ニャアのスペシャルブレンド吸引薬・消臭剤
「へ、へー…なんか、すごく効き目ありそうだね………ってこれを吸い込む、ってこと!?」
「そうニャ!ムスクスフィアは香りで人間を誘惑したり、体に異常をきたすニャ。分析した結果、やっぱり肺から薬を入れる必要があるニャ!!!その方が治療の効果が出やすいはずニャ!!!」
その理屈は納得できるのだが、このネバネバベトベトした液体をどうやって吸引するのか…。
「これをあっためて、その蒸気を吸い込むのニャ!」
よかった、それならまだ我慢できそうだ!
「それで、これが消臭剤ニャ!!」
「消臭剤まで…!さすが、ニャア!!」
こちらはワインボトルほどの大きさの瓶に透明の液体が入っている。こちらの見た目はいたって普通だった。
「消臭剤は匂いに強さによって使用量を変えればいいニャ!」
「そうなんだ!すごいね!試してみてもいい?」
「いいニャ!!」
私はボトルを受け取り、まず最初にどんな香りなのかと思いコルクを抜いてみた。
「って、くっっっっっっっっっっさ!!!!なに、この匂い!!!!」
ムスクスフィアの香りも強烈なのだが、この消臭剤も独特な強すぎる香りだった。
「これが消臭剤ニャ!」
「なんで消臭剤なのにこんなキッツい匂いなの!?消臭剤って、無臭じゃないの!?」
「無臭の消臭剤もあるにはあるけどニャ、近隣都市を丸ごと機能不全にするだけの香害を撒き散らす魔物・植物相手には、これが1番ニャ!」
「なる、ほど?火をもって火を制す…みたいな感じかな?」
「それは知らニャいけど、そんな感じニャ!とりあえず、このムスクスフィアの香りが染み込んだハンカチで試してみてニャ!」
渡された白いハンカチは見た目こそ普通なのだが、目元や鼻には絶対に当てられないほどの悪臭を放っていた。
「ニャー…このくらいの香りなら3滴くらいだニャ!」
「…はい」
私は瓶から慎重に消臭剤を3滴垂らす。
ポタッ ポタッ ポタッ
「…!!!」
3滴目が染み込んだ途端、ハンカチから少し風が吹いた。そして、あのムスクスフィアの鼻が曲がるほどの香りが全くしなくなった。
「すごい!!すごい!!!本当に香りがしなくなった!」
「ニャッニャッニャー!すごいニャ?すごいニャ?」
「うん!!本当にすごい!!さすがニャア!!!」
「ニャアは天才ニャ!!ハルニャ、褒めてほしいニャーー!!」
彼女は大きな瞳を少しうるうるさせながら、私より少し高い身長のニャアが軽くかがみ、可愛くおねだりしてきた。これに抗えるものがいるならそれは人間ではないだろう。そして私は彼女の頭をこれでもかと撫でてあげた。少々髪の毛がボサボサになっても気にならないほど私も彼女も喜びに満ち溢れていた。
やっと、これでココアちゃんやマーガレット様、そして多くの人々がムスクスフィアの香害から解放される…!
「ニャッニャッニャー!名付けて『ニャアのスペシャルブレンド吸引薬』と『ニャアのスペシャルブレンドムスクスフィア消臭剤』ニャ!!!」
「へ、へー……いい名前だね…」
「そうニャ?そうニャ?でもアンちゃんに相談するといっつも商品名変えられるニャ!!」
あとからアンちゃんに良い名前をつけてもらおう…。