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Episode006 俺の男としての本能がッ……!

俺が目を覚ますと、視界の25%は空が見えなかった。

……あんまり意識したことなかったけど、アクニたそって結構胸あるんだな。

だいたい見立てだとEカップくらいかな?


「ちょっと旦那様? 今、失礼なこと考えてなかった?」


……どうやら、当人には俺の考えていることはかなりお見通しらしい。

じゃなきゃ、俺がアクニたそがキスしてほしいって思ってるのかもしれないと思ったときのことだって、一瞬ニヤけただけでは分からないだろうし。

もしかすると、この過ごしてきた2年の中で、その辺を極められてしまっているのかもしれないとすら思えてくる。

思えば、何故昨日までの2年で今日まで何の進展もなかったのやら……。

まあ、そんなことは気にする必要はない。

今はただ、この最高の眺め(最低)を楽しむだけである。


「……ちょっと旦那様? あたしの服じゃどれだけ穴が開くほど見つめたって、お、お、おっ……と、とりあえず! 何も見えないよ!」


俺は別に、本体が見えなければいけないとは考えてない。

大切だと思うのは、『そこにあるのかないのか』である。

だから、俺はただそこにあり続ける胸を眺め続けるだけだ。

俺だって結局は思春期の男児なのだ。

このワガママは、冒険でストレスの溜まった俺には癒しなのである。

ちなみに、俺は今まで、一度もナニもしたことがないのが自慢だ。

ちっぽけな自慢かもしれないが、そういうことをこの年になって一度もしていない男児なんて、この世界だろうと元居た世界だろうと、そう簡単にはいないだろう。

まあ、俺のムスコは無事に起立しちゃってるワケだけど、股間を見られていないことをいいことに、『万物創造』で『ムスコの起立が分からない性質』という感じにズボンの性質を創造しておいたので大丈夫である。

いやー、今まで機会がなかったから実感なかったけど、『万物創造』ってチートね。

こういうところでも役に立ってくれるのがありがたい限りである。

それはともかく。


「膝枕マジでありがとう。……それはともかく、この後ってフツーに王都に?」

「そう言ったのはキミからだったのに……。はぁ、やる気なくした!」


……俺はどうしても無責任な性格なのかもしれない。

そんなことを思いながら、俺はさてどうしたものかと考える。

確かに、想いを打ち明けあったその日に国王様に報告に行くだなんて、あまりにもムードもへったくれもないような気もしてくる。

じゃあ、今日俺たちがするべきことは何なのか。

そりゃ、デートかもしれないし、フツーに考えたら国王様への報告かもしれない。

だが、ここで俺はとある選択肢を選ばさせてもらうことにした。


「……そういうことだったらさ、家を探しに行かないか?」

「え? どうしてデートじゃなくて家探しなの……?」


俺が選んだ選選択肢である『家探し』に何だか不満そうなアクニたそ。

フフフ……甘いね。

家探しというのは、デートじゃないように見えて、実は最高のデートになりうる存在なのだということを教えようじゃないか!


「俺たち、ずっと宿暮らしにするワケにはいかないだろ? だから早く家を見つけた方がいいってところは理由としては大きいには大きいんだ」

「それはそうなんだけど……。旦那様は、あたしとのデートよりも家探しが優先だって言うの?」


どうやら、俺が話さないと気が付かないらしい様子のアクニたそ。

さあ、聞いて驚くと共にドキドキするといい!

俺はアクニたその膝に頭を載せて寝転がった状態で、諭すように説明を開始した。


「そりゃそんなワケはないんだけどさ。例えば、家を見に行くとするだろ? そういうときに一番考えないといけないのは何だ?」

「え? えーっと、どんな感じに暮らすことになるか、とか……?」

「そう! つまり、家探しに行くと、どんな生活をすることになるかって妄そ……ゲフンゲフン。想像ができるんだよ!」


俺がそこまで説明すると、アクニたそは俺の期待した通り、驚くと同時に未来に目を輝かせるような表情になった。

こりゃ、今日は家探しで確定だろう。

国王様にさっさと報告して一般人ムーブをかましたいところではあるが、勇者としての権威で融通してもらおうなんて下衆な考えで報告を後回しにしたワケではないし、今回は見逃してほしいところである。

まあ、今回もクソもなく、勇者になることなんて何がどうなっても1回しかないが。


「じゃ、じゃあ、あたしも今日は家探しでいいかなーって思う、なぁ……」

「了解。じゃ、さっさと王都に行こうか」


俺はそんなことを言いながら、アクニたその膝の上から名残惜しそうに……それはもう一生悔いてるんじゃないだろうかとすら思えてくるほどの動作と表情で名残惜しそうに頭をどけようと、俺は表情を作り、起き上がろうとしたのだが。


バイン。


俺の頭は本能のままに眼前の胸を避け切ることを拒否し、顔半分がアクニたその胸に突っかかり、膝の上に頭が戻った。

……ごめぇんね(泣)、こんなにもスケベな元勇者の異世界人の旦那様で……。

俺はヤバいと思いつつ、即座に転げるようにして膝の上から頭をどかし、即座に彼女の目の前で正座すると、淀みない綺麗な一連の動作で、完璧な土下座を披露した。

そんな俺に降ってきたのはこの一言のみだ。


「……旦那様のエッチ」


* * * * *


あれから俺はアクニたその機嫌を戻すのに、かなり時間を使ったように感じた。

「どうしてそんなことするの?!」とかではなく、ただただ、男が巨乳相手にするイメージのあった行動を自分にされて、ナメているんじゃないかと怒ったらしい。

俺からしてみれば、胸なんて正直Dもあれば十分いいくらいだと思うんだが。

まあ、そんなことは絶対に何があっても言ってはならない言葉の1つなので、永遠に心のパンドラボックスに収納されている。


「ちょっとー? この期に及んでまた変なこと考えてるの?」

「いや、そんなまさか……。とりあえず、胸を大きくしたいって言うんなら、俺の能力は使わさせてあげらんないけど、サポートするくらいは……」


そこまで言ったところで、顔の左右を何かが勢いよく通り抜けた。

正面を見ると、満面の笑みで両手に剣を構えてるアクニたそが。

……俺の能力でデカくするのって、逆に負けた気分にならないか?

まあ、アクニたそが幸せならそれでいいんだけど……。

と思っていると、1つ溜め息を吐いて、アクニたそは落ち着いた。

俺は思った。

機嫌をどうにかするなら、今しかないんじゃないかと。


「そ、そもそも、俺はアクニたその胸だから好きなんだよなー。もしAだろうがFだろうが絶対にああしてたもん」

「え、えぇっ?! な、何ソレ気持ち悪い……」


グッ、グサーーー!!

好きな人からの「気持ち悪い」って、興奮すると同時にかなり傷つくのか……。

なんだか軽蔑の色を含んでいてもおかしくなさそうな目で俺を見つめてくるアクニたそは、そのまま俺を眺め続けていたが、3秒後には頬を赤くしながら。


「……で、でも、旦那様があたしの胸を好きって言ってくれるのは……嬉しい」


と言ってはにかんだ。

……何なんですかこの存在自体が有罪な可愛すぎる生き物は。

俺はそんなことを思いながらボーッとしてしまっていると。


「そ、それより、さっさと行こ! 家探し!」

「あ、ああ、そうだな」


恥ずかしくなったらしいアクニたそは、そうやって話を反らした。

今までで一番の朝を迎えたような気分になった俺は、今なら『万物創造』で家くらい簡単に作れるんじゃないかとすら思えたのだった。


次回 Episode007 王都への道と少しの嫉妬

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