第二場(霊感ジュエリー・イズミ他)
登場人物
森泉(28) 女 霊感グッズの宝石店「霊感ジュエリー・イズミ」を経営
山岸(35) 男 実業家
妙子(20) 山岸の愛人
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平井学(26) 男 水道局に勤めるダウザー
吉田(40) 平井の上司。水道局の課長。
その他、道路工事作業員多数
〇「霊感ジュエリー・イズミ」・店内
「霊感ジュエリー・イズミ」の看板をクローズアップ。続いて店内。
森泉(28)、山岸(40)とソファーで向き合って座っている。
山岸の隣には妙子(25)。
山岸「今から二年前になりますか。(手の指輪を泉に見せながら)これを購入させていただいたのは」
泉「ええ、山岸様のことはよく覚えておりますわ」
山岸「あのとき、うちの会社、5億円の借金を抱えてまして、この先どうなることかと思いましたが、この指輪をしてから運気が好転しましてねえ。いい取引先が三社も立て続けに現れたんです。
おかげさまで、うちの会社、V字回復したんですよ。借金を全部返しただけでなく、今では年商が100億を超えましてね。しかも安定して黒字を出せるようになりました。
ほんとにこの指輪、すごいですよ」
泉「実は指輪には魂が宿っているんですのよ。お客様が指輪を選んで買うのではなく、指輪の方で自分の持主を決めると言われておりますの。
山岸様の会社がうまくいったのも、山岸様ご自身が経営者としての才能と成功者としての大きな器があったからで、決して指輪のせいではございませんわ。指輪はただ、山岸様が持っている本来の力をご自身に思い出させただけ。そんなふうに私なら考えますわ」
山岸「これは恐れ入ります」
妙子「タカシ、あたしにも宝石買って」
山岸「まあ待ちなさい、妙子」
泉「奥様にも、お似合いの商品をラインナップしてございます」
泉、カタログを開いて山岸と妙子に見せる。
泉「当店ではブランド品ではございませんが、霊験あらたかな貴金属ばかりを取り扱っておりますの。世界中から、よい気のエネルギーを発する原石を見つけ出して、それを職人が加工しておりますの」
妙子「(カタログの商品を指しながら)タカシ、これ買って」
山岸「だめだよ。高すぎる」
泉「山岸様なら定価の30パーセントオフで販売させていただきますわ」
山岸「そうだなあ(カタログの商品を指しながら)このブレスレット、いいねえ」
泉「こちらは男性がおつけになってもお似合いの純金ブレスレットですのよ。金運というより愛情運が高まる効能がございます。独身の方ですといい結婚相手が見つかります」
妙子「既婚者がつけると愛人ができるんですか」
泉「ええ、男女とも異性を引き付ける力が倍増しますから、そういうこともございます。そういう意味では奥様にはあまりおすすめできませんが」
山岸「実はねえ、私の妻は今、自宅にいます。(妙子の方を見て)妙子は私の妻じゃないんです」
泉「えっ?」
〇屋外の道路
多数の作業員が道路工事をしている。
平井学(26)、ダウンジングロッド(L字型の鉄棒二本)を左右の手で持って歩いている。
平井は他の作業員同様、ヘルメットをかぶり、作業服を着ている。
平井、しばらく歩くと、ダウンジングロッドが左右に開く。
平井、ポケットからチョークを出し、道路に印をつける。
平井「吉田課長、見つかりました」
吉田、平井の側まで小走りに近づく。吉田もヘルメットと作業服姿。
吉田「もう見つけたのか」
平井「ええ。(道路の印を指して)このチョークの下を掘っていけば、壊れた水道管が出てくるはずです」
吉田「なるほど(周囲を見渡しながら)水道管の壊れた箇所はここだったのか。平井、よくやった」
平井「ところで吉田課長、今から早退していいですか。ちょっと用事があるんで」
吉田「用事ってなんだ」
平井「そのう.....(頭をかきながら)友人たちと飲み会っていうか......」
吉田「ばかもの。そんなことで仕事さぼるやつがあるか」
平井「そこをなんとか」
吉田「絶対、許さん」
(つづく)