プイキュアショー
これは2人の女の子と1匹の、プイキュアショーなのだ…!
私は葵さんに口パクで「プイキュア?」と確認すると、縦方向の返答を貰えた。
急にきなこが大人しくなったのは、これのせいだったのだろう。
「な、なんなんだよ!このデカい魔物は!!」
「ハ?きな…、ワタシは魔物じゃなイ!」
利発そうな男の子の魔物扱いに普通にキレたきなこが、普通にココアちゃんのシールドに攻撃を繰り出した。
きなこの得意な素早い尻尾と前足の攻撃だが、まあそれを何度当てたところでシールドは壊れない。
私達からすると少し芝居がかっているのだが、いつもの戦闘訓練と何も変わらない。しかし男の子や学院教職員からしたら、どこからかいきなりやって来た魔物と(元勇者の)生徒の戦闘なのだ。
「ココア様、セリフセリフ…!」
「あ、そっか…っく!なんて強い攻撃なんだ…!しかし、私は勇者だ、よ!絶対に負けない!」
「こしゃくナ!ならバ…!」
きなこはシールドから距離を取り、毛皮の中に隠していた魔石を取り出した。
「こノ、ませきガ、ワタシのパワーヲ、ぞうふくさせてくれル!」
魔石にきなこ自身の魔力を注ぎ、そのパワーが最大化した魔法光線を強硬なシールドに向ける。
その光線を跳ね返しているが、今までびくともしなかったシールドに少しずつヒビが入ってきた。
「そんな!このままじゃ!ココア様!なんとかならないの?」
「……1つだけ方法がある…けど、私のパワーが足りない!」
「は、暴力女のくせにそんなもんなのかよ!」
「そうだそうだ!」「怪力オーク!どうにかしろよ!」
その暴力女・怪力オークに守ってもらっている男子達が口を揃えて非難する。
(まあこの状況を作り出している犯人でもあるのだが…)
「マーガレット様!私にパワーを貸して!!」
「うん!!!」
マーガレット様はポケットから先端に魔石の付いた、美しい模様が描かれているガラス製の棒を取り出した。
「ココア様ー!がんばれー!!ココア様ー!がんばれー!!」
姫がその綺麗な棒を振りながら、ココアちゃんに声援を送る。するとその棒が光りだし、魔石がその輝きをココアちゃんに纏わせた。
魔石の光を纏ったココアちゃんはシールドのヒビを一気に修復し、きなこの技に対抗する魔法光線を少しだけ放った。
「そんな!…ココア様ー!がんばれー!!ココア様ー!がんばれー!!」
「…っく!もう少しだけ、みんなの力があれば…!」
「ココア様…!
ちょっと男子!これを持って、ココア様に力をわけて!」
「…そんな俺ら大した魔力ないぞ…」
「大丈夫!この棒を振って、声を出せば、それがココア様のパワーになるの!」
マーガレット様は再びポケットから魔石の付いた(応援)棒を取り出した。
なんともまあ偶然なことに、ちょうど3本あったのだ。
「そ、そうなのか?」
3人は顔を見回して、よくわかってないまま姫の行動を真似し始めた。
「「「ココアさまー…がんばれー…」」」
聞くからにやる気のない声援と、見るからに乗り気のないただ握っているだけの魔石(応援)棒ではあるが…。
魔石が少しだけ光るとココアちゃんの魔法光線もパワーが増した。
その光景を見た3人は、少しずつ声援と熱量を上げていった。
「「「「ココア様ー!がんばれー!!がんばれーー!!!!」」」」
ついにみんなの光はきなこにまで到達した。
「グハッ!やられターーー!!」
きなこは衝撃で吹っ飛ばされた(ような芝居をして学院から去った)。
荒らされた中庭に佇む5人。
私は男の子達がどんな反応を示すか、少し緊張していた。
「…す、すっげええ!!!!!」
「お前、かっこいいな!!!
「俺らで、あの魔獣やっつけたんだよな!?」
「そうだよ!みんながココア様に力を分けてくれたからだよ!」
「うん!みんな、ありがとう!」
「なあ、さっきの攻撃も魔王軍に出してたの?」
「う、うん。そうだよ」
「すげーーー!!かっけーーーー!!!」
「俺も、練習したらできるようになる?」
「うーん…どうかな。わかんないや」
いじわるだった男の子達から質問攻めになっているココアちゃんの表情を見た私たちは、そのまま家路に着くことにした。
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