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Episode003 告白の後、『万物創造』を試そ……what's happen?

俺たちはアイツ等が見えなくなるまで、一緒に走った。

どうして走ったのかは、よく分かってない。

気分でそうしたくなったってところが一番大きいが、もしかするとある種の防衛本能がはたらいていたことも理由の1つかもしれない。

それこそ、女子メンバー5人の誰が急にアクニを殺そうとするかなんて予想がつくはずないし、そこもあるだろう。

後ろを見て、月明かりだけで馬車や焚火が見えないことを確認すると、俺とアクニは思わず地面に横になってしまった。

というか今更だが、アクニは二刀流だから、2本の剣を背中に携えた状態で同じように走っていたってことなのか……。

すごすぎないか?

まあ、さすがに戦闘経験全然ない日本のもやし男児とは違うってことか。

16歳になった今ですら、14歳の頃と体力や筋肉量がほぼ変わってないし。

一方でアクニは、2年前の時点で、15歳にして2本の剣を使いこなす実力者の二刀流剣士だったんだよな……。

どう考えても、アクニと本気で戦ったら負けるの確定か。

それを言ったら、俺はあのパーティーの奴等全員に勝てないって言ってるのと同義なのかもしれないが、そこだけは気付かなかったことにさせてもらうとしよう。

俺たちは息を切らしながら、初めて見るかのような綺麗な星空を眺めて語らう。


「なぁ……どう……だった……? 俺の……やり方……」

「あ、あたし……正直……びっくりした……! ありがと……!」


右に寝転がっているアクニの方を見ると、あの昼間に浮かべていたものともまた違う満面の笑みを浮かべ、とても嬉しそうにしている。

……めっちゃドキッとしたんですけどぉ……!?

僕は現実の女子には全く気がなかったから、こうなるとは思わないワケよ。

そりゃ、この世界ってのは、見え方とかが俺の元居た地球とは違うのよな。

ちゃんと3次元してるんだけど、謎に3D感が失せないとでも言うべきだろうか。

だいたいそんな感じである。

だからと言って、こんな好きになることってあるんスかね……?

それこそ、この世界に来たばかりだったあの2年前の時点なんて、2次元以外を好きになることなんて自分の人格が死ぬのと同じとまで考えてたからなぁ……。

人間、何があるか分かったもんじゃないな。

まだ収まらない鼓動を感じながら、俺は落ち着いてきた呼吸で話を続ける。


「俺……どうしてもアクニと一緒に抜けたかったから……」

「え? それってもしかして……やっぱりあたしのこと……好き好きちゃん?」


俺は昼に言われたことと同じことを言われ、更にドキッとした。

しかし、今度のはさっき笑顔を見たときのとは違う。

……ここで想いを伝えるべきなんだろうか……。

俺としては、こんなことまでしておいて何も言わないってのはすごく卑怯だと思うし、それこそヘタレの真骨頂とでも呼べてしまうだろう。

ここで言わなきゃ男が廃る……。

さあ言え俺! 失敗するのは隕石が20個同時に俺に当たるくらいの確立だ!

俺はそう自分を鼓舞すると、上体を起こし、アクニを見ながら言った。


「……一番最初に会ったときから、俺はアクニが好きだった。今まで黙っててごめん。でも、これからは、一生かけて幸せにしたい。だから……うおっ!?」


俺がそこまで言うと、両目の端に涙を溜めたアクニが俺に飛びかかってきた。

それは抱きしめに来ていると言うよりか、襲い掛かってきているようにも見える。

つまり、そこには喜びよりも怒りが……?

と点と点が繋がったところで、思いっきりのしかかられた!?

思わず「グホッ!?」とか声が出るかと思ったら、意外と軽かった。

……ちゃんと食ってないだろってくらい軽いと、太らせちゃうんじゃないかと心配で、俺が手料理を振る舞えなくなっちゃうでしょうが……。

……これはお門違いか。

そうやって脳内で1人でツッコんでいると。


「ずっと……ずっと……待ってた、待ってたんだよ……! キミがあたしのこと好き好きちゃんなの、ずっと分かってたんだから……!」


泣きじゃくりながら、アクニはそう言って抱きしめてくる。

柔らかいアクニの胸が服の隙間から見えそうになっていることに本人は気づいていないみたいで、俺はちょっとドキッとしたが、それ以上に、俺はとても申し訳ない気持ちにもなった。

別に、胸が見えそうだから申し訳なく思ったとかじゃないんだよ?

ただ、ずっと想いを知りつつ我慢させてたんだなと思うと、ただただ酷いことをしたような気分になってしまう。

『恋は駆け引き』と言うが、そんな言葉で片づけていいとは思い難かった。

こりゃ、一生愛し抜かないと怒られるヤツだなぁ……。

それ以外に選択肢はどのみち用意されてないけど。

俺は泣き止む様子を見せないアクニを抱きしめ返し、背中をさする。


「ごめん……こんな俺で」

「……むしろ、そんな優しいキミだから、好きになったんだよ……?」


グッ……なんて俺は幸せ者なんだ……!

こんな可愛くて優しい娘にこんなに愛されて、幸せ者以外なはずがない。

遂に『万物創造』も開放されたことだし、アクニの為なら何でも作れちゃうような気すらしてくる。

こうなったら、まずは『恥ずか死』をお見舞いしてやる……!


「ありがと……世界で一番のお姫様」

「ウワァァァァァァァ! 聞こえない聞こえなーい!」


俺の発言より0.2秒後、耳まで真っ赤にしたアクニが俺の上から転げ落ち、顔を両手で覆ったまま地面の上を転がりまわった。

服が汚れちゃうけどいいのか……?

まあ、アクニが幸せならオッケーです、と。

俺は初めて発動させる『万物創造』の力に期待を寄せながら、心の中で唱えた。


『『万物創造』、発動! ダイヤの指輪を創造せよ!』


俺はだいたいこんなもんでいいだろくらいにそう唱えると、目の前の空中に何か光が漂い始めたことに気が付く。

白銀色の光は、やがて俺の目の前に少しずつ集まり、そこに指輪を成した。

日本にあったものと同じく、輪の部分が鉄だかアルミだか、でその上に小さく切り抜かれたダイヤがはめられている。

……どうやらコイツは、自分が想像した通りにものを創造することができるらしい。

『想像』と『創造』をかけたつもりなんだろうか……。

まあ、自分が思った通りにできるんならそれでいいか。

俺はそう思いながら、恥ずかしさでまだ地べたを這いつくばっているアクニに手を差し伸べ、少しずつ立たせる。

彼女が普通に立てたのを見届けると、俺はその指輪を差し出した。

その指輪を見て、アクニは想像していた以上に顔を輝かせ、手に取ってくれた。

どうしてアクニはこんなに愛おしいんだろうか……。

なんてバカップルも唖然としそうなことを考えていると、アクニが言った。


「ねぇ、この填まってる宝石みたいなのって何?」

「え? それはダイヤモンd」

「ダイヤモンド!?」


俺が答えようとすると、アクニは素っ頓狂な声を上げてびっくりした。

そのびっくりしている表情は、瞬時にカメラを作り出せるレベルで能力を使いこなせるようになっていたら撮れていたかもしれない……。

なんて思っている頭に、アクニの声が入ってきた。

しかしそれは、俺の想定していたどんな言葉よりも衝撃的だった。


「ダイヤモンドは……もう数千年前に掘りつくされたって……」

「……ま、そういうプレゼントもあるのが日本ってことで……」


……とりあえず、この世界に全くないものまで作れるのが『万物創造』だと知り、個人的にちょっとビビッたのであった。


次回 Episode004 魔物も唇も狩るような夜明け

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