、フリージャーナリスト殺害事件特捜本部の合同会議を始める。

 まず事件の概要を島村警部が説明する。(島村の方を見て)島村君、頼む」

島村「はい(立ち上がる)。捜査一係の島村です。

 本件は先月20日、フリージャーナリスト、沢崎喜朗四十三歳の自宅で計三名の遺体が発見された殺人事件です。

 被害者は沢崎の他、妻佐知子三十七歳、娘さくら十一歳。第一死体発見者は通いの家政婦です。

 鑑識の調べでは三人とも銃で撃たれて即死しています。

 沢崎の自宅住所は新宿区内ですが、詳しくは配布した資料の通りです」

矢島「これまでの捜査状況はどうなっているのかね」

島村「はい。沢崎は週刊誌に宗教団体オロチ神道の批判的な記事を二か月ほど前に執筆しております。

 それ以降、同団体から様々な嫌がらせを受けており、公安部がこの件に関して初動捜査をいたしました。

 公安では以前から同団体をテロ組織予備軍と想定して警戒体勢を敷いていた背景があります。

 われわれ刑事部は当初、公安から捜査に参加しないよう要請されていましたが、先週、今度はうちでこの件を扱うよう公安から再度要請を受けました。

 彼らでは捜査が進展しなかったと思われます」

柴田「ちょっと待ってください(立ち上がる)。

 これはもともと公安が管轄の事件ですよねえ。

 だったら、うちはこの事件に関わるべきではないんじゃないですか」

矢島「柴田君、まだオロチ神道が関与したとの証拠はない。

 それに殺人事件は刑事部の管轄だ。

 もしオロチ神道が事件に関与したことが判明すれば、その後で公安と合同捜査をしてもいいだろう」

柴田「しかしですねえ、矢島警視」

矢島「私が公安の上層部に話はつけておく。(島村の方を向き)島村君、続けてくれ」

島村「はい。こうした経緯で先週から初めて捜査にとりかかったわけですが、今回は藤堂巡査を特捜部に参加させました。

 ご存じの通り、藤堂巡査には霊能力があります。

 従来の科学捜査に霊能力捜査をプラスして事件を迅速に解決していきたい。

 こんなふうに考えております」

柴田「島村警部、ばかも休み休み言ってください。霊能力捜査なんて、そんな非常識がまかり通るとでも思ってるんですか」

矢島「柴田君、藤堂君を特捜部に入れたのは私の発案だ。そんなことより、これまでの捜査状況を藤堂巡査に説明してもらおうか」

藤堂「わかりました(立ち上がる)」


 島村、柴田はすでに座っている。

 巨大スクリーンに女性のモンタージュ写真がうつる。

 周囲から「オー」という声


藤堂「捜査一係の藤堂です。(巨大スクリーンを指しながら)このモンタージュ写真ですが、私が霊能力で念写した犯人の顔です」

      X      X      X

<映像挿入 前後の台詞と重ねながら>

――取調室

 犯罪現場の遺留品がテーブルに置いてある。

 藤堂、一眼レフカメラにキャップをつけ、自分に向けて何回がシャッターを押す。


――現像室

 赤色の空間。現像液のバットに浸した紙をピンセットでゆする。

 モンタージュ写真が出来上がる。

      X      X      X

警官1「犯人は女性ですか」

藤堂「いえ、男性です。普段、犯人は女装しています。おそらく犯人はゲイだと思われます」

警官2「この後は捜査をどう進めていく予定ですか」

藤堂「はい、とりあえず事件があった沢崎の自宅近辺をローラー作戦で聴き込み調査すべきかと思います。

 この写真を見せながら、何か情報がないか周辺住民に聞いてみるんです」


 周囲がざわつく。


柴田「気が遠くなる話じゃないか」

島村「柴田、だったら何か代案があるのか」

柴田「それにその念写の写真、本当に犯人に似ているのか疑問ですよ。もし似てなかったらローラー作戦が無駄足になる」

藤堂「まず予備調査ということで私一人で聞き込み調査をやってみます。

 こういう聞き込み調査をして意味があるかどうかを判断するためです。

 この念写によるモンタージュ写真が(モンタージュ写真を見せながら)有効かどうかも判断できると思います。

 何か進展があれば報告します。

 そのときは、みなさんにもローラー作戦をお願いします」

島村「待てよ(藤堂の肩を叩く)、おれも付き合うよ」


〇同・廊下

 柴田、公衆電話を見つけ、テレカを挿し込んで電話する。

柴田「サブローか。おれだ。少しまずいことになったぞ。

 おまえの顔が警察に割れてるんだ。

 沢崎の自宅近辺には来るなよ。刑事が聞き込み調査しに来る。

 何? 何だって? 

 もちろんおまえが仕留められるなら仕留めてもいい。

 それはおまえに任せる。

 相手は二人。

 二人とも消すのが面倒なら若い方だけねらえ。

 そいつは霊能力を持ってる刑事なんだよ」


〇ゲイバー「プルースト」

 サブロー、バーのスツールに受話器を耳にあてて座っている。

 サブローは女装し、先ほどモンタージュ社員とそっくりな顔。

 サブロー、不気味にほほ笑む。


 (つづく)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ