地球代表
「あれ……ここは」
目覚めた彼は思わずそう呟いた。ベッドから身を起こし、周囲を見回すが、天井から壁、どこを見てもやはり記憶にない場所だった。
『ここは、我々の宇宙船の中です』
「えっ、誰……?」
突然、頭の中に直接響くような声が聞こえた。その直後、部屋の壁の一部が静かにスライドし、彼は反射的に目を向ける。
「宇宙人……?」
『はい』
壁だと思っていた部分は扉だったらしい。そこから現れた宇宙人たちは、穏やかな微笑を浮かべながら彼を見つめて、言った。
『これは、テレパシーのようなものです。少し違和感があるかもしれませんが、すぐに慣れると思います』
「そう……それで、どうして僕はここに?」
『どうか落ち着いて聞いてください』
『地球は滅びました』
「え!?」
『巨大隕石の衝突によるものです。残念ですが、避けられませんでした』
「そんな急に、あり得ないでしょう……。隕石が地球に接近していれば、事前に観測されているはずだ。でも、そんな話は全然……」
『ええ、地球への隕石衝突が起きたのは、あなたを保護してから一年後のことです』
『あなたは一年間眠っていたのです。我々の星の規定により、移送中はそのような処置を取らなければならないとはいえ、申し訳ございません』
「一年……その話を信じるとして、じゃあ、地球はもう……でも、保護とは?」
『我々の星で議論した結果、地球の生き物をいくつか保護することに決めました。その中で、あなたは人類の代表として選ばれたのです』
「代表? 他の人は? まさか、僕一人だけってことはないですよね?」
『あなた一人だけです。残念ながら、我々の法律では知的生命体を繁殖可能な状態で保護することは禁じられているため、男女セットでの保護はできませんでした』
「……それにしても、なんで僕を? 地球にはもっと保護する価値のある人間がいた思いますけど」
『ご謙遜を。あなたは地球で一番の人気者だったじゃないですか』
『ええ、人々があなたを敬い、熱狂している様子を見ましたよ』
「見た? ああ、もしかしてニュースで僕のことを見たんですか? でも……」
『そんなに気負わなくても大丈夫です。あなたはこれから我々の星の博物館に移送されます。そこで地球の文化や歴史を訪問者に伝える役目を担っていただきます。あなたを客人として扱い、もちろん、外出も可能です』
『もう間もなく到着します。さあ、こちらへどうぞ。窓から我々の星をぜひご覧ください』
そう言って、宇宙人たちは彼にまた微笑みかけた。
彼は口角を上げてみるも、どうしても言い出せなかった。
自分は確かに地球人だが、史上初、宇宙ステーションで生まれ育ち、そしてついこの間、地球に初めて降り立ったばかりの、ある意味『宇宙人』だということを……。