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第七場(オロチ神道本部教会他)

登場人物

 尊師(30) オロチ神道の教祖 信者から尊師と呼ばれている。

 綾瀬里美

 森泉

 黒木英恵

 信者たち、多数



〇オロチ神道本部教会

 薄暗いホール。

 複数の信者、流線型の核爆弾をホールの中央に運ぶ。

 尊師と信者たち、核爆弾を中心に円形に並ぶ。

 

尊師「(核爆弾を見ながら)これがわれわれオロチ神道の新たなるご神体だ」

信者1「ご神体にしては機械に見えますが、なんなのでしょう」

尊師「これは核爆弾だ」

 

 信者たちから「オー」という吐息が聞こえる。


信者2「どれくらいの威力があるんですか」

尊師「爆発したら東京がまるごとなくなる」

信者3「なぜこんなものがわれらのご神体になるのでしょう」

尊師「核爆弾は力だ。爆発させなくとも力はある。

 国どうしのもめごとにも核所持の有無は有力な交渉カードになる。

 だから力だ。力なきご神体は必要ない。鏡や彫刻には力はない。

 われらに必要なのは力を持ったご神体だ。(しばらく沈黙)

 これからミサを行う」


 尊師、刀を振り上げる。


尊師「天にましますわれらの神よ。われらに力をあたえよ」

信者たち「われらに力を与えよ」

尊師「みなとともに」

信者たち「尊師とともに」

尊師「みなとともに」

信者たち「尊師とともに」


〇カフェバー「ホロスコープ」

 里見、スツールに座り、ロイヤルミルクティーを飲んでいる。

 泉、ドアを開け、店内に入り、里見の隣のスツールに座る。


泉「あら、来てたの」

里見「(驚いて)泉さん」

声(英恵)「いらっしゃい」


 カウンターの英恵、二人に近づく。


英恵「何にする?」

泉「カクテルもらおうかしら。ブラディーマリーちょうだい」

英恵「昼からお酒?」

泉「まあね。ちょっと飲みたい気分なの」

英恵「何か嫌なことでもあったの」

泉「どうかしら。そう言えば、おととい英恵ちゃんの誕生日じゃない」

英恵「よく覚えてたわねえ」


 泉、ハンドバッグから水晶玉を取り出す。


泉「(水晶玉を見せながら)これ、誕生日プレゼントにもらってくれない?」

英恵「だめよ。これ高いんでしょう」

泉「実はある資産家のお客さんがこれを半年前にうちから購入したんだけど、返品したの。

 キャンセル料はいただいたんだけど」

里見「おいくらで売ったんですか」

泉「300万円ぐらいだったかしら」

里見「そんなに高いんですか」

泉「これ昔、パリのオークションで落札したんだけど、もともとこれは置物じゃなくて、高名な水晶占いの占い師が使っていたものなのよ。

 一説にはあのノストラダムスがこの水晶を使っていて、後輩の占い師に引き継がれてきたものらしいわ。

 ただ私のお客さんは置物として購入したんだけどね」

英恵「ノストラダムスって水晶占いやってたんだ」

里見「本で読んだんですけど、ノストラダムスは西洋占星術と水晶占いの二つで未来を予言していたらしいんです」

英恵「あら、ノストラダムスは里見ちゃんみたいにタロットは使わなかったのかしら」

里見「あの時代、西洋ではタロット占いはジプシーがやっていて、大衆向けの占いだったんです。

 一方、貴族など上流階級はタロットは軽蔑していて西洋占星術が占いの主流だったんです。

 当時、ノストラダムスは王侯貴族に召し抱えられる一流の占い師ですから」

泉「今では占星術とタロットの二つを使う占い師が主流じゃないの。

 占星術で大まかに占って、細かいところはタロットで占うって感じでしょう」

英恵「でもお客さん、なぜ返品したのかしら」

泉「この水晶を買ってから不幸なことが相次いだと言うのよ。

 ペットが死んだり、別荘が火事になったり、子供が階段から落ちて骨折したり」

英恵「そんな呪いの水晶ならいらないわ」

泉「宝石はもともと人間が選ぶんじゃなくて、宝石の方で持主になる人間を選ぶのよ。

 水晶に呪いのパワーがあるんじゃなくて、お客さんと水晶の相性が悪かったんじゃないかしら。

 水晶に選ばれた人間が所有したなら、その人は幸福になるはずよ」

里見「あの......もしよかったら、わたしにその水晶譲っていただけないかしら。

 もちろん、少しはお金を払います」

泉「あら、里見ちゃんがもらってくれるの。だったらただでいいわ」

里見「ただはいけませんよ」

泉「そうねえ、だったらブラディマリー一杯分、おごってくれる?

  それが水晶の料金」

英恵「でも里見ちゃん、どうしてこの水晶ほしくなったの?」

里見「何となくですけど、この水晶、わたしをオーナーに指名した感じがしたんです」


(つづく)

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