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シナリオ 天使たちの遊戯  作者: カキヒト・シラズ


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20/21

第二十場(コンビニ)

登場人物

 黒木次郎

 マリア

 店長

 信者たち多数

 室野和孝

 綾瀬里美

 藤堂淳一

 娘

 ハイヤーセルフ

 室野少年

 ディレクター

 平井学



〇コンビニ・駐車場(早朝)

 駐車場の中央に核爆弾を置き、オロチ神道の信者たちが周囲を囲んでいる。


黒木「みんな本当にいいのか。ミサが終わったら、これを爆破させる。

 みんな死ぬんだぞ」

信者1「覚悟の上です」

信者2「みんな今日のために尊師についてきました」


 店長、体を震わす。

 

黒木「(店長を見て)おまえはいいのか」

店長「(震えながら)ハルマゲドン・ミサに参加できるなんて光栄です」

マリア「今世でわたしたちはこれだけ功徳を積んだんだから、来世ではきっと裕福で幸せな人生が待ってるはずよ」


 室野が乗ったオートバイが走って来て駐車場に停まる。

 オートバイから降りた室野はヘルメットを脱ぎ、信者たちに駆け寄る。


室野「ばかなことはよせ」

黒木「……」

室野「今なら引き返せるぞ」


 店長、アサルトライフルで室野を撃つ。

 室野、地面に倒れる。



〇国道

――車外

 里見が運転する自動車が国道を走っている。助手席には藤堂。


――車内


藤堂「スピード出し過ぎじゃないか」

里見「早く東京を脱出しないと死んじゃうわよ」

藤堂「まさか」


――車外

 突然、自動車の遥か後方で大爆発が起こる。強烈な閃光と爆音。

 自動車は横転し、国道の隣の土手を転がり落ちる。


〇土手

 自動車は土手を転がり落ち、大きく破損する。

 ドアから血だらけの里見が這って出てくる。

 里見、外から社内を見て藤堂を探す。


里見「ジュンちゃん、生きてる?」


 額から血を流した藤堂、逆さになったまま意識がない。

 歪曲した鳥かご内のボタンインコが激しく羽ばたいている。

 里見、自動車からナップザックを引きずり出す。

 ナップザックを開け、水晶玉を取り出し、地面に置く。

 水晶玉に手を置き、目をつぶる。

 里見の幽体、肉体から飛び出し上空へ上昇する。


〇東京上空

 里見の幽体、東京の方へ飛んでいく。

 上空から見た東京の視界。

 核爆発ですべてが破壊しつくされている。


モノローグ(里見)「ひどいわ。みんな死んじゃったのかしら」


 里見、七色に輝く不思議な雲を見つける。


(以降、ハイヤーセルフはエコーまたはエフェクトをかけた里見の声)

声 (ハイヤーセルフ)「時空を超えるのです」

里見「あなたはだれ」

声 (ハイヤーセルフ)「私はあなたのハイヤーセルフ。

 時空を超えて、あのときに戻るのです。

 あのときに戻ってやりなおせば、歴史は変えられます」

里見「どうやって歴史を変えるの。どうやって時空を超えるの」


 里見の幽体、強力な力で七色の雲に吸い込まれる。

 雲の中は異世界の視界。


〇テレビスタジオ

 室野少年、テレビスタジオで屈んでスプーンをこすっている。

 なかなか曲がらない。

 いらいらしながらディレクターが室野少年に近づく。


ディレクター「ここのスタジオ、時間制でもうすぐ別の番組スタッフが来ちゃうんだよ。スプーンはまだ曲がらないの?」

室野少年「はい。今日は体調が悪いのか、気分が乗らないのか、スプーン曲がらないんです」

ディレクター「君、そんなことじゃ困るよ。なんとか予定した撮影時間までに間に合わせてくれよ」

室野少年「でも、どうしてもできなんです」

ディレクター「じゃあ、こうしよう。スプーンを床に押し付けて力づくで曲げるんだ。曲げたらそれを背中越しに投げる」

室野少年「そんなあ、それじゃインチキじゃないですか」

ディレクター「あのねえ、超能力が本物かインチキかなんて議論、われわれにはどうでもいいことなんだ。要は視聴率が取れること。

 いかさまでも何でもいいから、テレビを見た視聴者が喜ぶ動画をつくることが重要なんだ。わかるかな」

室野少年「......」

ディレクター「じゃあ、いいね。本番いくよ」


 里見、室野少年の前に突然現れ、水晶玉を差し出す。


里見「この水晶玉に手を当てて、目をつぶってみてくれる。あたしが気を送るから、スプーンが曲がるようになるわよ」


 室野少年、水晶玉に手を当て、目をつぶる。里見、室野少年の額に手かざして気を送る。


里見「いいわ。目を開けてみて」


 室野少年、目を開ける。里見の姿も水晶玉も消えている。


ディレクター「3、2、1、Q」


 室野少年、スプーンをこすると曲がり、それを背中越しに投げる。

 曲がったスプーンを静止画像でクローズアップ。


〇寝室

 寝室にはベッドが二つ。その一つに里見が寝ている。

 部屋の隅には鳥かごがあり、文鳥がいる。


娘「ママ、起きて(里見をゆする)」

  

 里見、寝ぼけまなこで上半身起き上がり、のびをする。

 藤堂、寝室に入ってくる。


藤堂「もう起きろよ。真昼だぞ」

里見「ここどこかしら」

藤堂「なに寝ぼけてんだよ。自分のうちだろう」

里見「……」

藤堂「かぜ治った?」

里見「あたし、かぜひいてたの?」

藤堂「だいじょうぶか。君はかぜをひいたんで昨日から寝込んだんだよ。覚えてないの」

里見「ジュンちゃんは警察いかなくていいの。刑事なんでしょ」

藤堂「えっ? おれ刑事じゃないよ。しがない会社員だ。

 昨日から有給使って休んでる。今日は土曜日だから最初から休日なんだ」


 里見、ベッドから起き上がる。

 部屋の隅のカラーボックスに置いてあったスポーツ新聞を取り上げる。

 一面トップの平井の顔写真をクローズアップ。競馬の騎手の恰好をしている。


(つづく)

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