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シナリオ 天使たちの遊戯  作者: カキヒト・シラズ


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18/21

第十八場(廃屋他)

登場人物

 尊師

 黒木次郎

 春瀬

 矢島

 藤堂淳一

 島村茂

 中林文雄

 弁護士

 室野和孝

 竹山良一

 信者たち



〇廃屋

――屋外

 場末の空き地に木造の廃屋が立っている。空き地には二台のキャンピングカーが停車している。

――屋内

 広い土間。薄暗く、壁や柱は古びている。

 中央に核爆弾。その周囲を尊師と信者たちが囲んでいる。

 尊師、刀を高く上げる。


尊師「天にましますわれらの神よ。われらに力をあたえよ」

信者たち「われらに力を与えよ」

尊師「みなとともに」

信者たち「尊師とともに」

尊師「みなとともに」

信者たち「尊師とともに」

      X      X      X

尊師「そろそろここも警察が調べにくる。

 今日にでも引っ越さないとまずいだろう」


尊師、仮面を脱ぐ。現れた顔は黒木。


〇首相官邸・執務室

 テロップ「首相官邸」

 最初に首相官邸の建物全体をパンした後、執務室。

 中林、弁護士の二人と藤堂、島村、矢島、春瀬が向き合ってソファーに座っている。


弁護士「弁護士の川島と申します。

 本日の会見ですが、官房長官に対する人権侵害に該当する行為があった際にはしかるべき法的措置を講じますのでご注意ください。

 またご承知と思いますが、国会議員の不逮捕特権を今一度ご理解ください」

春瀬「重々、承知しております」

島村「今回お聞きしたいのは、竹山首相暗殺事件とフリージャーナリスト殺人事件の二件についてです。

 すでに実行犯は逮捕されておりますが、官房長官の関与についてお伺いさせていただきます」

中林「まあ待ちたまえ。司法取引というのはどうかね。

 私は逮捕されないばかりか一切処分を受けないで済むことを約束してくれたら、なんでもしゃべるよ」

矢島「もしこれらの事件の黒幕があなただった場合、せめて官房長官の職を辞任していただけませんか」

中林「断る。そういう条件ならなにもしゃべらんよ」

藤堂「では一つだけお答えください。今、オロチ神道は核兵器を持ってるんですか」

中林「……」

藤堂「イエスかノーのどちらかでお答えください」

中林「イエス」


〇新宿警察署・会議室

 長机が何列も並び、最前列に藤堂、島村の他、春瀬、矢島など署の上層部が二列目以降と向き合って座る。

 二列目以降にも多数の警官が最前列の警官たちと対峙して座る。

 最前列の机の背後の壁際には巨大スクリーン、ホワイトボード、OHPなどが置かれている。


春瀬「宗教団体、オロチ神道について最新の捜査状況を報告します。

 もともとオロチ神道は霊能者、室野和孝を保護する目的で設立されました」


 巨大スクリーンに室野、竹山、中林の顔写真がうつる。


春瀬「発起人は先般亡くなった竹山元首相。彼の知人の実業家たちから資金供与を受け、室野を代表に設立されました。

 ところが中林が、彼の指揮下にある中林コンツエルンの企業を使い、教団のスポンサー企業を買収しました。これにより、中林が実質的にオロチ神道のオーナーになったのです。

 中林は広域指定暴力団、林冲会の最高顧問を務め、実質的なボスと言えます。林冲会が麻薬ビジネスで儲けた金をオロチ神道を使ってマネーロンダリングさせる。これが中林の企みでした。

 宗教団体は非課税特権があり、オロチ神道は地下銀行の役割を果たすようになったのです。

 ところが代表の室野はこれが気に食わない。そこで中林と室野に確執が生まれました。

 中林はあるときヒットマンのサブローを使い、室野を殺し、別の人物が室野になりすましました。

 この人物が黒木次郎です」


 巨大スクリーンに黒木の顔写真が追加される。


春瀬「当初、黒木は中林とうまくやっていました。ところがしばらくするとこの二人の間にも確執がうまれたのです。

 実は日本政府が核兵器を保有しているという話はご存じでしょうか」


 会場からざわめきが起こる。


春瀬「ご承知のように日本には非核三原則があり、表向きには核兵器を所有してないことになっています。

 ところが全国の原子力発電所内に研究所があり、数10基の核兵器を保有しています。 

 これは国家最高機密で、歴代総理大臣以下、政府の上層部しか知りません。

 中林はこのうちの一基をオロチ神道本部教会に保管させたのです。これは中林が自分で自由に使える核兵器を所有したかったからだと自供しています。

 核を持っていても総理大臣でさえ、自分の勝手で使用できない。多くの高級官僚たちの許可が必要です。しかし実質的に自分の支配下にある宗教団体内に移管してしまえば話は別。いつでも好きなときに使えます。

 オロチ神道が持つ核兵器は東京を破壊するくらいの破壊力があります。核を私有して国内外の権力者を脅迫すれば自分のわがままが言える。たとえば総理にだだをこねて自分の便宜をはかってもらえる。中林はそう言いました」


 会場からざわめきが起こる。巨大スクリーンは中林と黒田以外の顔写真が消える。


春瀬「ところがここで黒木が中林に反旗を翻したのです。

 自分はいつまでも中林の手下でいるつもりはない。核爆弾を自分が所有した今、自分の方が中林に命令する立場にある。このように黒木が主張したのです。

 24時間以内に日本政府は主権を放棄し、自分をこの国の元首にさせないと核を爆発させる。

 あるときこのような脅迫を黒田は中林にしてきました。もちろん中林は無視し、黒田も結果的に核を爆破しませんでした。

 ですがこのことがあってから、中林は今度は黒木も室野のように教団から排除しようと考えました。

 竹山首相殺しの犯人を最初、黒木に仕立てようとミスリードしたのもこうしたわけだったのです。

 しかし本部教会から黒木を含む教団幹部と核爆弾が消えた今、黒木が本当に近い将来、核爆弾を爆破させる可能性は極めて高い。中林はそう供述しました。

 核爆弾は今、どこにあるのか。教団関連施設の他、都内の廃屋や幹線道路の車両点検など、われわれの人海戦術を駆使して徹底調査するしかありません」

藤堂「(手を上げて)ちょっといいですか」

矢島「どうした?」

藤堂「一つだけ補足説明をさせてください。実は室野和孝は生きています」


(つづく)


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