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香水



「フェ、フェロモン…!?」

「そうニャ。だから発情期になるとモテたい獣人族がふりかけてるって感じニャ!」

「人間種はフェロモンというより魅力を増すためにつけてるって感じっスね!」

「私の世界では香水が流行した理由が、お風呂に入っていない香りを誤魔化すため…って話らしいよ」


文化圏や種族によって香水の役割は違うらしい…。


「その、フェロモンを増すというより人間を魅力的にさせるって感じでムスクスフィアの香水とか調合できる?」

「できるニャ!ちょっと待ってて欲しいニャ!」


ニャアは両手いっぱいに様々な種類の瓶を持ち寄り、すぐに調香を始めた。

空の瓶に一滴一滴ずつ液体を入れたり、不思議な形の鉱物を削って入れたりしていた。

時には一滴にも満たない少量の成分を入れていたりした。

かわいいニャアの横顔は、やはり職人のものになっていた。


しかしすぐに

「2人とも、匂いが邪魔ニャ!!」

と追い出されてしまった。

もっと彼女の真剣な仕事ぶりを見ていたかったのだが…。






アンちゃんと雑談をしていたら深夜になった。

積もる話は多く、ニャアの大活躍振りや2人の眠り姫の目覚めとココアちゃんの葛藤。そこから学院でのプイキュアショーまで。

アンちゃんも『勇者庵』での人生初バイトの苦労話など話してくれた。黙々と単純作業が続く仕事は向いていないとの学びを得たそうだ。やっぱり彼女の魅力はその人柄とトークスキルにあるのだろう。そして仕事モードの剛士くんはやっぱり怖かったらしい。(無料案内所事業はアンちゃん個人的にはお仕事に当てはまらないらしい)

当初のブランド立ち上げからだいぶ逸れてしまったかもしれないが、まあこれも私や友人達にとっては必要な出来事だったのではないか、と思うことにした。

夜だし暇なのでお風呂を借りようかと思ったが…今はニャアのシャンプーやらボディーソープを使いたくなかったので湯船に浸かるだけにした。途中からアンちゃんもお風呂に乱入してきて、バシャバシャとお湯をかけられたりして散々な目にあった…。日本人の私は、ゆっくり落ち着いて湯船に浸かることが脳裏にインプットされているのだ。


なんとか温水プール(お風呂)から上がったタイミングでニャアが工房から戻ってきた。単純な形の瓶にうっすらと魔石の輝きを放っている液体で満たされている。

「さあ!これがニャアの初めての香水『ニャアのスペシャルブレンド香水第1号』ニャ!」

「相変わらずネームングセンス0っスね!!」

「たしかに!あとでアンちゃんに名前つけて貰おう!…では、ちょっと失礼して」


私は瓶の蓋を取り、そこからゆっくり香りを嗅いだ。


「……!!!!これは…!!!!!」

鼻を突き抜ける、神秘的な香り。少しクールなフローラルの香りと透明感を持ち合わせていた。夜につけると優雅さや色っぽさを演出できそうだ。ムスクスフィアの『人を引き寄せる香り』が上手いこと活用されていると思う。

私がその香水を堪能する様子を見ると、ニャアは子猫のように無邪気な笑顔を浮かべ、しっぽを左右にユラユラと揺らした。

「すごいいい香りっス!これはご婦人に受ける香りっスよ!」

「そうだよね!大人な女性につけてほしい香りだと思う!」

「トップノートは華やかで爽やかな香りだけど、時間とともにまた変化していくニャ!」

「え!香水って香りが変化するの!?」

「そうニャ!

…ハルニャ、香水作って欲しいって頼んだのに、そんなことも知らニャいのかニャ?」

「この間?まで高校生だったんだから、香水なんてつけたことないんだよ!」


私とアンちゃんはハンカチに数プッシュ『ニャアのスペシャルブレンド香水第1号』をふりかけ、ミドルノートとラストノートの香りも堪能した。ミドルノートはムスクスフィアの群生地のような森林の静寂さを感じられ、さらに人を引き寄せるような感覚があった。ラストノートは綺光石きこうせきと呼ばれるキラキラと光る鉱石が時間経過で溶け出し、その魅惑的でスモーキーな香りがムスクスフィアの誘引性と相待って、さらに大人な香りへと進化した。


「これ、絶対売れるよ!!!」

「そうかニャ?…ハルニャが言うならそうかもニャ」

大型猫はスリスリと己の天然香水を擦り付けてきた。

「あとは、ネーミングと瓶のデザインと生産ルート…はニャアがしてくれるかな?」

「えーー、ニャアは働き詰めにはなりたくニャいニャ!!!」

「うーーーん…そうだよねーーー………」

「あとムスクスフィアの在庫も潤沢にあるわけじゃニャイよ」

「あーーー、そうだよねーー!…うーん、でも逆にその希少価値こそハイブランドにもってこいなんじゃないかな?」

「たしかにそうかもっスね!なかなか手に入らない逸品だから、みんなが欲しがる。いやあ、ハルカちゃんは良いところに目をつけるっスね!!」

「へへ…そうかな?ありがとう」



ラストノートの芳醇な香りの中、私は未来への期待に溢れていた。




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