一話
とりあえず、包み隠さず、己の状況を説明してみようか。どうせ嘘ついたってこの人にはバレそうだ。
そんな感じがする。
「気がついたら道のど真ん中に立ってたんだよ。それ以前の記憶は無ぇんだよなこれが!」
我ながら端的でわかりやすい現状報告が出来たと思う。褒めて欲しい。
まぁ、でも信じて貰えないだろうなとも思う訳で。
「そうですか。」
白髪目隠し少女が言った。
「ん?」
流石に俺は困惑せざるを得ない。そうですかの一言で済む話なのか、俺の記憶喪失は。
白髪少女は俺の困惑を察してか、おもむろに口を開く。
「……この世界ではいつ何が起こってもおかしくないのです。あなたがどの程度記憶を失っているか解りかねますが、我々治安維持隊があなたの面倒を見る事になるでしょう。」
傍らに居たモノクル男が続けて言う。
「まぁ、そもそも僕たちは困ってる民間の方々を保護する組織だからね~。君みたいに記憶喪失の子も多くはないけど居ない訳でもないんだ。とりあえず僕たちと一緒に行動すれば安心だよ~!」
どこか間延びした口調だ。この人らと行動すれば安心だと言うが、そもそも
「あんたらは俺に何をしてくれるって言うんだ?」
素朴な疑問が口から零れていた。
普通に考えて記憶喪失の男一人面倒見るのは大変だろうし、俺自身この人らを信用していいのか判断がつかない。
圧倒的にこの世界の知識、常識が欠如しているのだから下手に動けない。
モノクル男が応える。
「ん〜、まずはココが何処かーとかぁ、どういう生き物が居るのかーとかぁ、そういう一般常識を教えてあげるよ~。それが記憶喪失の人にはよくやる対応かな~。」
マジか。俺が今1番必要な情報ではないか。いやほんとに助かるなそれは。
団子屋のおばちゃんが俺の背中をバシバシ叩きながら、
「治安維持隊の人に面倒見てもらえるなら安心さね!」
と豪快な笑顔で告げる。
おばちゃんが言うなら本当に安心なのだろう。
あんなに美味い団子を作るおばちゃんが悪事の片棒など担ぐ訳が無い。きっとそうだ。
だから、
「んじゃ、世話になってもいいか?」
俺は軍服の2人組に問いかけた。
「もちろんです、責任を持ってあなたを保護します。」
「もちろんだよ~。これからよろしくね~。」
2人はほぼ同時に言った。
あぁ、この人らならきっと一緒にいて大丈夫だろう。
「よろしく頼む!」
差し出した両の手の平は行き場を失うこと無くモノクル男と白髪少女が片方づつ握り返してくれた。
なんとなく、ほんとうになんとなく。俺はこの人らと長く一緒に居るんだろうなと、そんな予感がした。




