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半獣人




「絶対に嫌だニャ」



提案を端から突っぱねられるのは慣れてきているつもりだったが、やっぱり少しはメンタルにくるな…。


「『絶対にダメ』の理由をお聞きしてもよろしいですか?」

「単純にやりたくない仕事だからニャ。そもそも、猫獣人族は自分のご飯代以上の仕事はしないニャ」

「あー、その気持ちメッチャわかるっス!」

「そうニャン!やっぱりアンちゃんはニャアの親友だニャ!」

「その、でもニャアさんは猫獣人と人間のハーフですよね?」

「………」

テンションが一度上がった彼女だったがすぐに不機嫌になってしまった。こちらを見る瞳が異常に冷たい。やばい、また地雷を踏んでしまったか…。


「だからどうしたニャ?猫獣人だからって差別でもするのかニャ?それとも人間とのハーフなんだから半分しか役に立たないとでも言いたいのかニャ?」

「いえ!そういう意味ではありません!そもそも、私は猫獣人かわいいな…って思ってるくらいなので…」

「ハルカちゃんは異世界から召喚された、元勇者なんっスよ!」

「そうなニャのか…じゃああなたも異端児みたいなものかニャ」

「まあ…そんな感じですかね。変なアイディアを思いついては突っ走る…と言われていますね…。あっはは…」

「ミャァ…」

ニャアはそう呟くと少しだけしっぽを左右に揺らした。


「それで、先ほどの話の続きなのですが…

先日、ムスクスフィアの調査団に同行させてもらったんです。それでムスクスフィアの香りが我々の行動や思考に影響を与えているのではないかと仮説を立てました。実際、ムスクスフィアの中心部に向かって夢遊病のように歩き、友人を認識できず攻撃してきた子がいました。その子を香りのしない空間に閉じ込めると大人しくなりました。

魔研でも研究をしていますが、治癒院に人員を割かねばいけなかったりと思うように進んでいないようで…

マーガレット様や私の友人が昏睡状態なので、なんとしても解決策や治療法を生み出さなければいけないのです。

そこでここのアンに相談したところ、魔研での勤務経験もあり、革新的な魔法の研究を行っているというニャアさんのお力を貸していただけないかと…」


私は全て話し切ったと思う。リビングに沈黙が流れる。体はだんだん暖まってきたが、心の底は緊張で冷え切っていた。


「魔研での勤務経験の内容は知ってるのかニャ?」

「その…詳しくは知らないですね…」


ニャアさんはアンちゃんにベッタリとくっついていた体制を変え真面目に話す雰囲気になるかと思いきや、膝枕の体制に変わった。自由奔放な性格のようだった。

「ニャアは猫獣人と人間のハーフだニャ。猫獣人をはじめとする獣人系は魔法が使えニャい。その代わりに身体能力が優れているニャ。俊敏性、嗅覚、聴覚…人間は足元にも及ばないニャ。そしてニャアのもう一つの血筋の人間の家系は魔法使いを多く輩出するエリート一家だったニャ。ニャアも魔法の勉強が好きだったけど、猫獣人の血の方が濃かったみたいだニャ。つまり、全然魔法が使えニャいってことニャ。コネで魔研に就職したのは良かったものの、既存の魔法や古代魔法の研究を中心とする魔研の方針と、ニャアの魔法を分解して新しいものを想像する研究方針が合わなかったニャ…。まあニャアは1年しか魔研にいなかったけどニャ。だから、魔研が絡んでるとなると、ニャアが関わるわけにはいかないニャ」


「…マーガレット様やそのご友人には申し訳ないけど、ニャアは何もできニャいニャ。

生物は生まれ、生きて、いつかは死ぬ運命ニャ。それがちょっと早くなるか、遅くなるかの違いニャ。ニャア達は神様でもニャい。

そういうことだニャ…」


ニャアさんの言うことのは、一理あるとは思う。全く納得できない話ではない。大人になる、ということは、自分たちの感情の問題以外にも色々なしがらみがあるのかもしれない…。


でも、ココアちゃんやマーガレット様、そして多くの命が関わっている。そしてこのムスクスフィアは周期的に発芽する”災害“とも言われている。天災だからしょうがない、ということはできる。しかし、なんの対策も打たずに自然の流れのままというのは納得できない…。


魔研も総力をあげ研究しているし、いずれは解決策や対抗魔法など生まれるかもしれない。


しかし、それはいつ実を結ぶ?


そもそも、私はなぜこの子に依頼しようと思ったのか?


アンちゃんから紹介できる人物と言われたが、魔研にいた経歴だけで判断されていないはず…。





私は思考を回転させながら、手に持っている温かいマグカップを見つめた。

マグカップの中のハーブティーは私の震える手の振動をキャッチし、小さな渦を描いていた。









…!!!!!




そうだ!!!これだ!!!!!!



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