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Episode002 勇者パーティー? (´・ω・`)知らんがな

俺がアレを言って以降、別にアクニが何か言ったワケではない。

今夜俺が決行する勇者パーティー脱出作戦に関して、賛成とも反対とも言わず、同行するともしないとも言わないままだ。

俺としては、一緒に来てくれないんだったら「なーに、こりゃただのジョークさ☆」で済ませるしかないんだろうか……。

まあ、陰キャだけど根はしっかりしてるのがアクニなんだから、俺が話を出せばきっと一緒に抜けてくれるはずだ。

どうであれ、抜けられる機会に抜けないなんてことにはならないだろう。

ていうか、本人が拒否しても、俺が無理矢理にでも連れ出す方が早いか。

あんまり強引なことはしたくないんだけど。

……なんて考えながら、俺たちは馬車に乗っている。

2匹の馬に2つの荷台を運べってのはかなり鬼畜な気がするが、ゼルバが言い出したことと思えば、むしろ当然だとすら思えてくるのが不思議だ。

それだけ俺の中で、ゼルバという男が如何に粗暴なヤツ認識になってるってことなんだろうけど、逆に、こんな暴挙でへこたれない馬たちには尊敬の念を抱いてしまう。

俺とアクニの乗っている荷台には、いつもその日の獲物が載せられている。

今日の場合は、魔王軍幹部だった魔術師の魔族の遺体である。

でもちろん、残り8人が前の荷台で、もう残り2人が馬を御している感じだ。

俺としてはありがたく感じなくもないこの荷台での状態は、確か馬車を入手したその日には完成していたと思う。

初期の頃こそドキドキしていたものの、アクニが全く俺の隣に座ろうとしてくれない所為で、今では期待するのをやめている。

……そのはずだったのに。


「……あ、あのー……。ちょっと近くないスかね……?」

「別にいいじゃん。あたし、迷惑かけてる?」


……今、俺の肩に頭をもたれかけさせながら、アクニが俺の隣に座っている。

急にデレた、とかじゃないんだが、一体どうしたんだろうか。

本来なら「迷惑っちゃ迷惑なんだよな……」となる現状だって、相手が初恋にして一目惚れしたアクニであるというだけで、1ミリも迷惑だと思えない。

むしろ、お礼として何かあげたくなってしまうまである。


「め、迷惑なワケないだろ……?」


俺は自分の顔が耳まで真っ赤になっているのを理解しているので、明後日の方を向きながらそう返事した。

というか、もしアクニにもたれかけられることを迷惑だって言うヤツがいるんだとしたら、ソイツは30回くらい死んだ方がいいんじゃないかと思う。

……おっと、考えが過激になってしまった。

一人で勝手に反省していると、俺のそんな様子を楽しむようにニヤニヤしながらコチラを見ているアクニが、俺に追い打ちをかけるかのように、こんな悪魔のような質問を投下してきた。


「へー……。もしかして、トウリくん、あたしのこと好き好きちゃんなの?」


俺はその質問が脳内で処理された次の瞬間には、思いっきりむせていた。

コレ、完全に恋心バレてもうてるヤツやん……!

それこそ、日本にあったラブコメに似たような展開とかあったし……。

でも、こういうときに限って、そういうのは思い上がりってケースなんだよな。

これだから現実は残酷……ってそうじゃない!

俺は今、一世一代の選択を迫られているのだ。

ちょっと言葉選びに関してはよく分からなかったが、何にせよ、俺がアクニのことを好きなのかどうかと訊かれているのは確かなのである。

もしここで「そ、そんなワケないだろ!」と照れながらも白を切ってしまえば、きっと「ふーん、そうなんだ」で終わってしまい、一緒にいられるルートは断ち切られることとなるだろう……。

かと言って、こんな馬車の上で「そ、そうだよバーロー」とか言おうものなら、こんな雰囲気もクソもないとこで告白することになるワケだし、前にいる10人に聞かれていたとき、どう反応されるか分かったもんじゃない。

「論外には論外がお似合いだな」とか言って、何かし始めるとかじゃないだろうか。

まあ、ヤツ等の気違い度は計り知れないから、何を言って何をやってくるかなんて想像がつくはずがないのだが。

それはともかく、どうするべきか……。

……ええい! 小学生じゃあるまいし、癪だが、こうなったら……!


「ご、ご想像にお任せs」

「へー……! もー! あたしのこと好き好きちゃんすぎ!」


……なんか、「お任せします」って言い切る前に、なんか今まで見たことないテンションに変貌したのは気の所為だろうか。

別に、俗に言う蛙化したなんてワケがない。

ただ、明らかに今までとテンションが違うよなー、と。

うーん、この状態のアクニも好き!

満面の笑みで頬をさするアクニは、まさに天使そのものだった……。

コレが性格の変化とかじゃなく、実際の性格の一部とかだと最高なんだが。

陰キャっぽいのに、変に違うところがあるみたいな?

まあ、キャラ変のつもりじゃないだろうし、たぶん結果的にはいつも通りのアクニのはず……。

そんな謎の不安に駆られながら、俺たちの馬車は進むのだった。


* * * * *


日が暮れてきたということで、もう野宿の準備に入っている。

つまり、俺の計画を実行するときまで、あと僅かということになるのだ。

適度に全員が落ち着いたらそこで俺が勇者をやめるとカミングアウトをし、適当に勇者の役目を押し付けたら、あとはアクニの手を引っ張ってその場を去るだけだ。

完全な愛の逃避行が始まろうとしている……いや、ちょっと違うか。

別に10人が俺たちを追いかけてくる利点はないから、野放しにしてもらえるとは思ってるけど、うまくいかないケースって逆にあるんだろうか……?

そんなことを考えていると、10人がいつも通り焚火の周りに座り終えた。

で当然、俺とアクニは蚊帳の外(物理)である。

俺たちが放り出されているのは蚊帳じゃなくて焚火を囲む輪だけどな。

……って、そんなうまく言ってる場合じゃなくて。

さて、今からは俺のしたいことをしようか。

だいたい無視されるだろうけど、そんときは無言で去ってやる。

俺は3回手を叩いて、できるだけ周囲の気を引けるようにすると。


「……もう俺、勇者やめていいか?」


俺がそう言うと、今まで全く聞く耳を持ってないと言わんばかりの態度を取っていた10人全員の動きが止まった。

お? もしかして引き止めタイムですか? 残念でしたー!

ざまぁモンってのはな、「今更〇〇してももう遅い」ってのがテンプレなんじゃい!

お前等が今から味わうことになるのはざまぁモンの展開そのものだよ!

俺は調子に乗り、そのまままくし立てる。


「お前等いつも勇者気取りだけどさ、それってつまり、勇者はお前等だけで十分なんだろ? それなら、俺はアクニと一緒にスローライフさせてもらうとするわ」


俺がそう言い終えると、女子メンバー全員がアクニの方を向いた。

視線を集めることになった張本人であるアクニは、怯えた表情に1度なってから俺の後ろに隠れるように入った。

……めっちゃカワヨス。

これがオタクたちの言ってる『尊死』ってヤツなんだなと、俺は何気に悟った。

そんなことを言えば確実に怒られるから、たぶん違うんだろうけど。

さて、それはそれとして。


「えーっと、ゼルバ。お前が一番向いてると思うから、勇者になってみるといい。きっとお前ならできるだろうからな。俺より全然できるだろ」


俺はできるだけ勇者をやめることができるように、わざとこういう話をする。

普段なら虫唾が走ってできないが、こういうときはこんな言葉も気持ちいい。

俺が言い終えると、ゼルバはちょっと驚いたような、一番最初に好感を持ったときに似たような顔をしている。

……ずっとそんな感じの表情だけした、明るいオッサンだったらよかったんだけど。


「……おい、トウリ。俺が、今日から勇者だって言ってんのか……!?」


おっと、思い通りに餌に食いついてきたね。

残念だけど、これからお前が辿ることになるのは、覇道じゃなくて下水道だ。

俺は腰に下げていた勇者専用の剣をゼルバに渡しながら。


「んじゃ、ちょっとアクニとスローライフしてくるんで、世界の命運は頼んだ」

「おう! ビビリは家の中でもやしみたくなってろい!」


最後までヤなヤツ!

……何がともあれ、勇者引退は成功したみたいだな。

もしかすると、俺が『万物創造』を使えないことを憐れんで、こうして成功に導いてくださった神様でもいたのかもしれない。

そんなことを考えながら、俺はさっさと駆けはじめ、アクニの手を握って、そのまま速度を落として走る。

アクニはすぐに察してくれたらしく、俺と速度を合わせて走ってくれる。

俺たちは嫌な2年間を置き去りにするかの如く、勇者パーティー――と呼んでいいかどうかはもう分からん――に背を向け、進み始めた。


次回 Episode003 告白の後、『万物創造』を試そ……what's happen?

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