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ブランドの宣伝

「ほんで乾燥させたもんを使用用途に合わせて厚さの調節と染色をして鞣しの仕事は終わりだ。どうだ、面白かっただろ?」

「すごい大変そうな作業の連続でした…でも、なんだか革がもっと愛おしくなりました…!」

「そうだろ、そうだろ!こんなに良い革を放っておいたなんて、もったいねーよな」

「!!!そうですよね!もったいないですよね!!!」

「嬢ちゃん、またおもしれー素材あったら1番にわしの所に持ってきてくんねーか?」

「もちろんです!こんなに丁寧に真剣に作業してくれて、しかも前例のない魔物の素材を活かしてくれるのは本当にありがたいです!」


「あんた…ド・リュミエールさん、はどうだったのよ…?」

ルルー様は軽く握った手の人差し指を顎の下に置き、美しい斜め横の表情で熟考してから微笑んだ。

「ものづくりに対して興味が湧きましたわ。今までは消費する側でしたので…

あの、ハルカ様。少しお話ししてもよろしいでしょうか?」

「…!!はい、もちろんです!」


私とルルー様、そしておまけでついてきたヴァネッサの3人で工房の談話室に戻って、スツールに腰掛けていた。ルルー様は元のクリーム色のロングワンピースに着替えられた。

「ハルカ様、前に拝見したキャリーケースを出してもらってもよろしいですか?」

「はい!もちろんです」

私は即座にマジックボックスから魔石付きキャリーケースを取り出した。彼女はそれを手に取り、じっくりと観察したり、コロコロと引っ張ってみたりしていた。


「ねえ、社長…!あの超お嬢様と何の話してたのよ!」

ヴァネッサが耳打ちしてきた。

「うちの会社の保証人になってってお願いしてるの」

「ああ、パトロンになってって話ね」

あなたが言うと別の意味に聞こえるんですが…

「じゃあちゃっちゃとその話したら良いじゃない」

「いやー…1回断られてるんだよね」

「はぁー?あんたその程度で諦める奴じゃないじゃない!!」

「そうなんだよね…だから今はちょっとアプローチを変えようかと思ってて…」

「じゃあ早くやりなさいよ!!」

「そう簡単に言うけどさぁ…」

私もこの頭脳をフル回転させながら策を練っているつもりなんですよ…


「これを販売するとして、お店はどちらにするつもりですの?」

「あー…そうですね、まだ決まってはいなくて…」

「5番街?それとも3番街かしら。それなら大使館通りとも近いですし、貴族や王族向けのお店も多いですわよ」

「あー…っはは」

「もしかして社長、何にも知らないの???」

「えーっと、ここ数ヶ月忙しくて…」

「はあああああーーーーーーー!?どうするのよ!!在庫だけ膨らむじゃない!!売って、儲けないと、私の借金が…」

「ごめん、すぐに考えるから…!!あ、でも在庫は私のマジックボックスに入れれば…」

「そういう話してるんじゃないって、社長が1番わかってるでしょ!!!!!」

「ごめんなさいー!!!」




あー…私ってダメダメだ…

こんな醜態を晒して、ヴァネッサちゃんもだけどルルー様の信頼が簡単に崩れてしまうかもしれない…

お店を始める前にこんなに躓いてて、やっていけるのかな…




「保証人、お受けします」


「え…?」


「ですから、保証人のお話をお受けいたしますと申し上げております」


「…!!!」


私の心臓は電気ショックを受けたように鼓動し、頬に血流か急激に回るほど感激した。

「社長やったじゃない!!!」

「その、本当ですか?保証人になって頂けるんですか!?」

やった…!これで商人ギルドからの融資の条件が揃った…!


「ええ、しかし、いくつか条件があります」

そうだよな…。善意だけで保証人を引き受けてくれる人なんているわけない。それはきっと詐欺師か何かだろう。

「…その条件をお聞きしてもよろしいですか?」

「1つ目、わたくしにも経営に口出しする権利をいただけますこと?

あなたのアイディアや理念は面白いですし、共感いたしました。

しかし、心配な点もありますわ」

「それはごもっともですね…」

「まあ、購買層と近い感覚を持つ人がいるのは心強いわよね」

「2つ目は、これは1つ目とも関わっているのですが、株式を発行してくださいませ。それの半分をわたくしが買いますわ」

「それは、保証人とは別に株を購入してくださる、ということですか?」

「そういうことですわ。株主として経営に口出しをし、利益を得るということです」

「なるほど…たしかにそれだとルルー様にも、会社にとっても利点はありますね」

「3つ目、は…その…」

「?」

先ほどまで堂々としていたルルー様が急にモジモジしはじめた。初めてそのような姿を見たような気がする。

わたくしのこの『顔だけの三女』を、ブランドの為に活かしていただけませんこと?」「…!!!いいんですか!?それは、モデルをしてくださるということですよね?」

「はあ?モデルって何よ」

「ブランドを宣伝する為に、絵画なんかの題材になってくれるってことだよ!ルルー様なら社交界でも有名だし、その美しさでみんなの興味を引けるはず!!むしろこっちからお願いしたかったくらいですよ!!!」

「何よそれ!!!それは私が決めることなんじゃないの??」

「それは、そうかもだけど…でもこの会社の社長は私だから、最終決定権は私にあるはずだよ?」

「私はこのブランドのデザイナーよ!!!宣伝の方法なんかも美術的な観点が必要なはずよ!!!」

「じゃあ、ヴァネッサちゃんはどんな宣伝方法がいいと思う?」

「………今すぐは出てこないけど…でも私は嫌!

だって、なんか気に入らないんだもん!!!」


なんじゃその理由は…


「わかりましたわ。それでは少し時間をいただけますか?わたくしがこのブランドのモデルとして相応しいと、証明してみせますわ…!」

「ふんっ。じゃあそれまでに私もあんたより良い宣伝方法考えるから…!!」



図らずしもこのHARUMOTTOのブランドの明暗を分ける(かもしれない)宣伝対決が始まった…。



さあ、なんとかハルカのブランド資金の目処が立ちそう…?になってきましたね!

作者自身もこの対決をドキドキしながら書いています!


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ぶどう味

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