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光と星

 当日。

 私は「神衣」と呼ばれる、天使の制服の様なドレスを着ている。

 黒や紺、碧と暗めの色で溢れる、所謂ゴスロリだ。

 恥ずかしいけれど、このキラキラな容姿に似合うのは間違い無いので、客観視して耐えることにした。

 この世界、顔面偏差値がカンストしてるから。


 そして、神界へ行くために母様について行った先は…………いつもご飯を食べている、大広間。


「母様?」


 私が不審に思っていると、母さんは悪戯っぽく笑い、天井の不思議な紋様に向かって飛んだ。


「え!?」


 衝撃音を予想し、思わず目をつぶるけれど…………いつまで待っても、そんな音はしなかった。


 上を見上げると、そこにはもう、母さんはいない。

 私の頭上には、きっとたくさんの「?」が浮いている事だろう。


「ステラ、おいで」


 でも、声は聞こえる。………あの奥から。

 隠し扉………いや、魔法かな。

 恐る恐る移動しようとするも、制御不足で飛び込んでしまった。


「うわぁ!?」


 壁を認識し、蹲る様に丸くなるけれど、やはり衝撃は来なかった。


 顔をあげ、立ち直すと、そこは何処か近未来的な空間だった。

 歩くたびに足元では何かが弾け、遠くには半透明の結界の様なものがある。

 だけど、そのずっと奥には、雲がある様に見えた。


「こっちよ」


 母さんに手を引かれて歩くと、神々しい神殿が建っていた。

 ギリシャ、とか、西洋の神話に出てきそうな神殿だ。


 神殿に入ると、中央にリンネ神様の像があった。

 器の様な形にした掌の上には、デジタル感のあるキューブが浮いている。


 私が辺りを眺めていると、母さんはそのキューブに触れた。

 そして、変化が起こった。


 神殿は大地震レベルに揺れ、リンネ神様の像が動いたのが見える。その下には、階段があった。


「行くわよ」


 揺れが治ったのを確認して、母さんは迷いなく進んでいく。

 こんなことになっていたとは………。


 母さんについて歩いていくと、その先は、何故か大勢の人(?)でいっぱいになっていた。

 多分、これが神様なんだろう。

 老若男女…………いや、歳という概念を超え、性別という枠に囚われない神様もいる。

 とにかく、数十名の神様がそこにいた。


「皆様、お久しぶりです〜」


 母さんはいつも通りだ。

 というか、全員と面識あるのか……。


「久しぶりじゃの、ステラ」


 そこに現れたリンネ神様。

 さらっと愛称呼ばれたけど………まあ、いっか。


「お久しぶりです、リンネ神様」


「そんなに堅苦しくなくとも良いぞ

 まあ、少なくとも様はいらん」


「では、リンネ神と」


「うむ」


 軽い感じもするけど、寛容な神様なんだろう。


「ああ、ちなみにこの者達は、アメリアの娘見たさに押しかけたのじゃ

 押し返しても良いぞ?

 むしろ、仕事が滞るので、追い出してやって欲しいのだが………」


 最後、本音まで聞こえましたよ。

 リンネ神の祝福とやらのおかげで、五感やその他諸々に特大補正が付いてます。


 困って母さんを見るが、微笑ましそうに見守るばかり。


「まあ、先に用件を済ませておこう

 ほれ」


 リンネ神が促すと、その側から少年が現れた。

 私と同い年くらいの少年で、白髪金眼が神々しい。

 俯きがちで、何処か冷たさを感じる。


「此奴も五年前に生まれた子神じゃ

 じゃが、無口な上大人びておって、気の合うものがあまりおらんのじゃ

 そこで、御主に話し相手になってもらいたい」


「分かりました」


「いいのか?」


 私が即答すると、驚くリンネ神。

 いや、リンネ神にはお世話になったし、私も友達欲しかったから………。(現在、友達三名ほど)


 快く引き受けると、リンネ神は安心した様に笑った。

 そして、他の神様方もにっこり笑顔で……………詰め寄ってきました。


「髪の毛さらっさらね〜」


「可愛らしいものだな」


「三つの血が混じると…………興味深い」


 ひっ!

 いくら精神年齢大人でも、これは辛いよ!

 怖い怖い怖い。


 私が慌てて視線を彷徨わせていると、相変わらず興味なさそうに俯いている、少年を見かけた。

 考えるより先に、体が動く。


 私は少年の手を取り、飛び上がる。翼があるから!

 魔法は多少しか習ってないけど………筋力をあげたり、少年を軽量化すれば大丈夫!

 …………あ、この子、飛べたかもなぁ。


 少し目を見開いた少年を見てそんな事を思う。

 暫くしたら戻る、とだけ言い渡し、しばらく飛んだ。






 全く知らない場所に来てしまい、少し後悔したけれど、まずはこの少年が先だ。


「急に連れ出してごめんね

 大丈夫?」


 少年は頷く。

 予想以上の無口。義務でしか話せない私にこれは辛い。

 緊張とか、嫌な予想ばっかりが付き纏うんだよ。


「えっと………名前、教えてもらってもいい?」


「…………ルーカス

 ルーカス・デオラム」


「ルーカス様、だね

 私はエステラ・ウーヌス

 好きに呼んでいいよ」


 私が少し笑うと、少年は顔を背ける。

 …………これは、遠回し………でも無い、完全な拒絶ですか?


「ルーカスで、いいよ」


 そのまま、少年は呟く様に言う。


 私は、数度瞬きをし、思わず笑顔になる。

 なんだ、この子も私と同じで、コミュニケーションが苦手なだけなんだ。


 なんとなく親近感を覚えてしまうけど、口には出さない。


「ルーカスは、普段、何をしてるの?」


「読書………かな」


「そうなんだ!

 私も読書好きなの

 この間読んだのは————」







 暫く話している間に、予想以上の時間が経ってしまった。

 ルカとは気が合う様で、本の趣味なども似ていたので、おすすめも教えてもらった。

 ちなみに、引きこもり気質の私は、元から読書が好きだ。父さんの書庫の本なんかも、ちょっとかじった。


「ステラ、そろそろ戻ろうか」


「そうだね

 ルカ、また話そうね」


 話しているうちに、私達は愛称で呼び合う様になった。

 …………なんて言ったら大仰だけど、天界では知り合いでも基本愛称だからね。フリーダム。

 人間界とかでは婚約者と家族以外駄目、見たいな決まりもあるらしいけど、私は天界でしか暮らした事がないし。今更友達に「王女殿下」とか「エステラ嬢」とか呼ばれても、違和感しかない。


 ルカに教えてもらった道を通ると、元の場所へ戻れた。

 なんと、最初に観察していたらしい。


 母さんも帰るムードだったので、ルカに手を振って、天界への道を戻る。

 今日も、アデラに楽しい話ができそう。


 毎日恒例の「姉妹会」に、いいネタが入ったと、私は上機嫌だった。

 それ以上に、友達が増えた事や、好きなものに共感してくれる存在がいた事が嬉しかったんだけどね。


 軽い足取りで帰る私を見て、母さんが微笑ましそうにしていたのには、気づかなかった事にしよう。

 年齢合計二十歳過ぎにもなると、親に見守られるって結構恥ずかしいから。

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