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第1話 因果応報

「これで母さんを大学病院に入院させられるよ。本当にありがとな」


『ううん、蓮くんの為だもん。全然どうってことないよ。お母さん、早く良くなるといいね』


「ああ。医者が言うにはこのまま何も無ければ大丈夫だってさ。全部リサのおかげだよ」


「こんな情けない事頼んじゃった俺だけどさ、落ち着いたら必ず金は返すから。そしたら俺たち、結婚しよう」


『う、うん、、!私のお義母さんにもなるんだし、当たり前のことをしただけだから、無理して返さなくても良いからね!それじゃあ、またね!』


「ああ、またな。ほんとありがとう」


電話を切り、俺はソファに腰を下ろす。

ありがとう、これは本心からの言葉だ。

今回も俺を疑わず、大金を振り込んでくれたんだ。これを感謝せずに居られるわけが無い。


ああ、我ながらなんて演技が上手いのか、自画自賛が止まらない。

あまりに事が上手く進みすぎてついつい笑い声が漏れそうになってしまう。


「いけないいけない、家の処理もしないといけないんだ。気を引き締めないとな」


「まあ、計画が成功したんだ。今日くらいは飲みに行くか!」


やはりひと仕事した後は美味い酒と飯に限る。

バカな女達を騙し、賢い俺はそいつらの金で好きなように生きる。これだから結婚詐欺は辞められない!


酒が回った俺は、千鳥足で店を出る。


「まだ時間もあるし、バーにでも行くかぁ?」


他幸福感に包まれながら夜の街を歩いていると、唐突に脇腹に鋭い痛みが走った。


「・・・あ?」


反射的に腹を抑えると、手に生暖かい液体がベッタリと付いた感触がある。

俺は何者かに刺されたようだ。


「ぐあぁぁぁ!!!!」


あまりの痛みに思わず叫んでしまう。


「(一体誰だ、この俺を刺しやがったバカは!!)」


痛みに耐えながら前を見ると、ボサボサの髪をした女が立っている。

何かうわ言を言っているようだが、痛みと周囲の人間の叫び声で聞き取ることが出来ない。

きっと前に金を騙し取った女の誰かなのだろう。赤く染まったナイフを握り締めながら、俺の顔をじっと睨み続けている。


「あ゛ぁ゛あぁあ゛!!!!」


朦朧としてきた意識が、再び襲ってきた激しい痛みによって取り戻される。

今度は胸だ。おそらく肺に刺さったのだろうか、喉から血が迫り上がって来るのがわかる。


「(周りの人間は何をやっている!早くこのイカれた女を取り押さえろ!!)」


逃げる気など無いのだろう。女は胸に刺さったナイフを更に強く俺の体に押し込んでくる。


「(痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!)」


「(俺が、この俺が!どうしてこんな目に遭わなければいけないんだ!)」


湧き上がってくる怒りと裏腹に、身体が冷たくなっていくのが分かる。





「あ?」


次の瞬間、目の前が1面真っ白な空間に切り替わった。

先程の事が全て夢だったかのように、身体は痛みを感じない。むしろ調子が良いくらいだ。


「にしてもここは何処だ?死後の世界か?だとしたら随分チンケな所だな、、」


悪態をついていると、いきなり目の前にベールを纏った女が現れる。

驚きながらも、ここはどこか、お前は誰か、記憶喪失になったかのような質問をどれからしようか悩んでいる矢先、目の前の女が口を開く。


「竹葉 蓮よ。ここに貴方を呼んだのは他でもない、貴方の死について話さなければならない事があるからです」


「俺の死について、ですか?」


「ええ、貴方の死には手違いがあったのです」


胡散臭さと神々しさを放っているこの女は、おそらくこの世界の神か何かなのだろう。

これが俺の死に際に見ている最悪な趣味の幻覚で無いのなら、ライトノベルよろしく何か詫びの品でも出されるのだろうか?


「本当であれば、貴方はここで死ぬ予定ではありませんでした。本来なら、無様に刺されながらも意識不明の重体で病院に搬送され、生死の境を反復横跳びした後に苦しんだ末に亡くなる予定でした」


おい、随分神にしては物騒な言葉遣いが混じっているぞ。俺の聞き間違いか?


「ご、ごほん。なるほど。多少ではありますが、予定よりも早く私は死んでしまったのですね」


「ええ。あまりにあの女性に感情移入してしまい、つい加護を授けてしまいまして、、」


前言撤回だ。悪びれる様子もなくこんな事を言うやつが神であってたまるか。


「随分な言い草ですね。わざわざここに呼ぶくらいだ、私の死期を早めてしまったことは通常あってはならない事なのでしょう」


「であれば謝罪と、それ相応のお詫びでも私にするべきなのではないですか?」


どうりで戦争や貧困が無くならないわけだ、と1人で納得をしながら、神に対して捲し立ててみる。


本来の俺の死期などどうでも良いが、付け入れる隙があるのは良い事だ。搾り取れるだけ搾り取って、次の人生にでも活かせれば万々歳だろう。


「ええ、この事に関して私からは面目次第もございません。大変申し訳ありませんでした」


「お詫びと言ってはなんですが、現代の人々が夢見てやまないという、剣と魔法の世界に貴方をお連れしましょう。当然、見た目も記憶もそのままです」


悪くない。あんな目にあったんだ、チートで俺TUEEEEしてハーレムで異世界エンジョイ、とかいう詰め込みセットを貰うくらいでないと納得が出来ないからな。


「しかし、」


うん?何か様子がおかしいようだ。


「貴方の生涯は多少の同情の余地あれど、それ以上に他人を欺き、傷つけるものでした」


「よって、()()()()()()()()とさせていただきます」


・・・何?





再び目の前の世界が切り替わる。


「あの女、こっちを一切気にせず好き勝手やりやがって。それに、最後なんて言ってやがった?」


もしも。もしもこの世界で”俺だけが現代一般人の肉体のままだったら”、俺は一体どうなる?


嫌な予感について腕を組み考えながら歩いていると、唐突に角から子供たちが飛び出してくる。

面倒事を起こしてもしょうがない。

俺が避け、


「ッ!?」


考えるよりも先に、子供がものすごい速さで右足に激突する。

身体が宙を舞い、背中から地面に叩きつけられる。

骨が折れているのだろうか、右足の感覚が一切無い。ただ痛みだけが全身を襲う。

あまりの痛さに背中と足を抑えたままその場にうずくまっていると、後から着いてきていた女の子供が駆け寄ってくる。


「(なんだ!?追撃か!?!?)」


「おじさん、だいじょうぶ?アーくんがまえみてなくってぶつかっちゃってごめんね」


そう心配そうに話すと、ヒールと唱えたかと思うと身体に手を当ててくる。

すると不思議なことに、全身から痛みが完全に消え去った。


「(なんだ、なんなんだこいつらは、、、!!)」


普段であればガキにぶつかられ、おじさんとまで言われたなら放置などしないだろう。しかし、ここでは訳が違う。

やっと言葉を話せるようになったであろう彼女らにこのような力があるのだ。

機嫌を損ねようものならどうなるか、想像もしたくない。


「いや、僕も考え事をしていたからね。お互い様さ。心配してくれてありがとう」


「(あの女ァ!!!!何が誰もが夢見る、だ!化け物共の巣窟じゃねぇか!!!!!)」


心の中であの自称神の悪魔に対して思いつく限りの罵詈雑言を浴びせながら、限り自然な早歩きでその場を立ち去った。




「くそ、くそ、くそ!!一体俺はどうなっちまうんだ!!!!!」




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