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魔研と防衛隊



「おお、ハルカか」

集合場所の王立魔法研究所の玄関ホールにはミネルバさんも来ていた。

「教官!お久しぶりです!」

「元気にしてるか?冒険者はやめたのか?」

「ちょっと!なんで教官まで知ってるんですか!」

「教官としては愛弟子が今どうしてるかは気になるものなんだよ。まあ勝手に情報が入ってくるのもあるな」

持つべきものは、個人情報をベラベラ話さない友人だな…!!!


「魔研の所長を勤めております、リリウス・アンゼルです。

…今回の調査対象について情報共有します。

ちゃんと聞いていてくださいね」

大きなホールなのだが、集まっているのは9人しかいなかった。

研究職員が3人、防衛隊員が3人、あとは所長と副隊長と私だ。

それぞれが別々に集まっており、お互い目を合わせようとしていないのが印象に残る。

こんな中に、先ほどまで不審者だと思われていた私を入れてくれるなんて、所長も変わった人なのかもしれない。


「ハルカさん、ちゃんと聞いていてくださいね。

さもないと、開発中のポーションの実験台にしますよ?」

あたりを見回していた私をショタジジイ…リリウス所長は、満面のかわいらしい笑みで注意するが、その瞳の奥にはマッドサイエンティスト的な何かが潜んでいるようだった。

「は、はい…ちゃんと聞いてます…」

「うぉっふぉん…!

皆さんも既にご存知でしょうがムスクスフィアが発芽しました。

次の満月までの1ヶ月で、死者・行方不明者を前回より下回らせることが課題です。

そのためには、ムスクスフィアの早期解明が必要です。

道中危険が伴いますので、皆様のお力をどうかお貸しください」

リリウス所長が頭を下げると、職員3名も頭を下げた。

私たち防衛隊メンバーは護衛という形なのだろう。



しかし、防衛隊の4名は私が思った反応を返していなかった。



「いえ、国家の一大事でもあります。

お互いに王国組織の代表として、このムスクスフィアの災害を早く終わらせましょうね」

ミネルバは戦いの積み重ねで固くなった皮膚で覆われた右手を差し出す。


「…ええ、そうですね。

ムスクスフィアは貴重な“研究対象”ですので、お互いに国家の利益となるような成果を出しましょうね」

リリウス所長はわざわざ台の上に登り、目線を合わせながらその綺麗な右手を差し出す。


お互いに笑顔で握手を交わすが表面的でしかない。

私はこんな空気の中、魔石を無事に採取できるのだろうか…。








群生地周辺では魔研の先行隊が周囲に結界を張っていた。

しかし、群生地はあまりにも巨大なため隙間はある。

日本ではよく「東京ドーム◯個分!」などと大きさの表現をするが、東京都とその周辺の人以外なかなか分かりずらい表現なのではないかと思う。

まあ、タタミ◯畳と言っても広大すぎると表現しようもない。

それほど広大な面積に、大きい芽から小さい芽まで芽吹いているということだ。

そこから密猟者が入り込んでいるというわけだ。

結界の外には簡易テントで治癒院が置かれていて、負傷者で溢れかえっていた。

「所長、お疲れ様です」

へそまで届きそうな立派なヒゲを蓄えた老人が足を動かさずにスーっと近づいてきた。

地上からわずかに浮いていて、そのまま流れるように移動しているようだった。

「副所長、お疲れ様です。今年もやっぱり負傷者は多いですね…」

「そうですね…法改正が追いついてないのが問題ですね…」

見た目は普通の人間種のおじいちゃん、と言ったところだが、腰も曲がってないし顔にシワこそあれど元気満タン…な方に見受けられる。

(見た目で年齢を判断するのは、この世界では非常識になると学んだばかりなので…)

「今回はこの8名と、調査に入ります」


「やあやあ、久しいな、副所長殿…。

まあまあ…今年も大量の負傷者を出しながら研究だなんて…

マッチポンプの研究を公金で行ってるんですか?」

ミネルバが二人に近づき、不敵な笑みを浮かべていた。

「これはこれは、副隊長。お久しぶりですね。今年はこちらにご参加なんですね。

いつもみたいに、私たち魔研の研究費削減のために奔走してるのかと思いましたよ。

あ、脳筋には無理でしたね…失礼いたしました」


魔法のない世界でも、絶対にこの二人の間にはバチバチと火花が散っているだろう。


「あとはよろしくお願いします」

「はい、かしこまりました」

短い(?)やり取りの後、私たち調査団はついに今年1番大きな群生地に足を踏み入れた。



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