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シナリオ 天使たちの遊戯  作者: カキヒト・シラズ


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12/21

第十二場(カフェバー他)

登場人物

 ライダーマン(30) 謎のコスプレイヤー 

            仮面をかぶっているので素顔はわからない。

            また口元だけあいており、仮面をかぶったまま飲食可能。

 黒木英恵(32) カフェバー「ホロスコープ」のマスター

 女子高生1

 女子高生2

 綾瀬里美(24) タロット占い師 水晶占い師

 サブロー(27) ゲイのヒットマン

 森泉(28) 「霊感ジュエリー・イズミ」のオーナー店長



〇カフェバー「ホロスコープ」・昼下がり

 店内の客はまばら。

 大スクリーンに80年代の米国ポップミュージックのミュージックビデオが流れている。

 ライダーマンのコスプレをした男がスツールに腰掛け、ときどきコップの水を飲む。

 少し離れたテーブルで、女子高生二人がだべっている。


女子高生1「(ライダーマンを見て)あいつ、変じゃない」

女子高生2「ライダーマンでしょう。コスプレイヤーじゃないかしら」

女子高生1「ライダーマン?」

女子高生2「アニキが特撮オタクだから知ってるんだけど、あれって結構マニアックな人気キャラみたいよ」

女子高生1「今日、この近くでコスプレイベントなんかあった?」

女子高生2「さあ」


 英恵がライダーマンにカフェオレを持ってくる。


英恵「お待たせしました。カフェオレです。ごゆっくり」

ライダーマン「どうも(カフェオレを一口すする)」


 英恵が立ち去ろうとすると、


ライダーマン「ちょっといいですか」

英恵「……」

ライダーマン「黒田次郎君は今、この店にいますか?」

英恵「いえ、出てますけど」


 ライダーマン、英恵に名刺を渡す。


ライダーマン「黒田君が帰ってきたら、私に電話するようお伝えください。電話番号は名刺の裏面に書いてあります」


 英恵、名刺をしげしげと見る。

 名刺の文字「コクプレイヤー ライダーマン」をクローズアップ。

 ライダーマン、カフェオレを一気に飲むと、お金をテーブルに置いて立ち上がる。


ライダーマン「ごちそうさま」


 ライダーマン、店を出る。

 大スクリーンが突然、テレビニュースに変わる。


〇テレビ画面

 首相官邸の外。複数の報道陣がせわしく動きまわっている。

 テロップ「竹山首相が死去」

 画面中央にアナウンサー1。

 

アナウンサー1「緊急速報です。内閣総理大臣の竹山良一首相が死亡しました。

 竹山首相が首相官邸内で血だらけで倒れているところ、職員が発見し、救急車で搬送しましたが、病院に着く前に出血多量で死亡が確認されました。

 竹山首相は首の頸動脈など数か所をジャックナイフで刺されており、官邸に忍び込んだ何者かが危害を加えたものと推定されます。

 この事態を受け、中林官房長官が暫定的に首相を代行することが決まりました」


 画面が切り換わり、中林が記者会見をしている。


中林「竹山首相が何者かに暗殺されました。

 日本政府転覆ともとれるこのような暴挙は、決して許されるものではありません。

 警察には一刻も早い犯人逮捕を強く要請するとともに、政府としましては真相解明と再発防止に全力で取り組む所存です」


〇原宿・ホコ天

 里見、タロット占いの屋台を出している。

 客はだれもいない。

 女装したサブロー、ふと屋台の客用折り畳み椅子に座る。


サブロー「占ってもらえるかしら」

里見「かしこまりました」


 里見、タロットをシャフルし、ケルト十字にスプレッドする。

 里見、暗い面持ちでしばらくカードを眺める。


サブロー「どうなのよ。あたしの運勢」

里見「そうですねえ。お客様は今、人生の難しい局面を迎えているのではないでしょうか」



〇「霊感ジュエリー・イズミ」・店内

 英恵、店内に入ってくる。

 

泉「あら、いらっしゃい。今日はカフェバー休みなの?」

英恵「お店は休業にしたわ」

泉「まあ」

英恵「それよりも、この前、誕生日プレゼントもらわなかったからっていうわけじゃないんだけど、ほしいものがあるの」

泉「なにがほしいの」

英恵「実は、人生に疲れたときに元気が出るというか、自殺したい人に前向きに生きる活力を与えてくれるというか、そういう霊感グッズってない?

 もちろん、そんなに高いものは買えないけど」

泉「そうねえ。だったらこれがいいわ(泉、自分がしているネックレスをはずし、英恵に差し出す)」

英恵「だめよ。これはあなたのものでしょう」

泉「中古だから安いのはこれだけよ。後は50万円以上するわよ」

英恵「それにこれは女性向けでしょう」

泉「男性向けの商品探してるの。もしかして次郎さんにプレゼント?」

英恵「まあね」

泉「装飾品としてだったら、これ男性向けと言えないけど。男がこれをつけても元気は出るわよ。

 それにどうしたの。次郎さんになにかあったの」

英恵「まあねえ......」

泉「私たちエスパラダイムの仲間じゃないの。隠し事はなしよ」

英恵「実は私たち今、別居してるの」

泉「えっ? ケンカしちゃったの? 旦那さん不倫でもしたのかしら」

英恵「そんなんじゃないわ。実は竹山首相が暗殺された日の夕方、主人が真っ青な顔で首相官邸から帰宅したの。

 主人の仕事は知ってるでしょう。首相に雇われて、占星術で政治のコンサルをするっていうか、そんな仕事。この法律を作ったらどうなるかとか、この政策を推進したらどうなるかといったことを星占いで占う仕事ね。

 あの日、主人は『自分は命をねらわれてる』って繰り返すの。身の安全が確保できたら戻ってくるけど、それまで秘密の場所に潜伏するって言って家を出たの」

泉「秘密の場所?」

英恵「それはあなたにも言えないわ」

泉「ともかく、このペンダントもっていきなさいよ」


(つづく)

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