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花と星

「そういえば、母様

 私の周囲だと、招かれ人はいるのですか?」


 招かれ人———すなわち、転生者だ。それも、記憶のある。

 もしいるんだったら、少し話をしてみたい。出来るか分からないけど。


「あら、知らなかったかしら?

 アデラがそうじゃない」


 ……………はい?





 というやり取りとしたのが、数分前。

 それを知った私は、即。アデラとお話に来ました。

 いつもの恒例、「姉妹会」にて。


「アデラ、転生者はたくさんいるらしいよ」


 そして、私の一言目がこれ。

 だって、聞いたらはぐらかされるかもしれないでしょ?

 断定した方が早いよね。


「え?

 えっと…………どういう事ですか?」


 アデラは見るからに困惑している。


「母様曰く、『転生者は魂の形が違うから、高位天使から見たら一目瞭然』だそう」


「嘘でしょう?」


 アデラは微妙な顔をしている。

 まあ、溶け込むのに、努力は必要だったよね。


「というわけで、警戒する必要はないと思うんだけど………どうかな?」


 私が首を傾げると、アデラは軽いため息をつき、話し始めた。


「姉様は、知らなさそうですね

 一応話しておきたいのですが………よろしいですか?」


「はい」


 アデラが真面目な顔になったので、私も背筋を伸ばす。


「この世界は、私の知る、所謂『乙女ゲーム』………恋愛シミュレーションゲームに酷似しています

 そして、姉様は悪役、私は主人公です」


「…………そうなんだぁ」


 まるで人事の様に言う私に、アデラは困惑している。

 まあね、悪役令嬢、ってあれでしょ?ヒロイン虐めて、断罪されるやつ。

 でも、私はそもそもアデラを虐めたりしないし。むしろ、猫可愛がりするし。


「ま、まあ、姉様がそれでいいならいいんですが………

 簡単な事だけ説明しておくと、舞台は十五歳から通う学園です

 攻略対象………恋愛対象は、隠しキャラという、高難易度のキャラを含めて五人。何れも、身分、容姿、能力と飛び抜けているので、見たら分かるかと

 そして、悪役は姉様含む三人。それとサポートキャラが一人です

 シナリオは長いので説明しませんが、姉様はそのまま生きていれば、フラグを立てる(地雷を踏む)事もほぼないと思います。

 …………あれ、これってフラグですか?」


 そうだね。バッチリフラグ立ててるよ。

 まあ、私は気ままに生きるよ。シナリオ回避なんて面倒くさい事しないし、わざわざ破滅へ向かっていく事もしない。私のやりたい事をやった結果がそれだったら、後悔はないけどね。


「アデラ、一応聞きたいんだけど、推しとか好きなキャラとかいる?

 おねーちゃん、妹の恋を邪魔したくないしね」


 むしろ、全力で応援したい。

 舞台も衣装も全部整えて、近くで見守りたい。

 …………知ってるよ、シスコンだって事くらい。


「…………いえ

 好きなキャラはいますが、現実と二次元を一緒にしては迷惑がかかってしまいます

 完璧な同一人物ではないかもしれませんし、自分から関わりにいく様な事はしませんよ

 貴族とはいえど民間人なので、王女が会いに行っては色々な噂も立ってしまいますしね」


 ……そっか。アデラはちゃんと考えてるんだなぁ。

 浅はかだったかもしれない。………反省はしても、考えの足りないのは治らないんだけどね。


「…………あ、もしかして、カミラ様達って………」


「分かります?

 カミラ様とクロエ様は悪役、オリビア様がサポートキャラですね」


「やっぱり!」


 三人とも、前に言った私の友達だ。

 カミラ様は金髪赤眼。少しきつい印象の顔立ちだけど、とっても優しくて可愛い子だ。

 クロエ様は茶髪に黄緑の眼。おっとりしていて、癒し系の子だ。

 オリビア様はオレンジの髪に水色の眼で、明るい元気な子。


 カミラ様とオリビア様はわかるけど…………クロエ様が悪役?

 ほんわかしてて、とても意地悪をしそうには見えない。


「まあ、クロエ様は被害者なんですけどね………

 兄が攻略対象で、シスコンなんです。だから、結構な嫉妬や羨望の眼差しが………」


 あ、それは辛い。

 クロエ様………もしそんな事になったら、私が全力で守るからね!!


「アデラは、いつ気づいたの?」


「転生にですか?

 そうですね………一歳くらいでしょうか

 ずっと練習していたので、滑舌も幾分かよくなりましたよ!」


「そうだね

 三歳児に見えない」


 溶け込もうとしてる立場としては、どうかと思うけど……。

 まあ、こっちの方がずっと便利だし、今更っていうのもあるしね。


———コンコン


 アデラと話し込んでいると、ノックが聞こえる。

 姉妹会ではリラは同伴していないので、返事だけすると、扉が開いた。


「母様?」


 入ってきたのは母さんだ。

 二人して首を傾げていると、母さんが話し始めた。


「もうすぐ、半年に一度の、異界報告会があるのよ

 ステラ、ついて来ない?

 まだ早いかとも思ったけれど、ステラはしっかりしているし大丈夫だと思うの」


 ………え?

 異界報告会って、絶対会議的なやつだよね?

 いくら王女といえど、子供を出席させていいの?


「ちなみに、場所は神殿よ

 この前行ったでしょう?」


 ああ、あのリンネ神の像があった……。


「アデラも連れて行きたいのだけど………まだ三歳なのよね

 少し厳しいのよ」


「いえ、私は大丈夫です

 ………姉様、どうなさるのですか?」


 ………………よし。


「行きます

 社会勉強になるでしょうし、交友関係は広い方がいいと思うので」


「じゃあ決まりね

 それまでに準備をしておいて」


 というわけで、他種族の方々に会う事になりました。

 友達が増えるといいな、なんて淡い期待を胸に抱いて。

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