第十九場(フィットネスクラブ他)
登場人物
室野和孝
スポーツ青年
森泉
中林
秘書
綾瀬里美
藤堂淳一
黒木次郎
マリア
店長
店員
強盗
信者多数
フィッチネスクラブの会員多数
〇フィットネスクラブ
室野、ランニングマシンで走っている。
ベンチプレス、エアロバイクなど、多数の人が運動している。
X X X
室野、スポーツバッグを持ち、もう片方の手で汗をタオルで拭きながら、部屋の隅のベンチに座る。
スポーツバッグから水晶玉を取り出し、膝に乗せる。
室野、水晶玉を見つめる。
スポーツ青年が側を通りかかる。
スポーツ青年「なにやってるんですか?」
室野「......」
スポーツ青年「水晶の中になにかうつってるんですか?」
モノローグ(室野)「伝統的な西洋の水晶占いは水晶玉の中に映像が映るのでない。
水晶を見つめて精神統一すると占い師の脳裏に映像が浮かぶ。
でもこんな説明しても、こいつにはわからないだろうな」
スポーツ青年、その場を去る。
X X X
<フラッシュバック>
明け方のコンビニの駐車場。核爆弾の周囲をオロチ神道信者たちが囲んでいる。
X X X
モノローグ(室野)「こいつはまずいことになりそうだぞ」
室野、ベンチを立ち上がり、スポーツバッグを持って立ち去る。
〇霊感ジュエリー・イズミ
黒塗りのリムジンが「霊感ジュエリー・イズミ」の前で停車する。
リムジンの中から中林と秘書が降り、店に入る。
泉、中林たちに気づく。
泉「いらっしゃいませ。(ソファーを指して)どうぞおかけください」
中林と秘書、ソファーに座り、泉は反対側に座る。
中林「この店の噂を聞きましてねえ。悪運がつく宝石なんか売ってますか?」
泉「悪運?」
中林「たとえば世の中のみんなが大災害で亡くなるときに、自分だけ生き残れるというか、そういう悪運です」
泉「……」
〇里見のアパート・夜
里見、テレビを見ている。
ドアホンが鳴る。
里見「はあーい(ドアの方へ行く)」
里見、ドアを開ける。藤堂が立っている。
藤堂「今夜、ここに泊めてくれないか」
X X X
藤堂、こたつテーブルで缶ビールを飲んでいる。
里見「どうして急にうちに来たの?」
藤堂「忙しくてさあ、たまたまこの近辺に寄ったんで里見のうちに来たんだ」
里見「忙しいって、どんな仕事してるの?」
藤堂「説明するのが難しいよ。東京中の空家や廃屋を探し回って、核爆弾を隠してないか探す仕事」
里見「えっ?」
里見、水晶玉をこたつテーブルに置き、手をかざして目をつぶる。
里見の幽体が肉体から抜け出し、天井を伝い、藤堂の肉体に憑依する。
モノローグ(藤堂)「あれっ、体が動かない。金縛りにあったのかな」
しばらくすると里見が目を開き、藤堂の体が自由になる。
藤堂「びっくりしたよ。なんか今、金縛りにあったんだ」
里見「それ、あたしが幽体離脱してジュンちゃんに憑依したからなの。
ジュンちゃんが今日、どんな仕事をしてきたかだいたいわかったわ。
テロ組織が東京を一発で破壊できる核兵器を持って逃げたんでしょう。
しかもテロのリーダーは黒木次郎さん」
里見、片方の目から涙が流れる。
〇コンビニ・駐車場
二台のキャンピングカーがコンビニの駐車場に入ってくる。
キャンピングカーから黒木、マリア他、オロチ神道の信者たちが降りる。
〇コンビニ・店内
レジの側で強盗が店員に銃をつきつけている。
店員はレジの中の金を強盗のバッグにつけている。
強盗「早くしろ。死にたくなければ、レジの金全部、バッグに入れるんだ」
カウンターの奥のドアが開き、アサルトライフルを持った店長が現れる。
店長、アサルトライフルで強盗を撃ち殺す。強盗、床に倒れる。
コンビニのドアが開き、マリアを先頭にオロチ神道の信者が入ってくる。
マリア「まあ、派手にやってくれたわねえ」
店長「すいません、死体は今かたづけます」
マリアの後ろにいた黒木、店長を不審そうに見る。
店長「(黒木を見ながら)これはこれは尊師ですか」
マリア「(黒木を見ながら)彼らは在家信者、われわれの仲間です」
店長と店員、コンビニの制服(上着)を脱ぐと、下にはオロチ信者の制服を着ている。
〇里見のアパート・早朝
暗闇。鳥かごの中のボタンインコが激しく鳴く。明かりがつく。
布団に寝ていた里見が起きる。隣には藤堂が寝てる。
里見「ジャンちゃん、起きて(藤堂を揺する)」
藤堂「どうしたんだよ(目をこすりながら)」
里見「もう行かないと。鳥はわかるのよ。人間より霊感が強いの。
東京がもうすぐ爆破されるわ。早く逃げましょう」
里見、タロットカードをシャッフルし、カードをこたつテーブルに置く。
死神、悪魔、塔のカード。
里見「やっぱりそうだわ」
(つづく)




