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あの、お味噌汁




「あの…このお部屋は…?」

「ふふっ。わたくし専用のキッチンですの!普段は料理人コックのお料理をいただいていますが、たまーに自分で作りたくなるのです。そんなに上手くはありませんが…」


お部屋には流石というか、たまにしか使われないはずだが立派な台所が備え付けられている。

銅の調理器具はピカピカで、部屋の何もかもを反射している。

長机と椅子も何脚かあり、都会の一人暮らしの部屋より快適であろう。

大きな窓から月光が差し込み寂しい気分になる…


「さてと…実は、味見をしていただきたいものがありますの」


ララー公妃が鍋から液状のものをスープ皿によそう。

スープ皿をわざわざ私の元まで運んでくださった。





なんだか、とっても



懐かしい香りがした





「お味噌汁、というものを作ってみました!」



そうだ。


これはまごうことなき、味噌汁だ…



「貴重な文献にこのレシピが載っておりましてね、お味噌も…本来なら勇者様方にお出ししてはいけないのですが…」



霧のようにお味噌が踊り、お豆腐のような四角い白いものと、海藻が漂っていた。



「ぜひ、わたくしに感想をお聞かせくださいませ!」



熱すぎるスープ皿のせいで指が火傷しそうだったが、もう今の私にとってはどうでもいいことだ。

美しい白いお皿の縁に、唇を押し付け

一口、また一口、飲んでいく。



「う……っ……うっ……」


頬からしょっぱい液体が流れ、お味噌汁の味と混ざってしまう。


「…………まず、温度が高すぎます…。この温度だと……味噌の酵母が死んでしまって、お味噌汁の健康効果が少なくなります…」


「そうなのですね!文献にはそこまで書かれていなかったので、勉強になりますわ!」


「………あとは……ちょっと味が薄いかもしれません……これは好みもありますが…もう少しお味噌を溶いてもいいかもしれません…」


「お味噌って、ちょっとの差で味が変わってしまうのですよね…勉強になりますわ!」





豆腐っぽいものは硬めで木綿豆腐っぽいが、我が家では絹ごし豆腐だったし

お出汁も単調で、我が家の味ではない

海藻はよくわかんない、異世界の海藻っぽいし…





「……っ、美味しい、です……」





「良かった…美味しく作れたみたいですわね」




涙が次から次へと湧いてきて、もう止められなかった。



この世界に来て、初めて泣いたかもしれない。


周りはやるべきことを粛々とこなし、最年少のココアちゃんですら文句の一つも言っていないのに…

スキルやら、職業やら、なにもないと言われている私ごときが弱音を吐いたり、泣いたりなんてできるわけがない…



嘔吐く《えずく》ように、体を大きく震わせて汚く泣く私からそっとお皿を取り上げ、ララー公妃は抱きしめてくれた。


「ぶ、ふくが……きれい、な、ぶくが……」

「いいんですの。それに、同じようなものが何枚もありますもの」


まったく、この人は泣かせたいのか、笑わせたいのか…






———————————————————






「ん!!めっちゃ美味しいっス!この棒にくっついてるのはなんっスか?」

「それがきりたんぽでごわす!お米をすりつぶして、棒につけて焼くんでごわす!」

「お米ってこんな風にも食べられるんっスね!面白いっス!」



「……ハルちゃん、大丈夫でごわすか?口に合わなかったでごわす…?」



「…ん、あ、すっごく美味しいよ!なんかちょっと、懐かしい記憶を思い出してて…」

きりたんぽ鍋にはお味噌入ってないけど、なんか故郷の味付けを食べると思い出しちゃうんだよな…


「美味しいと言ってもらえて、安心でごわす!はやく魔物のお肉も、鍋にしたいでごわすね!」

「そうだね…!まず、解体してもらえる人を探さないといけないよね…」


「ん?解体っスか?知り合いに何人か、できそうな人いるっスよ!」

きりたんぽを頬張りながら、アンちゃんはさも当たり前かのように貴重な人脈を教えてくれる。


「さすがアンちゃん!やっぱり持つべきものは便利な友人だね!」

「嬉しいっス!


 って、もっと別の言い方ないんっスか?!」




個人的にはこの物語を考えた初期からこのシーンは描きたいと思っていました。

地域や家庭によってお味噌汁の味も全然違うですよね


私は絹ごし豆腐とあおさのお味噌汁が好きです!


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